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省かれた一族 後半⑤

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 ジャンヌを完治するまで時間を稼ぐしかない。
 アキセがこのまま連れ出す可能性もあるが、治せるのはアキセしかいない。
 ここからジャンヌが離れれば、こっちはどうにかして逃げればいい。
 いくら距離を離そうと攻撃し続けているが、黒い狼が維持でも奥へと向こうと必死に突進してくる。
 そこまで聖女であるジャンヌを狙っているのか。だとしたら全力で阻止するしかない。
 イルは詩い、風で黒い狼を後ろへ吹き飛ぶ。闘技場まで飛ばせた。
 中廊下からイルは眺める。
 詩う。土が伸び、黒い狼を包み込む。
 動きを止めた。これで時間は稼げる。
 黒い狼が体を動かしてもがえている。今度は吠える。泣き叫んでいるようだった。
 聞こえる。
 怪物として生まれた子供の時と同じ。この狼の正体は。
 その時、焦点が合わない。頭痛が起きる。
――こんな時に。
 黒い狼を包んだ土がもろくなり、黒い狼が解放する。口から青黒い炎を放つ。
 しまった。
 黒い炎をまともに受け、壁にぶつかる。
 体が燃えていく。皮が焼けていく。イルは詩い、風で青黒い炎を払う。
 体に火傷を負ってしまった。ひりひりする。
黒い狼は建物の中へと戻る。
 早く追いかけなければ。
 追いかけようとするが、背中に刺される。
「なに・・・」



 黒い狼を探し、廊下を歩いていた。
「どこに行ったのでしょうね」
 ジャンヌはイーグスに腕を掴まれ、引っ張られている。
 アキセに体力を奪われ、毒に耐えるためにも体力を使われた。まだどうにか動けるが。
「この状態でよく言えるわ・・・」
「どうやら相手は魔女じゃないでしょうし。急速な魔族化が原因ですので、魔女を退治するほどの『光』は必要ないでしょう」
「だとしても・・・」
 背後から視線。
 振り向けば、針が飛んでくる。イーグスが大きく振り、赤い刃を飛ばす。赤い刃が針をぶつける。攻撃した相手はビクトリアだった。
「イーグス様・・・」
――この女。また殺そうとしやがって。
「なんで・・・その女を・・・」
 ビクトリアが必死な顔で求める。
 イーグスは答えることもなく黙り込む。
「どうして!」
「気持ち悪い」
 イーグスの発言にビクトリアが黙り込む。
「おまえらが求めているのは、この顔と体だけだろうが」
 いつもと違って口調が強い。
「一目見ただけで簡単に惑わされて。求めるお前らは気持ち悪い」
 イーグスがビクトリアに向き、にらみつける。
「ちが・・・」
 その時、黒い狼が現れる。
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