魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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メダルビースト 前半①

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 しつこい。
 ジャンヌは空を飛びながら、ワイバーンに追われていた。
 ワイバーンは、かいぶつの魔女エキドナ・キメライムの子供。合成獣(キメラ)のドラゴンの一種。大きい尾。腕に大きい翼をつけた巨大なトカゲ。
 ワイバーンが体を大きく回転し、尾にたたきつけられる。
 勢いよく落ちていく。やっと勢いが止まったと顔を上げれば、穴の中に落ちてしまった。それにワイバーンも穴の中へと入ってくる。
 上がれない。
 ワイバーンの大きい口が近づく。
 その時、岩壁から黒い触手が伸びる。
「何?」
 ジャンヌは着地する。
 黒い触手がワイバーンの体を絡め、引っ張っていく。手足をちぎり、さらに切口から黒い触手が入り、体から黒い触手が伸び、体をちぎっていく。ワイバーンの肉体が落ちていく。  
 ワイバーンが消えれば、もう一人の侵入者へと標的が変わる。黒い触手が迫ってくる。
 白い炎の球を投げる。黒い触手は白い炎に包まれ、消えていく。
 やはり、あの触手は『呪い』で作られたものか。
 また、黒い触手が一斉に伸びていく。
 ロザリオを構え、白い炎を飛ばそうとするが、黒い触手に光線が当たる。
 その時、肩に何か掴まれ、勢いよく動かされる。黒い触手から離れていく。



 暗い洞窟に所々生えている紫色の結晶で軽く明るさを得ている。それだけ『呪い』の濃度が高い。まだ『光』はあるが、長居はしたくない。
 肩が軽くなった。
「あなたは聖女様でよろしいでしょうか」
 声をした方へ上げれば、少し大きいハクトウワシだった。
 話ができる。魔族(アビス)だろうか。異獣(エヴォル)は身体能力、体形が変わるだけ。話すことはできない。
「あなた・・・」
 急に姿を変えた。
 羽は背中に移動する。体から折りたたんでいた手足が伸びる。鳥の顔から口が伸び、人の顔が見せる。ジャンヌより少し背が高い人型に変わった。
「僕はメタルビーストのバーストイーグルと申します。どうかお願いします。魔女を退治してください」
 バーストイーグルは、膝をつき、頭を下げて言う。



 詳しく話すというので、バーストイーグルが案内された小さな洞穴に入る。
「ここは・・・」
「ここで身を潜めています」
 身を潜めている。魔女からだろうか。
「メタルビーストって確か動物の姿に変形できる生きた兵器でしかも消息たったって聞いたけど・・・」
「我々はノレッジの脅威から逃げるため、今は地下に身を潜めています」
 第4次世界大戦に人が様々な技術を使って生み出した兵器。
 ロストテクノロジーの一種。その知識もラプラスに奪われている。ラプラスに今も狙われているから地下に逃げたということか。
 当初は人間の兵器として使われたが、人に反乱を起こした。それから無差別に殺したと訊いている。魔女も聖女も。
「そう。で、魔女を退治してほしいって」
「はい」
「魔女は、我々を逃がさないようにこの国に結界を張りました。外に出ることはできません。脱出を試みましたが、あの黒い触手で殺されました」
「それだと魔女を倒さないと出られないと言っているように聞こえるけど」
「そうなります」
結局魔女を退治しないと脱出できない。それに先ほどの戦闘でもう魔女に見つかっているかもしれない。
「もう僕たちではどうにもならないんです・・・このままでは・・・このままでは・・・」
 でもこの慌て様は他にもあるようだ。
「魔女だけで終わることなの」
「・・・」
 黙り込む。
「私は魔女しか関わらない。けど、魔女を退治するためにもあなたたちの現状を話してくれる」
「分かりました。お話します」
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