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傷抉の魔女①
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目を覚ませば、どこかの廃墟の屋敷にいた。
よく見れば、天井に空いた穴から空が見える。天井から落ちたところだろう。
なんでここにいるのかとアキセは思い出す。
メイドのことでジャンヌに仕返ししようとしたが、急に吹き飛ばされた。あれは、レオンの精霊術だろう。
この屋敷まで飛ばされ、そのまま気を失ったところか。
「くそ。どいつもこいつも・・・」
頭を抱えながら起き上がる。
「わー」
抜けるような声で白い布をかぶっている小さな者が飛び出す。
大きさや声からにして幼女のようだ。
「わーわーわーわー」と徐々に声が弱くなっていく。
「う・・・」と幼女は身震いし、布越しに涙目になっている。
「なんで驚かないの!」
「無理」
急に逆切れ。どう考えても魔女だろう。
「せっかく来たんだから驚いてよ!」
「どういう道理だ!」
「やだ!絶対に驚くまで逃がさない!」とこねる。
なんで魔女は変なところで執着する。
「ただ布をかぶっただけで驚いてたまるか」
アキセは布に手をかける。
「どうせ。この布をぬぐっても・・・」
アキセが布をめぐり上げる。
そこには真っ黒いモヤの塊だった。
見た瞬間、あの時を思い出す。
捨てたはずの思いが込み上げてくる。
「う!」
呼吸が乱れる。吐き下もする。気持ち悪い。思い出しただけで激しい頭痛も起こる。
胸に手を当て、あの時の思いを奪う。塊となり、横に払う。塊は壁に当たり、砕けて消える。
捨てたはずの思いがなぜ。
「いや~ん。恥ずかしい~」
衣の上なのに赤く染めながら恥ずかしがっている。
「好きになっちゃったかも・・・」
「え?」
「傷抉(きずえぐり)の魔女フィア・ガイスト―ルだよ。アキセ君のことが好き~!」
フィアが飛びつく。
アキセが避ける。
「なんだ!急に!」
「好き~」
フィアにまた飛びつく。避ける。それでもフィアはピュ!ピュ!と飛び続け、段々と速さが増していく。
しつこい。避けるだけで精いっぱいだった。
「捕まえた~」
背後から腰にしがみつく。
またあの時の想いが思い出す。
膝が床につき、口を抑えて吐き下を抑える。
だめだ。気持ち悪くなる。
「おいしい~すき~」
どうやらトラウマを食べる魔女のようだ。
「お!見つけたっす!」
窓から現れたのは、速忍の魔女ヤオトメ・クノだった。
よく見れば、天井に空いた穴から空が見える。天井から落ちたところだろう。
なんでここにいるのかとアキセは思い出す。
メイドのことでジャンヌに仕返ししようとしたが、急に吹き飛ばされた。あれは、レオンの精霊術だろう。
この屋敷まで飛ばされ、そのまま気を失ったところか。
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頭を抱えながら起き上がる。
「わー」
抜けるような声で白い布をかぶっている小さな者が飛び出す。
大きさや声からにして幼女のようだ。
「わーわーわーわー」と徐々に声が弱くなっていく。
「う・・・」と幼女は身震いし、布越しに涙目になっている。
「なんで驚かないの!」
「無理」
急に逆切れ。どう考えても魔女だろう。
「せっかく来たんだから驚いてよ!」
「どういう道理だ!」
「やだ!絶対に驚くまで逃がさない!」とこねる。
なんで魔女は変なところで執着する。
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アキセは布に手をかける。
「どうせ。この布をぬぐっても・・・」
アキセが布をめぐり上げる。
そこには真っ黒いモヤの塊だった。
見た瞬間、あの時を思い出す。
捨てたはずの思いが込み上げてくる。
「う!」
呼吸が乱れる。吐き下もする。気持ち悪い。思い出しただけで激しい頭痛も起こる。
胸に手を当て、あの時の思いを奪う。塊となり、横に払う。塊は壁に当たり、砕けて消える。
捨てたはずの思いがなぜ。
「いや~ん。恥ずかしい~」
衣の上なのに赤く染めながら恥ずかしがっている。
「好きになっちゃったかも・・・」
「え?」
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「なんだ!急に!」
「好き~」
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「捕まえた~」
背後から腰にしがみつく。
またあの時の想いが思い出す。
膝が床につき、口を抑えて吐き下を抑える。
だめだ。気持ち悪くなる。
「おいしい~すき~」
どうやらトラウマを食べる魔女のようだ。
「お!見つけたっす!」
窓から現れたのは、速忍の魔女ヤオトメ・クノだった。
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