魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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狼の取り替え①

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 ジャンヌが森の中を歩いている時だった。
 突然何かが飛び出し、押しつぶされる。
  確認すれば、白い狼の聖獣(ルーチェス)のスピカだった。
「スピカ?!」と思わず声を上げる。
 異常にじゃれる。顔を胸に押し付け、大きく尾を振る。明らかにスピカの様子がおかしい。しかも妙に鳥肌が立つ。
「アタランテはどうしたの?」といつも一緒にいるアタランテのことを訊こうとしたら、「見つけた!」とアタランテが飛び出した。
「先輩と一緒だったんですね」
「さっき飛び出したのよ。あとスピカを動かしてくれない。このまま潰れそう・・・」
 いまだにスピカが乗ったままで動こうとしない。重さで体が圧迫して苦しい。
「スピカ!先輩から離れて!」
 アタランテがスピカを押しても引いても動こうとしない。
 スピカの口が胸を触っていく。
「スピカ!」
「ちょ!いやらしい!」
 スピカはこんないやらしいことをしない。明らかにおかしい。
 その時、スピカが急にピーンと動きが止まる。
「何?」
「何やっているんだ?」
 男の声。声をした方へ向けば、イルがいた。
「イル」
「あれ?何か変わりました!」とアタランテは驚く。
 そういえば、アタランテは魔族(アビス)化したイルとは初めてだった。
「まあ。いろいろあって魔族(アビス)になったの」
「え!そうなんですか!」
「まあな」
 いつの間にかスピカが離れた。距離を取り、牙をむき出して威嚇する。
 スピカがイルに威嚇している。スピカとイルは仲が悪くないはずなのに。本当にスピカはどうしたのか。
「本当にどうしたの。スピカ」
 アタランテがスピカを心配する。
「ん~」
 ジャンヌは考え込む。
「アタランテ。急に飛び出したって言っていたけど、それまでは何もなかったの」
「はい。私がこの森で歩いていた時に、急にスピカが威嚇して飛び出したんです」
「威嚇して?」
「敵が現れたのかと思ったんですけど・・・」
「ちょっと待ってろ」
 イルが詩う。
「え?イルさん。精霊術使えるんですか!」
 精霊術は精霊の声が聞こえるエルフしか使えない。エルフ以外使えるイルに対してアタランテは驚いている。
「ええ」
 急にイルの顔が青ざめる。
「どうしたの?」
「悪い報告だけどいいか・・・」
「いいけど」
 まさかとは思うけど。
「あいつに。魔女が二人いる」
 ジャンヌは頭を抱える。
 その単語だけでもういやな予感しかしない。
「あいつなの・・・」
「ああ」
「あいつって?先輩が困ってるストーカーですか?」
 アタランテは訊く。
「うん・・・そういえば。スピカってあいつが嫌いだったわね」
「そういえば、いつも噛みに行っていましたね」
「そうか。あいつの仕業か」とジャンヌはポンと手のひらに拳を軽くたたく。
「あいつがスピカをおかしくしたんだ。よし、あいつを捕まえて懲らしめよう」
「おう」「はい」
 全員一致する。
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