魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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興行の魔女⑤

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 黒を基調とした服装に長い黒い髪の女。
 最強の聖女で最強の実力者。黒の聖女ブリュンヒルデ。
「聖女として情けない。たまたまいたからいいものの」
「ジャンヌ。なめられているよ」
 ブリュンヒルデの視線が観客席に向ける。
 魔女たちが怯えている。
 ブリュンヒルデは最強であり、魔女嫌いでかなり手を抜かない。
――私もあのくらいの恐怖を与えたい。
「雑魚ばっかりね」
「そこまで言っちゃだめだよ。ジャンヌ。あとで説教だから」
 アガタは笑顔で言う
「ええ。私もしたいところよ」
 ブリュンヒルデが手で髪をなびく。
 黒い髪は夜の星のように輝き、黒い星が飛び出す。
 アガタも周囲から黄色の光を飛ばす。
 黒い星や黄色の光が魔女たちに攻撃する。逃げる隙間を与えずに魔女を貫通し、さらに分解して周辺にいる魔女を襲う。
 これではすぐに魔女を退治される。逃げなくては。
「こちらへ」



「よくも私のショーを台無しにしたな」
 赤い服を着た魔女の体が徐々に大きくなる。
 顔がゾウになり、下半身が4本のゾウの足がはえ、巨大化していく。
「ぶっ殺す!」
 魔女が迫ってくる。
「気色悪い」
 冷めきった瞳をするブリュンヒルデ。黒い髪が夜の星のように輝き、黒い星が一斉に飛び出し、魔女の体を貫通する。貫通した黒い星が戻り、魔女を貫通する。何度も何度も黒い星が魔女の体を貫通していく。
 巨大な体が小さな肉片へと細かくなり、散りとなって消えていく。
「雑魚が」
 ブリュンヒルデは見下ろす。
「相変わらずですね」
「手を抜く理由ある?」
 テントが消え、広い森の中に変わる。
「さて、ジャンヌは?」
 ジャンヌの姿がなかった。



「こちらへ」
 声をしたと思ったら、箱の中に囲まれる。
 箱を開くと森の中で、なぜか、ジョーカーと一緒にいる。
 そういえばアキセとウィムも消えているし。あの騒ぎで二人とも死んでくれればいいが。
「どこにいたのよ」
「私は前振りで主演者より目立ってはいけないもので。あとお返しします」
 ジョーカーの手には服とロザリオだった。
 すぐに受け取る。
「今日は共演して楽しかったですよ」
「そうかよ」
 楽しくもなかったが。
「もしかして、助けたから今回のことは許してほしいって理由じゃないでしょうね」
 ロザリオを握る。
 散々聞いている理由だから。またなめられては困る。
「そこまで考えていませんが、今回共演して頂いたお礼です」
「お礼・・・」
「それに困っていたようですし」
 ジョーカーは半分だけのイタズラの笑みを見せる。
「あ~もういい。あんた。あの魔女の従者でも使い魔でもなかったの」
「いいえ。派遣で参りました」
「派遣・・・」
 思わず口が空く。
 魔女の世界で派遣という言葉があるようだ。
「我々は笑わせるのが仕事なので」
「え?他にもいるの?」
「ええ。では、またの機会に」
 ジョーカーは軽く礼をしてから、空間の穴へと回転しながら消えていく。
 今回は散々な目にあった。
 アキセとウィムに売り渡されるし、魔女の見世物にされるし、会いたくない最強の聖女のブリュンヒルデとアガタも来てしまった。
 よし。着替えてこのまま。
「「ジャンヌ」」
 さっき聞いたばかりの聖女二人。素直に諦めました。



「ただいま、戻りました。団長」
「おかえり。ジョーカー!」
 球体に乗った団長は言う。
「どうだった?」
「聖女を使いましてね。盛り上がりましたよ。けど、メアリ様は黒の聖女ブリュンヒルデに殺されましたが」
「な~んだ。客が来ないっていうから借りたのに、最強の聖女に死ぬなんて」
 団長は笑う。
「メアリはセンスがないんだから。見世物しただけって客は受けないって。でも、ジョーカーも楽しかったでしょ」
「ええ。まあ」
 笑って返す。
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