魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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省かれた一族 前半③

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 前にも似たようなことがあった。
 あの時はアキセだったが、今回はイーグスになるとは。
 ジャンヌは仕方なく着替える。
 イーグスと一緒に転送し、ある部屋に着いた。転送できたのもコルンの発明品だろう。
 当主は礼儀がうるさいということで着替えさせた。
 どっちにしても『権利独占玉』を飲まれている以上、イーグスには逆らえない。着替えれば、黒い長い手袋に胸までの白と黒のドレスだった。
「似合っていますね」とイーグスは笑顔で言う。
 その顔を殴りたい。
「あとこれもお願いします」
 イーグスが持っていたのは、紐が付いたベールだった。勝手につけられる。
「首元を隠して下さい。食いついてしまう吸血鬼(ヴァンパイア)もいますので」
 取れないように首元にある紐を軽く絞める。
「ふん!」と視線を逸らす。
「では、ご挨拶に行きましょうか」
 イーグスは手を差しだす。
 手を伸ばそうとしたが、「では、こちらへ」と手を扉の方へと向ける。
「このまま指が折るのが目に見えたので」
 ち。バレたか。アキセは引っかかったのに。
「そんな小さな嫌がらせしなくてもいいですから、行きましょ」
「はあー」と重いため息を吐く。



 廊下を歩く。
「いい加減。イルの場所を教えてほしんだけど」
 イーグスが止まる。
「もうあんたから逃げることはできないのよ。教えてもいいんじゃないの」
 イーグスににらみつける。
「では少し寄り道しましょう」
 イーグスに案内されば、中廊下で囲まれている闘技場だった。
 階層が観覧席になり、所々に吸血鬼(ヴァンパイア)たちがいる。
「やっぱりいましたが」
 ジャンヌは闘技場を見て、息が止まりそうになった。
 イルがオオカミの獣人と戦っていた。
 イルの様子がおかしい。興奮している。理性をなくした動物のように戦っている。
「ここで声を出したら、聖女と関係があって、ほかに利用されかねないですよ」
 耳元でささやく。
「何なの。これは・・・」
「ここの一族は、狼の獣人を飼っているんですよ。狩場に出したり、あーやって戦わせているんですよ。しかも盛り上がるために、薬を与えて」
「薬って・・・」
「興奮を増す薬です。まあ使われ続けると死ぬみたいですけどね」
 イルが興奮しているのは、薬を飲まされているから。
 今から飛び出して、イルをここから連れ出したい。けど、『権利独占玉』がある限りに何もできない。
「そういう顔もするんですね。あなたも」
 その発言で腹が立った。
 イーグスに殴ろうとしたが、顔を軽く傾ける。
「その対応はよくないですよ」と余裕な顔で言う。
「この・・・」
「十分でしょ。待たせておりますので」
 肩を触り、無理やり方向を変える。
「では行きましょうか」
 動きたくない足が一歩踏み出してしまう。
 絶対に助けるから。
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