魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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寂屋の魔女②

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「「見つけた!」」
 幼い女の声が聞こえる。匂いからして近くにいる。相手は魔族(アビス)だろう。
「どうしようか」
「どうやってやろうか」
 すでに何かを企んでいる。
 イルはため息を吐き、精霊術を使う。
「「うわ!!」」
 風を使って、こそこそと話している魔族を目の前まで運ばせる。正体は、黒と白の子猫だった。
「なんだ。おまえら」
 呆れながら訊く。
「「うわ~ん。怖かったよ~」」
 急に泣き出す。
「さっき。アキセってやつに怖い目にあったよ~」
「怖かったよ~」
 思惑が分かりすぎて頭をかく。
「誰の指図だ」
 泣いていた子猫たちがぴくつくも「「うわ~ん!」」とまた泣く。
「「怖いよ~」」
「わざと泣くのはやめろ」
 少しイラつきながら返す。
「俺の前であいつの名前を出した時点で分かり切っているんだ。何か企んでいるだろ」
 泣くのをやめ、黒い子猫は背中から取り出したボタンをぽちっと押す。
 上から降ってきたので、思わず受け止める。
 それは黒い爆弾でもう導火線に火がついていた。
「うわ!」
 爆発する。
「ぶは・・・」
 爆発したのに、黒く焦げただけで済んだ。
 子猫たちが消えたと思えば、黒い子猫が大きいパチンコに口輪を乗せて、紐を後ろに引っ張っていた。
「くらえ!」
 黒い子猫が紐を離し、パチンコに口輪を飛ばす。口に入る。
「ん!」
 これでは精霊術が使えない。
 すぐに取ろうとするが。
「えい!」
 今度は白い子猫に首に大きい襞襟をつけられる。
「ふがが!」
 取れない。引っ張っても取れない。
 なぜだろう。妙に恥ずかしい。
 次は火花の音がする。
 振り向けば、大砲がある。大砲の上に黒い子猫、大砲から伸びる導火線に、火に着いた棒を持っている。
「発射!」
 白い子猫が火に着いた棒で導火線に火をつける。
 大砲が飛んできた。
 咄嗟に避ける。砲弾は奥へと飛んでいくが、まっすぐ行かずに上がっていき、大きく円を描き、落ちていく。
 まさかとは思うが。
 落ちていく砲弾も避けるが、また向きを変えて迫ってくる。
 やはり、追いかけてくる。なぜ、向き変えられる。これも子猫たちの力か。
 口輪がついているから呼吸ができず、すぐに息が上がる。
 木を盾にする。左右で動くも、砲弾も逆に動く。
 こんな小刻みに動く砲弾あるか。
 砲弾と目が合い、ぶつかって爆発が起きる。


「ぶは・・・」
 生きてる。
 体が黒く焦げただけで生きている。不思議と。
「「ははははははは」」
 子猫たちの笑い声がする。
 その声が聞こえただけで、怒りが込みあがる。
 あの猫め。
 匂いで分かる。まだ近くにいる。いや、子猫以外にも匂いがする。
「どうしたの?」
 声をした方へ向けば、ジャンヌがいた。
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