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ウィッカーマン④
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「なんだ。アキセ君じゃないか」
なぜ、心理の魔女リキナ・メトナーがここにいる。
アキセが銃を向けた瞬間に、体に力が入らなくなり、床に倒れる。
「う!」
アキセも同様に床に倒れた。
「な・・・」
体が動けない。発明品を出そうにも出せない。
顔を上げれば、リキナの隣に青年が手を伸ばしていた。
手の中にウィーン文字の『封』と浮かんでいる。他にも体中に見たことのある記号や文字だった。
「さすが。君が作っただけあるね。ねぇ。アキセタマキン君」とリキナが青年に向ける。
「ちょっとまてい!」
アキセが声を必死に上げる。
「なんだ。名前か!特定の誰かの名前に直結するんだけど!」
確かに名前にいろいろと突っ込みところはあるが。
「そうだよ。この子は、この間もらった弾だったものだよ」
「あげてねえし!」
弾だった。以前、アキセがリキナの動きを止めようと使った術式弾が、リキナに奪われた。もしかして弾から人へと変わったのか。リキナの力とは思えない。
「君の名前と弾と色が金だったからかけ合わせて作ったんだよ」
「だとしても他にあるだろうか!」
ダメだ。アキセは名前のことで考えるべきところに回っていない。
「リリムでしょ。下ネタ得意でしょ」
「やっぱり意識しているじゃないか!」
「やはり元クズ主(あるじ)から言われますし、名前変えてくれませんか」とアキセタマキンもリキナに言う。
やはり名前には納得していないようだ。
「クズ主ってどういうことだ!」とアキセはまた言う。
「だめだよ。じっくり時間をかけて、忘れられないような、印象的な名前つけたんだよ。そこは感謝するべきとこだよ」
リキナはイタズラな笑みで見せる。
絶対にふざけている。
「なんかすぐ消えそうだし」
「変なことを言わないでください」
アキセタマキンは冷静に返す。
「だから名前は個性的にしたんだよ。同姓同名もいやでしょ。区別しづらいし。存在が薄れるというか。名前だけ目立たせてあげようと」
「それでも普通の名前でほしかったです」
「じゃあ。アキセ○○とかアキセ○○とか」
「もうこの名前にします」
「俺の名前を使うな!」
どうしてもアキセと下ネタをつけたいようだ。
「もう」とむっとするリキナ。
「あともう一人は初めてだな」とリキナと目が合う。
「その様子だと僕とは初めてではない」
やはり鋭い。
「彼女は・・・」
「あ!僕。ネタバレはいやだから!」
アキセタマキンが言い掛けるところをリキナが止める。
「後で見てもらうから。君がいるってことはジャンヌもいるのか」
リキナが考え込む。
「どうしようかな。ちょっと付き合って」
アキセタマキンの力で体が動けず、マジシャンに連れてかれた場所は広い空間だった。
床に大きい陣を刻み、中央に記号や文字を刻んだ鉄で立体に作った人型がいた。天井につくほどの大きさで巨人のようだった。
「まだ来ないの~」
鉄の人型の前に二人いた。
眼帯のようにつけた片眼鏡。金色の瞳。金色と紫色の髪を右にまとめて結んだ少女だった。
話に訊いているレクマかもしれない。
「もうすぐ来るはずなんだよね」
少年が言う。
「分かった。もう下がって」
「は~い」
少年が下がる。
「レクマ~」とリキナが呼び、レクマと視線が合う。
「何。リキナ。その子たち」
「僕の知り合い。大人しくしてるから大丈夫だよ」
「ふ~ん」
レクマがユビワに近づく。ユビワにじっと見られる。
「その子。指輪だったでしょ」
一瞬で正体を見抜いた。
「あたいとは別の方法で人になったみたいだけど、まだ不完全と言ったところかな」
「さすがだね」
「このくらいなら見て分かるよ」
レクマは自信満々に胸を張る。
「ん~あとで見るとして、どこで見つけたの?」
レクマはマジシャンの少年に言う。
「気になったから連れてきちゃった」とマジシャンの少女の一人が言う。
「そういうことか。だめだよ。勝手に連れてきちゃあ」
「「ごめんなさい」」
指示ではなく、ただ気になっただけで連れられたのか。
「まあいいや。作業に戻って」
「「はーい」」
ユビワとアキセを床に倒し、マジシャンたちは去っていく。まだアキセタマキンの力で抑えつけられているから、体を動かすことも発明品を召喚して逃がすこともできない。
「そういえば、言うの。忘れたけど、もう聖女が来ているかも」
「え?マジで。邪魔されたくないな。後材料くるだけなのに」
「大丈夫。さっきソニアに頼んだから」
「ならいっか。早く来ないかな~」
「おまえら」とアキセはリキナとレクマに言う。
「「ん?」」
リキナとレクマが視線を向ける。
「ウィッカーマンを作っているのか」
ウィッカーマン。あの人型のことだろうか。
