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約束を守ってください⑥
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「イル・・・」
「今は戦いに集中しろ!」
グラニが迫ってくる。
今はグラニを退治する方が優先。
「俺が動きを止めるから、止めをさせ」
「分かってる」
ジャンヌはロザリオを構える。
イルは精霊術を詩う。
土の槍がグラニを刺すが、風となり体を分裂する。さらにイルは詩い、風で分裂したグラニの風を包み込む。
「今!」
イルの合図で、白い炎に纏ったロザリオを大きく払う。白い炎の波がグラニの体を燃やしていく。
グラニは退治できた。
「ジャ・・・」
ジャンヌはすかさずイルの胸に飛びつく。
「よかった・・・無事で・・・」
「あ・・・平気だ」
イルが優しく返す。
もうその一言で安心できた。
「それにしてもどうやって?」
イルが瓶の中に閉じ込められ、アニエスに連れてかれた。どうやって瓶から脱出できただろうか。
「まあ、あの魔女がドジって瓶を落として、割れたおかげで逃げた」
「そういうことなの」
アニエスならありえなくもない。
「いつものジャンヌが見れてよかった」
「それって。どの辺か」と軽く笑って返す。
「魔女に対して容赦なくて。あのクズに暴力的で。でも・・・誰かのために必死になるところ。助けるためにどんな取引でも手を出してしまうところは心配になるが、でも助けたいって思いは伝わる。だからそれに答えたくなるんだ」
「私もいつも頼もしいイルが見れてよかった・・・」
それだけでもう安心できる。
「ジャンヌ。どっちにしても俺は魔女に目をつけられているんだ。おまえから離れても魔女と会う羽目になる。俺も強くならないとさ。だから、おまえが生きている限り、俺は死なない。誰だって死なせたくない。だからと言ってジャンヌ一人で片付けるな。だから一人で戦おうとするな」
「そうね」
本当に頼もしい。
「あと悪いが、組むって話。もう少し精霊術を使いこなせたいんだ。だから悪いが今はできない。けど、いつでも協力はするから」
「分かった。いつでもいいから」
ジャンヌが去った後、イルは病院の時のことを思い返す。
ジャンヌの先輩にあたる黄色の聖女アガタと話したことだった。
「いつもジャンヌをそばにいてありがとう」
アガタは礼を言う。
「そんなに心配ならどうして組まないんだ?」
聖女と組むことはできるはず。
「僕から訊いたって言わないでよ」
「分かった」
アガタの条件を受ける。
「ジャンヌは教会にいたんだ。本来教会にいる聖女を仲間にしないんだ。教会に連れてかれても助けにいけない。けどジャンヌは教会から逃げ出した。会った時もかなり追い込まれていたんだ。当時はジャンヌに対してもかなり批判があって、他の聖女となじむこともなかった。僕に対してもね。けど後輩もできて、外部で仲間ができている。昔より素直にはなった。変わっていった。僕は頼れる仲間がいるだけでも安心できた。組むかどうかは二人に任せるけど、もしまた組むようになったら・・・これからもジャンヌと仲良くやってくれ」
ジャンヌも過去に何かしらある。けど彼女から話さない限りは触れない。少しでも支えになれば。
「うまくいったっすでしょ」
肩からクノがひょこっと現れる。
「アニエスちゃんも元気になったし、よかったよかったっす」
アニエスにキスされて、恥ずかしくなって逃げたが。
「これで満足か」
「そこはお礼を言うとこでは?」
いやここで礼を言ったらまだこいつら調子に乗る。
「それにお前が言っていた作戦であのグラニのことだったのか」
「だって危機的状況の方が何かと話しやすかったでしょ」
確かに話できたが。
クノに気に入られている。アニエスのこともあって、今は好意的でもいつジャンヌを襲ってくるのかも分からない。
魔女の気まぐれは読めない。クノを倒せるとは思っていない。だから小さくでもできる限りのことをする。
