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秋染の魔女⑥
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ジャンヌが魔女を退治した。
やはり聖女と魔女の戦いは激しい。
とりあえず終わったことに息を吐けば、背後から鎖に捕まれ、壁に押し付けられる。顔を上げれば、アキセが銃を構える。
しまった。
アキセが引き金を引こうとした時、ジャンヌがバシっと顔を殴る。
「ジャンヌ!」
ジャンヌはすかさず胸倉を掴む。
「助けてやったろ」
「そうね。だからこれだけにする」
「え?」
ジャンヌは窓に向かってアキセを投げる。
やはり手を抜かない。
アキセが飛ばされたことで魔術が解けた。
ジャンヌが近づき、じっと睨みつけられる。
何か不満と疑いを混じったような目だった。
「話を訊いてほしいなら、手伝いなさい」
「え・・・」
「子供を村に返すんだから」
「はい・・・」
日が明けてしまった。
誘拐された子供を村に返した。
村から離れ、鳥の男と一緒に森の中にいた。
「なんで、あの子を助けたの」
とりあえず、協力した鳥の男の尋問にとりかかる。
「人質となると分かっていましたし、あなたの戦いを妨げると思ったからです」
「つまり、私のためと」
さらににらみつける。
「はい・・・」
「だったら、私を魔女に引き・・・」
「違います!」
言い切る前に鳥の男が声を上げる。
「あれは・・・あの魔女に操られたからです・・・だとしても、あなたに攻撃したことには変わりはないです。申し訳ございません・・・」
顔から申し訳なさそうな顔をしている。
この作品の中にいることに一番驚く。貴重だから、これ以上責めるのもやめておこう。
「そう」
――その誠意を信じてやろう。
「今回は許してあげる。でも次はないから」
鋭い目つきをする。
「分かりました・・・」
「それに・・・」
視線を逸らす。
「私も・・・聞かなかったのは・・・悪かった・・・」
ズコ。
音がしたからすぐに視線を向けば、鳥の男がありえないような顔をして、地面についている。
「何。その反応。逆に怒るよ」
「いや・・・意外なことに驚いてしまって・・・」
「さっきのこと無しにするよ」
「失礼しました」
「そういえばまだ名前聞いていないけど」
鳥の男は少し間を開けてから、「ウルクスと申します」と名乗った。
「あなたは?」
やっぱり訊いてきた。
「ジャンヌよ」と手を伸ばす。
ウルクスも手を伸ばして、彼を立たせる。
「では、また会いましょう」
ウルクスは飛んでいく。
本当にこの作品の中で珍しい男だった。でも。
「ふ~ん」
よきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーがベッドの上で寝ているレオンの頭を触っていた。
いつものようにレオンをいじっていただろう。
「あら、話さないの。せっかくまた会えたのに」
リリスはイタズラな笑みで振り返す。
「それにわざわざもらった名前も使わずにね」
黒いモヤに包まれ、着替えたリリスが近づく。
「ノヴァン」
「・・・」
ぶっかんの魔女の力で、アキセの良心からよみがえった。ジャンヌがぶっかんの魔女を退治したことで消えたが、リリスにより転生させた。
最強の魔女なだけある。転生を簡単にできてしまうから。
「けど、話したらガルムにも知られちゃうか」
分かり切ったようにリリスが言う。
「・・・」
ぶっかんの魔女までのアキセの記憶も受けついている。もちろん、一番気に入らない過去までも。
「ガルムの過去を知っているからね。記憶を奪うかそれとも殺されるかのどちらか」
「問題はあのクズではない」
そこではない。もっとも許せないのは。
「何を気にしているのかしら。話しなさい」
リリスが頬を触っていく。
――話さなくても心を読んでいるくせに。
「あの時、彼女を攻撃させたのはあなたの仕業ですよね」
ジャンヌを気絶させたあの時。体が急に動けなくなった。まるで操られたように。
「それで怒っていたの」
「あなたのおかげで疑われましたよ。あの魔女に操られたということで落ち着きましたが」
「ならよかったじゃないの。仲直りできて」
本当にこの魔女は。
「それとも私がジャンヌに何かするかもしれないと考えているの」
「・・・」
「心配しないでよ。そのつもりがないから。コゼットの保護者だし」
「そうですか。どうして僕を・・・」
「転生したかって」
ジャンヌかアキセの関係者だからなのか。でも、理由が他にあるはず。
「ちょうどペットがほしかったのよ」
リリスが長椅子に座り、ひざ掛けに右腕を置き、頬をつけ、足を組む。
「ペットですか・・・わざわざフクロウに変えて」
「フクロウ好きだもん」
「それだけですか。それに、あなたが流行りに乗るとは思いませんが」
「流行り?何が?」
リリスが少し強めで返す。
「私はやりたいようにするだけよ。それにペットは運動しないといけないし」
リリスが軽く指を回すと、吊るしてある鳥籠の扉が開く。
「十分運動したでしょ。おうちに入りなさい」
魔力を回復する力がない。浪費すれば、ただのフクロウに戻る。あの鳥籠でなければ、魔力が貯められない。
魔力が溜まったとしても、鳥籠を開けられるのは、リリスだけ。いつ開けるのかもリリスの気分次第になる。それでも鳥籠へ足が進み、フクロウとなり、鳥籠に入る。
「ガルムとは双子だから仲良くしなさいよ。いや、三つ子か」
リリスがにやっと笑う。
数分後
