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省かれた一族 前半⑤
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気が付けば、苦しい。頭が痛い。呼吸が乱れる。めまいがする。
ここはどこかと周囲を確認すれば、イルは檻の中にいる。
体中に傷がある。じんじんと痛みがする。血も軽く流れている。手足、首に鎖、口にも口輪をつけられている。口輪の中にとげの玉が舌に当たるようにしているため、うまく話せない。これでは精霊術が使えない。
早く脱出しなければ。
「ここか」
声をした方へ向けば、二人の男が檻の前に立つ。
「まだ生きているか」
「はい。しぶとく」
「そうか」
男と目が合う。
「おまえ。白の聖女ジャンヌ・ダルクと知り合いか」
ジャンヌの名を訊いて、体が反応する。
「やはりか」
まさか、ジャンヌがここにいるのか。
「こいつを別の場所に移動しろ」
「どちらに」
「地下だ。まだ空いているだろ。そこに移動しろ」
「かしこまりました」
「死なない程度なら薬をつかっても構わない」
人質に使わせるつもりか。させるか。
檻が開け、男たちが入ってくる。
腕を引っ張り、繋げていた鎖を壁から引きちぎる。そのまま鎖を吸血鬼(ヴァンパイア)たちにぶつける。自由になった片手で口輪を砕く。
詩う。風が発生し、男たちを檻の外まで吹き飛ばす。
その隙に風で鎖を切り、檻から飛び出す。
早くジャンヌを見つけなくては。
案内された部屋で夜になるまで待機することになった。
ジャンヌは大きい窓の前にある椅子に座っていた。
「事件は夜起きるようなので、ゆっくり待ちましょう」
イーグスに向けることもなく、窓に視線を移す。
もうすぐ日が暮れる。夜になり、野獣が現れる。
その前にイルを解放したい。
ベンジャミンはイルのことを感づいている。おそらくイルを人質にするはず。でも、『権利独占玉』で何もできない。
「ベンジャミンがイルのことを感づいている」
「それが」
「この取引を最後まで受けるから、イルを解放させて」
「まだ事件は解決してませんよ」
やはりイルを解放させないが。
「あと確認したいんだけど」
「何でしょうか」
ベンジャミンがイーグスの関係が悪いのは察している。関係を悪化させるため、あの発言したのもあるかもしれない。けど、確かめる必要はある。
「本当にカーミラから言われた仕事なの」
イーグスにはっきり言う。
「ベンジャミンが見放されているって。なのに、あんたからは、カーミラから仕事を頼まれたっていうけど、なんで守る理由があるの」
イーグスは黙り込む。
「あなたが最初に受けるつもりもないって言った。真面目に調査するつもりもない。この事件の解決が目的じゃない。私に協力させるために、あいつを鏡に閉じ込めて、指輪を取って、イルまで巻き込ませた。それに『権利独占玉』まで使ってまで。かなり徹底的じゃないの」
人質を二人も取って協力させようとした。
「前回のことを晴らすためにカーミラの名前を使ったの」
イーグスは挟むように椅子に手を当てる。
「そもそも僕には権利はない。カーミラの所有物になっていなければ、立場がない。はぐれ吸血鬼(ヴァンパイア)以下にもなりかねない」
白の吸血鬼(ヴァンパイア)は、聖女の血を吸えるほどに『光』の抗体が高い。吸血鬼(ヴァンパイア)側からしたらかなりの戦力になると思うのに。そこまで立場が危ういのか。
「魔女と相手しているから分かると思いますが、魔女は気まぐれでわがままで自己中心であること。気分次第でいつ殺されてもおかしくない。だったら名前を使ってまでこの鬱憤を晴らしても構わない」
「やるとしても他で使ってほしいね」
「それだけの価値があなたにあるってことですよ」
「笑われたことに」
「人の不幸をあんな大声で笑うのもどうかと思いますが」
「その動機でここまで巻き込ませるあんたも異常よ!」
恨みがあるなら、ジャンヌだけに向ければいいもの。イルや指輪まで巻きこませて。
「それに元凶考えるとしたら、私よりもあの空想魔女に当てなさいよ」
そもそもくうそうの魔女ルシア・ファンタジアがイーグスに仮面のタタリをかけたことから始まった。
「あの魔女も恨みがありますが、優先的にあなたにしました」
魔女よりも優先した。腹が立つ。
「ほんとにサイテー。あとでカーミラに怒られても知らないから」
「ご心配なく、その対策もしておりますので」
「カーミラから逃げ切れるとは思わないけどね」
最古の魔女の一人であるカーミラから逃れるとは思えない。
「だとしても、僕をここまでさせた聖女様が悪い」
首に噛まれる。血を吸われる。
「離れろ!」と突き飛ばす。
噛まれた首を押さえる。
「ご心配なく、仕事する分は残しますので」
イーグスが逃さないようにまた椅子の前に立つ。
「抵抗しないでください」
イーグスが口を開けた時だった。
ガチャ。
