魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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物換の魔女②

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「あ・・・」
 しまった。思わず投げてしまった。アキセが胸を触るから。
 湖が光り、女が浮き上がる。なぜか背中が光っている。
 もしかして、アキセが言っていた魔女かもしれない。
「あなたが落としたのは」
 バンと白い炎を飛ばすが、湖から伸びた水の盾で防がれる。
「人の話を聞いてからにしてくれませんか」と攻撃したのに魔女は冷静に返す。
「訊かないとだめなの・・・」
「あなたが落としたのは・・・」
 勝手に話進めるし。
「この心が清らかな良心なアキセでしょうか」
 湖から浮き上がったのは、アキセと思われる人だった。
――またなの。
以前にもコルンの発明品『良心卵』で良心のアキセが生まれた。
 思わず黙り込む。
「どちらでしょうか」
「・・・」
「答えないのですか」
「答えないとダメなの」
「訊かれたことは答えるものでは」
「そもそもなんで私が落としたっていうのよ。勝手に落ちていったのよ!」
 正確には投げた。
「でも目の前にいたのはあなたですよ。たとえ事故だろうと殺害だろうと私の目の前にいる方は答える義務があり、所持者でもあるのですよ」
「押しつけがましいにもほどがあるんだけど!てか、殺害とか事故って決めつけないで!」
「大半この湖に人を落とすのが、犯罪目的です。それに良心として帰ってきたんですよ。喜ぶべきでは」
「落とした本人が戸惑うわ!」
 思わず突っ込む。
「あんた。もしかして一枚の葉が湖に落ちたとしてもこのやり取りをするわけ」
「たった一枚の葉としてもその人にとっては大切なものかもしれません。落としてしまったものを倍に返すものなんですよ」
――それって、大事なものだって言っても、手元に戻してないじゃないか。
「正直なあなたにはこの清らかな良心なアキセを渡します」
 良心のアキセが横に置かされる。
「あ!話が終わっていない」
「今度から人に聞かれたことは答えるように」と少し切れ気味に言いながら魔女は湖に沈んでいく。
「あんたも人の話を聞けよ!」
「では」と人の話を訊かずに帰っていった。
「訊けや!」
 怒鳴りつけても声だけが響く。
 ここまで人の話を訊かない魔女がいるとは。イラつかせる。
「たく・・・」
 勝手に良心と言われるアキセが置かされ、指輪もまだ湖の中。どうすればいいのか。
「お久しぶりです」
「何が・・・え?」
 なぜ、お久しぶりというんだ。
「僕ですよ。以前『良心卵』で生まれたもう一人の僕ですよ」
「え“・・えええええええええええええええええ!」
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