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おかえりなさいませ。ご主人様④
しおりを挟む「おかえり・・・なさ・・・いませ・・・お嬢さま・・・方・・・」
絶対に分かってる。こいつら。
全力で逃げたい。逃げても、魔女から逃げられないだろうし。ユビワが気配で追いかけられる。このメイド服を脱ぐには、ユビワに『解雇』と言わせないとできない。それにいつ指輪に戻るかも分からない。次に人になるまでこのままになってしまう。
一斉に視線が向く。
「ねえ。私たちこのお店初めてなの。どんなお店なのか教えてくれない?」
ジャンヌは手を組み、顎を載せて見つめる。
「はい・・・帰っていただいたご主人様、お嬢様をご奉仕させていますにゃ・・・」
「ご主人様って私たちのことなの」
「はい・・・」
「そうなの。ふ~ん」
ジャンヌがメニューを取る。
「このメニューでおすすめ何?」
なるべく面倒くさくないものを。
「こちらがおすすめだにゃ」
指そうとするが。
「どれ」とジャンヌが強めに言う。
う。口で言わせる気だ。メニュー名も恥ずかしいのに。
「おすすめは、まっしろねこちゃんパフェ。口とろけちゃんハンバーグ・・・」
「じゃあ。これ」
無視しやがって。
ジャンヌはメニューを指していた。
「この・・・オムライスでお願いしようかな」
一番やりたくないものを・・・
「かしこまりましたにゃあ・・・」
注文を取る。
「お待たせしましたにゃあ。オムライスでございますにゃあ」
オムライスを持ってくる。
「では、ごゆ・・・」とテーブルから逃げようとするが、「ちょっと待った」と引き留められる。
「ねえ。このサービスって何?おいしくさせる言葉って」
「さらにオムライスをおいしくさせる言葉になります・・・」
「ん~やって」
クッソ~一番やりたくないことを。
「大丈夫です。もう十分に・・・」
「おいしくさせる言葉をやってください」
ジャンヌではなく、ユビワが言う。
『ご奉仕しますメイド服』が主として認識しているユビワが指示を出した。
指示が実行される。
やりたくないのに。体が勝手に動く。両手でハートの形を作る。
「おいしくな~れ!萌え萌えパワー!あなたの口をとろけさせちゃうにゃあ!」とあざとくポーズを決める。
死ぬ。精神的に死ぬ。
「「「ぷくくくく」」」
3人とも机に伏せて笑っている
こいつら。絶対に後でやり返す。
「そういえば、オムライスに何か書いてくれるんでしょ。カイコって書いてくれない」
「カイコ・・・」
あ。
レオンが咄嗟にテーブルの下に隠れる。テーブルの下でガタガタと騒いでいる。テーブルから座り込んだレオンは、男の姿に戻り、少し大きめの服に着替えていた。
――それ。俺の服!
ユビワが服をすぐに召喚させたのか。
ジャンヌに視線を向ける。
「ふ」とジャンヌがほくそ笑む。
――ジャンヌ。てめ~絶対にこの技をジャンヌにやらせてやる。
「どうしましたか。お嬢様!」と店長のリトがやってきた。
店長~今いじめられてます~
「何かあり・・・」
リトが目とあったのは、レオンだった。
「にゃあ~」
リトが急に声を上げる。
レオンが青ざめる。
「ねえねえ。この後話さない?」
「断る!」
「え。なんで~まず話してから。メイドの才能があるにゃあ」
「ねえ」と会話を遮ったのは、ジャンヌだった。
リトと目が合う。
「あなた。魔女でしょ」
「店長にゃあ」
「私の連れだから。手を出さなければ何もしない。けどその気があれば」
ジャンヌが睨み返す。
――なぜ、中性子をかばうんだ。
「・・・分かったにゃあ」
「ということで、会計で」
「はいにゃ~」
リトが離れる。
「終わったら全力で逃げなさい」
「うん」
レオンが小さく頷く。
「ち。もうちょっといじろうと思ったのに。魔女のせいで」
ジャンヌが悪態をつく。
ジャンヌと目が合う。
「あとで続きをしよう」
助けて。
「おまたせ~」
リトが紙を渡す。
ジャンヌは、額が描いた紙を見る。
一瞬、ジャンヌが動かなかった。
紙をよく見れば、金貨50枚と書いてある。
屋敷が建てるほどの値段だった。
「ねえ。一つしか頼んでいないし、額が違うんだけど・・・」
「萌え萌えには財力が必要なんだにゃあ」
えげつな。
「お嬢様。払えないのですかにゃ」
リトが笑顔で圧をかける。背後にはメイドたちが立っている。
「てか、詐欺も入っていると思うが」
「食い逃げは認めませんにゃあ。そうですね~そこのご主人様をここで働くならオーケイニャ」とリトが指したのは、レオンだった。
それが狙いか。つまり多額の人身売買。
すかさず、レオンがメイドに捕まる。
「なあ!」
「ちょっとまだ・・・」
「お金ならあります」
ユビワは金貨が入った袋をガチャとテーブルの上に出す。
――俺の金!
「これで足りるかと思います」
ユビワはにやっと笑う。
「ということでレオンは返してもらいます」
リトは袋の中身を確認する。金貨がいっぱい入っている。
「は~仕方ないにゃ」
あれ。意外に下げる。
「店長。いいんですか」
「ちゃんとお金があるし、お店も壊したくないからね。それにご主人様たちもいらっしゃるし」
いや。攻撃する気あったよな。
ドーン。
その時、扉が破壊される。
「おめえ。ここか。どこのシマが知っているのか!」
ドスの入った声。
破壊した扉の方から、ウサギの耳をつけているメイドたちだった。
灰色の長い髪。灰色の瞳。メイド服を着た女が先頭に立つ。
「ここは、奉兎(ほうと)の魔女サミエラ・ミージェリックのなわばりってことを知っているが!ぴょぉおおん!」
ドスの入った語尾だった。
ちょっと前
「本当にこの店にいるの」
店の前に立っているジャンヌ、ユビワ、レオンだった。
「はい」
どう見ても怪しい店。
お店の名前が『ドキドキメイドカフェ』っていう時点で怪しい。
三角看板があったので読んでみた。
「よくもまあ。こんなこと考えるものね」
ジャンヌは呆れながら言う。
立てた看板によく見れば、絵がある。
メイドの絵がいくつも張っている。
「あ~あいつもいますね」
「どれどれ」
「これです」
ユビワが指す
嫌そうな顔をしているメイド姿のアキセがいた。
「本当に何やっているのよ」
文章があったので、さらに読み込む。
『指定したメイドにはご奉仕させます』という文章があった。
「よし。乗っかろう」
アキセが注文を取りに行っている間。
「ぐふふふふふ」
ジャンヌが黒いオーラを出して、悪だくみのある顔になっている。
「ジャンヌさん・・・」
「今は言わない方がいいぞ・・・」
「ですね・・・」
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