イーグスの頭に銃が向けられる。銃の引き金に指をかける。銃声の音もなく、イーグスは頭を打たれ、倒れていく。
銃を撃った者の正体が、拘束鏡に閉じ込めているはずのアキセだった。
ここはどこかと周囲を確認すれば、イルは檻の中にいる。
体中に傷がある。じんじんと痛みがする。血も軽く流れている。手足、首に鎖、口にも口輪をつけられている。口輪の中にとげの玉が舌に当たるようにしているため、うまく話せない。これでは精霊術が使えない。
早く脱出しなければ。
「ここか」
声をした方へ向けば、二人の男が檻の前に立つ。
「まだ生きているか」
「はい。しぶとく」
「そうか」
男と目が合う。
「おまえ。白の聖女ジャンヌ・ダルクと知り合いか」
ジャンヌの名を訊いて、体が反応する。
「やはりか」
まさか、ジャンヌがここにいるのか。
「こいつを別の場所に移動しろ」
「どちらに」
「地下だ。まだ空いているだろ。そこに移動しろ」
「かしこまりました」
「死なない程度なら薬をつかっても構わない」
人質に使わせるつもりか。させるか。
檻が開け、男たちが入ってくる。
腕を引っ張り、繋げていた鎖を壁から引きちぎる。そのまま鎖を吸血鬼(ヴァンパイア)たちにぶつける。自由になった片手で口輪を砕く。
詩う。風が発生し、男たちを檻の外まで吹き飛ばす。
その隙に風で鎖を切り、檻から飛び出す。
早くジャンヌを見つけなくては。
案内された部屋で夜になるまで待機することになった。
ジャンヌは大きい窓の前にある椅子に座っていた。
「事件は夜起きるようなので、ゆっくり待ちましょう」
イーグスに向けることもなく、窓に視線を移す。
もうすぐ日が暮れる。夜になり、野獣が現れる。
その前にイルを解放したい。
ベンジャミンはイルのことを感づいている。おそらくイルを人質にするはず。でも、『権利独占玉』で何もできない。
「ベンジャミンがイルのことを感づいている」
「それが」
「この取引を最後まで受けるから、イルを解放させて」
「まだ事件は解決してませんよ」
やはりイルを解放させないが。
「あと確認したいんだけど」
「何でしょうか」
ベンジャミンがイーグスの関係が悪いのは察している。関係を悪化させるため、あの発言したのもあるかもしれない。けど、確かめる必要はある。
「本当にカーミラから言われた仕事なの」
イーグスにはっきり言う。
「ベンジャミンが見放されているって。なのに、あんたからは、カーミラから仕事を頼まれたっていうけど、なんで守る理由があるの」
イーグスは黙り込む。
「あなたが最初に受けるつもりもないって言った。真面目に調査するつもりもない。この事件の解決が目的じゃない。私に協力させるために、あいつを鏡に閉じ込めて、指輪を取って、イルまで巻き込ませた。それに『権利独占玉』まで使ってまで。かなり徹底的じゃないの」
人質を二人も取って協力させようとした。
「前回のことを晴らすためにカーミラの名前を使ったの」
イーグスは挟むように椅子に手を当てる。
「そもそも僕には権利はない。カーミラの所有物になっていなければ、立場がない。はぐれ吸血鬼(ヴァンパイア)以下にもなりかねない」
白の吸血鬼(ヴァンパイア)は、聖女の血を吸えるほどに『光』の抗体が高い。吸血鬼(ヴァンパイア)側からしたらかなりの戦力になると思うのに。そこまで立場が危ういのか。
「魔女と相手しているから分かると思いますが、魔女は気まぐれでわがままで自己中心であること。気分次第でいつ殺されてもおかしくない。だったら名前を使ってまでこの鬱憤を晴らしても構わない」
「やるとしても他で使ってほしいね」
「それだけの価値があなたにあるってことですよ」
「笑われたことに」
「人の不幸をあんな大声で笑うのもどうかと思いますが」
「その動機でここまで巻き込ませるあんたも異常よ!」
恨みがあるなら、ジャンヌだけに向ければいいもの。イルや指輪まで巻きこませて。
「それに元凶考えるとしたら、私よりもあの空想魔女に当てなさいよ」
そもそもくうそうの魔女ルシア・ファンタジアがイーグスに仮面のタタリをかけたことから始まった。
「あの魔女も恨みがありますが、優先的にあなたにしました」
魔女よりも優先した。腹が立つ。
「ほんとにサイテー。あとでカーミラに怒られても知らないから」
「ご心配なく、その対策もしておりますので」
「カーミラから逃げ切れるとは思わないけどね」
最古の魔女の一人であるカーミラから逃れるとは思えない。
「だとしても、僕をここまでさせた聖女様が悪い」
首に噛まれる。血を吸われる。
「離れろ!」と突き飛ばす。
噛まれた首を押さえる。
「ご心配なく、仕事する分は残しますので」
イーグスが逃さないようにまた椅子の前に立つ。
「抵抗しないでください」
イーグスが口を開けた時だった。
ガチャ。
イーグスの頭に銃が向けられる。銃の引き金に指をかける。銃声の音もなく、イーグスは頭を打たれ、倒れていく。
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