魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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仕返しした末路⑥

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「そこまでだ!」
 男の声。
 視線を向ける。
 イーグスの首に赤い剣が添えられている。
 長い金髪。赤い瞳。赤紫色の騎士の恰好をしている男。その男は、もう一本の赤い剣で黄色の聖女アガタのシチリア・リングを止めていた。
 アガタの目に殺意を込めている。
「ブラドか・・・」
 アガタは低い声で男に言う。
 ブラドは、確かカーミラの旦那。
 魔族(アビス)である吸血鬼(ヴァンパイア)が、最強の聖女の一人であるアガタを止めた。
「あなたたちとは争うつもりはない。そこの白の吸血鬼を連行しにきただけだ」
 それでもシチリア・リングを下ろさないアガタ。
 ブラドは抑えられているが、手元が小さく震えている。必死に抑えているようだ。
「イーグス。命が欲しければ、手を離せ」
 黙り込むイーグスは手を離す。
 倒れていくジャンヌをイルが受け止め、距離を取る。
「ジャンヌ!」
 イルが必死な顔で声をかける。
「平気・・・」
 弱弱しく返す。
「やれやれ。ここまでか」
 イーグスは手を上げる。



 ジャンヌは気がついた時には、いつもの部屋でアガタがいた。
「よかった。目を覚めて」
 アガタは安心したように見つめる。
「何日経ちました」
「2日」
「2日も・・・」
 ジャンヌは思い返す。

 ブラドがイーグスを連れていく時だった。「解除」と言った途端に体の中に入っていた『権利独占玉』を吐いた。赤い玉は割れ、完全に解放された。
「約束は守りましたよ」とイーグスが軽く笑って消えた。
 最後まで腹が立つ。もう二度と会いたくない。

「君の連れ。イル。今外部で治療している。命の別状はないよ」
 聖女の地は光の濃度が高いから聖女と聖獣しか入れない。他の種族で聖女と仲間になった者は外部で治療することになっている。
 イルが生きていることに安心した。
 あのタイミングでアガタが来た。だとしても。
「イヴ様の指示ですか」
「そうだよ。今すぐ助けに行きなさいと」
「そうですか」
 聖女を見捨てないは知っている。けど、その助けるタイミングがよく分からない。


 体が動けるようになったので、すぐに聖女の地を出で、治療を行っている施設に向かった。
 部屋に入れば、うつ伏せにいるイルがベッドの上にいた。
「ジャンヌか・・・」
 視線だけ向いた。
「よかった・・・」
 ジャンヌはイルに寄り添い、ベッドに顔をつける。
「ごめんなさい・・・巻き込ませて・・・」
「俺は平気だ・・・だがら自分を責めるな・・・」
 頭の上に重みを感じる。
「ごめんなさい・・・」
「俺が生きているからもう責めるなって」
「違うの。私に原因があるの。私が起こしたの。本当につまらない理由で・・・だから・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・だから・・・」
「それで組む理由を断ることにならない」
 イルがはっきり返す。
 ジャンヌは顔を上げる。
「だか、無理に言うつもりがない。おまえがまた組みたいって思えたら呼んでくれ。それに助けが必要だったら時はいつでも助ける。協力する。それだけは忘れないでくれ」
「うん・・・」
「それまでにも俺も強くなるからさ」


 イルはまだ治療に専念することになった。
森の中を漂うと、「ご無事で何より」と振り向けば、チェシャがいた。ただ顔にひっかいたような傷があった。
 その傷のことを訊く気にはならなかった。
「何」
「しゅらさんから話をしたいとのことで」
「だったら自分から来なさいよ」
「ですって」
 チェシャが顔を向けた先に、赤の従士の一人。しゅらの魔女アリス・キテラが現れた。
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