「後になって、これで取引とかはないだろうな」
「だと思いたいっすね」
クノはニヤッと笑う。
「今は戦いに集中しろ!」
グラニが迫ってくる。
今はグラニを退治する方が優先。
「俺が動きを止めるから、止めをさせ」
「分かってる」
ジャンヌはロザリオを構える。
イルは精霊術を詩う。
土の槍がグラニを刺すが、風となり体を分裂する。さらにイルは詩い、風で分裂したグラニの風を包み込む。
「今!」
イルの合図で、白い炎に纏ったロザリオを大きく払う。白い炎の波がグラニの体を燃やしていく。
グラニは退治できた。
「ジャ・・・」
ジャンヌはすかさずイルの胸に飛びつく。
「よかった・・・無事で・・・」
「あ・・・平気だ」
イルが優しく返す。
もうその一言で安心できた。
「それにしてもどうやって?」
イルが瓶の中に閉じ込められ、アニエスに連れてかれた。どうやって瓶から脱出できただろうか。
「まあ、あの魔女がドジって瓶を落として、割れたおかげで逃げた」
「そういうことなの」
アニエスならありえなくもない。
「いつものジャンヌが見れてよかった」
「それって。どの辺か」と軽く笑って返す。
「魔女に対して容赦なくて。あのクズに暴力的で。でも・・・誰かのために必死になるところ。助けるためにどんな取引でも手を出してしまうところは心配になるが、でも助けたいって思いは伝わる。だからそれに答えたくなるんだ」
「私もいつも頼もしいイルが見れてよかった・・・」
それだけでもう安心できる。
「ジャンヌ。どっちにしても俺は魔女に目をつけられているんだ。おまえから離れても魔女と会う羽目になる。俺も強くならないとさ。だから、おまえが生きている限り、俺は死なない。誰だって死なせたくない。だからと言ってジャンヌ一人で片付けるな。だから一人で戦おうとするな」
「そうね」
本当に頼もしい。
「あと悪いが、組むって話。もう少し精霊術を使いこなせたいんだ。だから悪いが今はできない。けど、いつでも協力はするから」
「分かった。いつでもいいから」
ジャンヌが去った後、イルは病院の時のことを思い返す。
ジャンヌの先輩にあたる黄色の聖女アガタと話したことだった。
「いつもジャンヌをそばにいてありがとう」
アガタは礼を言う。
「そんなに心配ならどうして組まないんだ?」
聖女と組むことはできるはず。
「僕から訊いたって言わないでよ」
「分かった」
アガタの条件を受ける。
「ジャンヌは教会にいたんだ。本来教会にいる聖女を仲間にしないんだ。教会に連れてかれても助けにいけない。けどジャンヌは教会から逃げ出した。会った時もかなり追い込まれていたんだ。当時はジャンヌに対してもかなり批判があって、他の聖女となじむこともなかった。僕に対してもね。けど後輩もできて、外部で仲間ができている。昔より素直にはなった。変わっていった。僕は頼れる仲間がいるだけでも安心できた。組むかどうかは二人に任せるけど、もしまた組むようになったら・・・これからもジャンヌと仲良くやってくれ」
ジャンヌも過去に何かしらある。けど彼女から話さない限りは触れない。少しでも支えになれば。
「うまくいったっすでしょ」
肩からクノがひょこっと現れる。
「アニエスちゃんも元気になったし、よかったよかったっす」
アニエスにキスされて、恥ずかしくなって逃げたが。
「これで満足か」
「そこはお礼を言うとこでは?」
いやここで礼を言ったらまだこいつら調子に乗る。
「それにお前が言っていた作戦であのグラニのことだったのか」
「だって危機的状況の方が何かと話しやすかったでしょ」
確かに話できたが。
クノに気に入られている。アニエスのこともあって、今は好意的でもいつジャンヌを襲ってくるのかも分からない。
魔女の気まぐれは読めない。クノを倒せるとは思っていない。だから小さくでもできる限りのことをする。
「後になって、これで取引とかはないだろうな」
「だと思いたいっすね」
クノはニヤッと笑う。
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