「そういえば、あなたの顔。彼女にかなり好みらしいわよ」
鳥籠にいるウルクスの顔が赤くなる。
やはり聖女と魔女の戦いは激しい。
とりあえず終わったことに息を吐けば、背後から鎖に捕まれ、壁に押し付けられる。顔を上げれば、アキセが銃を構える。
しまった。
アキセが引き金を引こうとした時、ジャンヌがバシっと顔を殴る。
「ジャンヌ!」
ジャンヌはすかさず胸倉を掴む。
「助けてやったろ」
「そうね。だからこれだけにする」
「え?」
ジャンヌは窓に向かってアキセを投げる。
やはり手を抜かない。
アキセが飛ばされたことで魔術が解けた。
ジャンヌが近づき、じっと睨みつけられる。
何か不満と疑いを混じったような目だった。
「話を訊いてほしいなら、手伝いなさい」
「え・・・」
「子供を村に返すんだから」
「はい・・・」
日が明けてしまった。
誘拐された子供を村に返した。
村から離れ、鳥の男と一緒に森の中にいた。
「なんで、あの子を助けたの」
とりあえず、協力した鳥の男の尋問にとりかかる。
「人質となると分かっていましたし、あなたの戦いを妨げると思ったからです」
「つまり、私のためと」
さらににらみつける。
「はい・・・」
「だったら、私を魔女に引き・・・」
「違います!」
言い切る前に鳥の男が声を上げる。
「あれは・・・あの魔女に操られたからです・・・だとしても、あなたに攻撃したことには変わりはないです。申し訳ございません・・・」
顔から申し訳なさそうな顔をしている。
この作品の中にいることに一番驚く。貴重だから、これ以上責めるのもやめておこう。
「そう」
――その誠意を信じてやろう。
「今回は許してあげる。でも次はないから」
鋭い目つきをする。
「分かりました・・・」
「それに・・・」
視線を逸らす。
「私も・・・聞かなかったのは・・・悪かった・・・」
ズコ。
音がしたからすぐに視線を向けば、鳥の男がありえないような顔をして、地面についている。
「何。その反応。逆に怒るよ」
「いや・・・意外なことに驚いてしまって・・・」
「さっきのこと無しにするよ」
「失礼しました」
「そういえばまだ名前聞いていないけど」
鳥の男は少し間を開けてから、「ウルクスと申します」と名乗った。
「あなたは?」
やっぱり訊いてきた。
「ジャンヌよ」と手を伸ばす。
ウルクスも手を伸ばして、彼を立たせる。
「では、また会いましょう」
ウルクスは飛んでいく。
本当にこの作品の中で珍しい男だった。でも。
「ふ~ん」
よきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーがベッドの上で寝ているレオンの頭を触っていた。
いつものようにレオンをいじっていただろう。
「あら、話さないの。せっかくまた会えたのに」
リリスはイタズラな笑みで振り返す。
「それにわざわざもらった名前も使わずにね」
黒いモヤに包まれ、着替えたリリスが近づく。
「ノヴァン」
「・・・」
ぶっかんの魔女の力で、アキセの良心からよみがえった。ジャンヌがぶっかんの魔女を退治したことで消えたが、リリスにより転生させた。
最強の魔女なだけある。転生を簡単にできてしまうから。
「けど、話したらガルムにも知られちゃうか」
分かり切ったようにリリスが言う。
「・・・」
ぶっかんの魔女までのアキセの記憶も受けついている。もちろん、一番気に入らない過去までも。
「ガルムの過去を知っているからね。記憶を奪うかそれとも殺されるかのどちらか」
「問題はあのクズではない」
そこではない。もっとも許せないのは。
「何を気にしているのかしら。話しなさい」
リリスが頬を触っていく。
――話さなくても心を読んでいるくせに。
「あの時、彼女を攻撃させたのはあなたの仕業ですよね」
ジャンヌを気絶させたあの時。体が急に動けなくなった。まるで操られたように。
「それで怒っていたの」
「あなたのおかげで疑われましたよ。あの魔女に操られたということで落ち着きましたが」
「ならよかったじゃないの。仲直りできて」
本当にこの魔女は。
「それとも私がジャンヌに何かするかもしれないと考えているの」
「・・・」
「心配しないでよ。そのつもりがないから。コゼットの保護者だし」
「そうですか。どうして僕を・・・」
「転生したかって」
ジャンヌかアキセの関係者だからなのか。でも、理由が他にあるはず。
「ちょうどペットがほしかったのよ」
リリスが長椅子に座り、ひざ掛けに右腕を置き、頬をつけ、足を組む。
「ペットですか・・・わざわざフクロウに変えて」
「フクロウ好きだもん」
「それだけですか。それに、あなたが流行りに乗るとは思いませんが」
「流行り?何が?」
リリスが少し強めで返す。
「私はやりたいようにするだけよ。それにペットは運動しないといけないし」
リリスが軽く指を回すと、吊るしてある鳥籠の扉が開く。
「十分運動したでしょ。おうちに入りなさい」
魔力を回復する力がない。浪費すれば、ただのフクロウに戻る。あの鳥籠でなければ、魔力が貯められない。
魔力が溜まったとしても、鳥籠を開けられるのは、リリスだけ。いつ開けるのかもリリスの気分次第になる。それでも鳥籠へ足が進み、フクロウとなり、鳥籠に入る。
「ガルムとは双子だから仲良くしなさいよ。いや、三つ子か」
リリスがにやっと笑う。
数分後
「そういえば、あなたの顔。彼女にかなり好みらしいわよ」
鳥籠にいるウルクスの顔が赤くなる。
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