魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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約束を守ってください③

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「あの~大丈夫ですか?」と座り込んでいるアニエスが話しかける。
「平気だから、ここから出してくれないか」
 イルはまだ瓶の中にいる。
 ジャンヌが心配だから、今すぐに出たい。アキセが関わると魔女よりも心配になる。
「その・・・その中にいてくだされば、安心できるといいますが・・・」
 悪いけど出して。
「話もできますし・・・」
 男嫌いだから距離を取るのは分かるが、出してほしい。
「何もしないから出してくれないか」
「あの・・・」
 無視される。
「ありがとうございます・・・」
 アニエスが顔を赤らめて言う。
「ちゃんと・・・お礼をお伝えしてなかったので・・・」
「お礼って・・・」
「あのクズから・・・助けていただいて・・・それに何度も・・・」
 そういえば、振り返っても、アニエスはアキセに弄ばれているとこしか見たことがない。
「あのクズが嫌いなだけだ。ついでに助けただけだ」
「それでも・・・ありがとうございます・・・」
 魔女だってことに忘れてしまうほどに素直というか、律儀というか。
「もしかして、クノ先輩から言われてます?」
 分かっていたか。
「そうだよ。後輩が心配だから助けてって」
「はは。そうでしたか」とアニエスが軽く笑う。
「私。どうしても男性の方とは・・・その・・・どうすればいいのか分からないですし・・・こう・・・欲を満たすためにいやらしいことをすると言いますか・・・」
 偏見すぎる。
「もう少し視野を広げろ。男はあいつばかりじゃないから」
「そうですね・・・イル様のような・・・紳士的な方もいますし・・・」
 アニエスが手をもぞもぞとする。
「その・・・これからも・・・頼ってもいいですか・・・」
 アニエスが指でつんつんとつく。
何を言い出すかと思えば、
恋を自覚していないだけなのか。クノが大げさに言っただけなのか。
「頼るというのは・・・」
「その全部ではないですよ。本当でしたら、私自身であのクズを解決したいところです。でも・・・どうしてもって時は・・・いいですか・・・」
 アニエスは恥ずかしそうに言う。
 魔女は図に乗るから断りたい。だか、クノに目をつけられた。契約はさせないようだか、脅しかけて頼まれる。
 ここで断れば、アニエスよりもクノが何かしらするかもしれない。だから。
「全部は保証しない。機会があったらな」
 抽象的に返す。
「はは・・・よろしくお願いします」
 アニエスが軽く笑いながら嬉しそうに笑う。
 一瞬、可愛いと思ってしまった。
 だか、相手は魔女。抜けているところがあるが、油断してはいけない。
「分かったから、ここから出してくれないか」
「そうですね」
 アニエスが手を伸ばすが、「そういえば」と手が止まる。
「訊いていなかったですか。あの白の聖女とはどういった関係でしょうか」
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