「やっぱ魔術師だね~知っているんだ」
「絶対に成功しない代物だぞ」
「だからあたいたちが成功させようとしているの」
なぜ、心理の魔女リキナ・メトナーがここにいる。
アキセが銃を向けた瞬間に、体に力が入らなくなり、床に倒れる。
「う!」
アキセも同様に床に倒れた。
「な・・・」
体が動けない。発明品を出そうにも出せない。
顔を上げれば、リキナの隣に青年が手を伸ばしていた。
手の中にウィーン文字の『封』と浮かんでいる。他にも体中に見たことのある記号や文字だった。
「さすが。君が作っただけあるね。ねぇ。アキセタマキン君」とリキナが青年に向ける。
「ちょっとまてい!」
アキセが声を必死に上げる。
「なんだ。名前か!特定の誰かの名前に直結するんだけど!」
確かに名前にいろいろと突っ込みところはあるが。
「そうだよ。この子は、この間もらった弾だったものだよ」
「あげてねえし!」
弾だった。以前、アキセがリキナの動きを止めようと使った術式弾が、リキナに奪われた。もしかして弾から人へと変わったのか。リキナの力とは思えない。
「君の名前と弾と色が金だったからかけ合わせて作ったんだよ」
「だとしても他にあるだろうか!」
ダメだ。アキセは名前のことで考えるべきところに回っていない。
「リリムでしょ。下ネタ得意でしょ」
「やっぱり意識しているじゃないか!」
「やはり元クズ主(あるじ)から言われますし、名前変えてくれませんか」とアキセタマキンもリキナに言う。
やはり名前には納得していないようだ。
「クズ主ってどういうことだ!」とアキセはまた言う。
「だめだよ。じっくり時間をかけて、忘れられないような、印象的な名前つけたんだよ。そこは感謝するべきとこだよ」
リキナはイタズラな笑みで見せる。
絶対にふざけている。
「なんかすぐ消えそうだし」
「変なことを言わないでください」
アキセタマキンは冷静に返す。
「だから名前は個性的にしたんだよ。同姓同名もいやでしょ。区別しづらいし。存在が薄れるというか。名前だけ目立たせてあげようと」
「それでも普通の名前でほしかったです」
「じゃあ。アキセ○○とかアキセ○○とか」
「もうこの名前にします」
「俺の名前を使うな!」
どうしてもアキセと下ネタをつけたいようだ。
「もう」とむっとするリキナ。
「あともう一人は初めてだな」とリキナと目が合う。
「その様子だと僕とは初めてではない」
やはり鋭い。
「彼女は・・・」
「あ!僕。ネタバレはいやだから!」
アキセタマキンが言い掛けるところをリキナが止める。
「後で見てもらうから。君がいるってことはジャンヌもいるのか」
リキナが考え込む。
「どうしようかな。ちょっと付き合って」
アキセタマキンの力で体が動けず、マジシャンに連れてかれた場所は広い空間だった。
床に大きい陣を刻み、中央に記号や文字を刻んだ鉄で立体に作った人型がいた。天井につくほどの大きさで巨人のようだった。
「まだ来ないの~」
鉄の人型の前に二人いた。
眼帯のようにつけた片眼鏡。金色の瞳。金色と紫色の髪を右にまとめて結んだ少女だった。
話に訊いているレクマかもしれない。
「もうすぐ来るはずなんだよね」
少年が言う。
「分かった。もう下がって」
「は~い」
少年が下がる。
「レクマ~」とリキナが呼び、レクマと視線が合う。
「何。リキナ。その子たち」
「僕の知り合い。大人しくしてるから大丈夫だよ」
「ふ~ん」
レクマがユビワに近づく。ユビワにじっと見られる。
「その子。指輪だったでしょ」
一瞬で正体を見抜いた。
「あたいとは別の方法で人になったみたいだけど、まだ不完全と言ったところかな」
「さすがだね」
「このくらいなら見て分かるよ」
レクマは自信満々に胸を張る。
「ん~あとで見るとして、どこで見つけたの?」
レクマはマジシャンの少年に言う。
「気になったから連れてきちゃった」とマジシャンの少女の一人が言う。
「そういうことか。だめだよ。勝手に連れてきちゃあ」
「「ごめんなさい」」
指示ではなく、ただ気になっただけで連れられたのか。
「まあいいや。作業に戻って」
「「はーい」」
ユビワとアキセを床に倒し、マジシャンたちは去っていく。まだアキセタマキンの力で抑えつけられているから、体を動かすことも発明品を召喚して逃がすこともできない。
「そういえば、言うの。忘れたけど、もう聖女が来ているかも」
「え?マジで。邪魔されたくないな。後材料くるだけなのに」
「大丈夫。さっきソニアに頼んだから」
「ならいっか。早く来ないかな~」
「おまえら」とアキセはリキナとレクマに言う。
「「ん?」」
リキナとレクマが視線を向ける。
「ウィッカーマンを作っているのか」
ウィッカーマン。あの人型のことだろうか。
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