魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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狼の取り替え②

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 ある日、きんしゅの魔女ピルク・アップルツリーがアニアの元にやってきた。
「リンゴ料理のバリエーションを広げたい?」
 ピルクは大きくうなずく。
「私、弟子をとらないことになっているの」
 以前弟子を取り、悲惨な目に合っている。今でも引きずっている。
 ピルクは口を開くも、声は出ない。
「リリス様から?」とアニアには通じた。
 魔女なら声を出さなくても通じるようだ。
 ピルクがうなずき、さらに口を開く。
「リリス様からそこまでおっしゃっていたのね~」
 アニアがデレる。
 よきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーは常連。リリスから紹介されたと訊いて嬉しいようだ。
「ならいいよ!」
 即答。
 これでピルクは、アニアの弟子になった。
 改めて聞いてみるとピルクはリリスにリンゴ料理をしていたが、飽きかけているようだ。リンゴのみしか料理したことなかったので、リリスに勧められてアニアに来たとのことだった。
 後日、料理を教わる約束をした。
 今日は、ピルクと一緒に料理を教える約束としてアニアと一緒に向かっていた時だった。
 あの匂いがした。あいつだった。忘れもしない。片目を失いさせ、散々邪魔してきた恨みのある男。
 思い出しただけで、一気に怒りがこみ上げ、アニアを無視して走り出す。
 本来ならアニアを優先すべきだか、生かしていけない存在。ここで仕留めなければ、今後も邪魔してくる。
 走りつけば、アキセ・リーガンを見つけた。
 牙をむき出して襲い掛ける。
「おい、やめんか!」
 ドタバタドタバタ。ドタバタドタバタ。
 他のにおいもした。獣の匂い。あまりかいだことのない匂い。だか、今はアキセ抹殺に専念する。
 急に煙に包まれる。少し匂いが分からなくなる。なぜか体が軽くなっていく。
「もう何をやってるの!」
 アニアの声がしたが、それっきり声がしなくなった。
 気が付けば、倒れていた。
 体が軽い。妙に違和感がある。手を前に出せば、人の手。体を触っても人の体。服装を見てもアキセの服だった。
「これは!」
 声もアキセの声だったから、思わず口を塞ぐ。声までも。
 まさか、アキセの体にいるのか。いつの間に。
 嫌な相手の中にいる。それだけでもかなり落ち込む。いや、落ち込んでいる場合ではない。
 もしかしたら、アーノルドの体にアキセが入っているかもしれない。
 あの時、アニアの声がした。連れていったのは、アキセが入ったアーノルド。
 急いでアニアの元にいく。
 森の中にある小さな家。扉を開ければ、やはりいた。
 アニアとピルク、アーノルドに入っているアキセもいた。一斉に振り向いた。
 ドタバタ。
 すぐにアニアとピルクに捕まってしまう。
「あとで保存食に変えるから」とアニアが言い、縄にしばわれ、倉庫に入れられてしまった。
 冷静に考えれば、話しても分かってくれるとは思えない。アニアは、料理人としてはかなりの実力。できないことはないのかと疑うほどに。ただ話を訊かないこともあるし、料理に夢中で視野が狭くなる。
 どうすれば、いいか考えていた時だった。
 倉庫に誰かが入ってきた
 もう食材にされるかと思えば、アキセが入っているアーノルドだった。
 笑ってきたに違いない。
 にらみかえす。口もふさがれているから威嚇するだけ。
「おまえ。もしかしてこの体の者か?」とその発言で理解した。
 今、アーノルドに入っているのはアキセでないことに。
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