魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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海の仕置人⑤

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 部屋に運び込まれ、ジャンヌとアマビエは突き飛ばした。扉は閉まり、アマビエが扉を開けてもびくともしなかった。鍵をかけられた。
 アマビエが肩を貸し、部屋にあったベッドまで運んでくれた。
 ジャンヌはそのままベッドの上に寝込む。
 体がまともに動けない。頭痛も吐き下もする。呼吸も乱れてきた。
「ジャンヌさん・・・」
 アマビエは心配そうに見つめる。
「どうにか・・・」
 大丈夫っていっても嘘になる。
 海の中では出られない。体がまともに動けない。早く『光』が底をつく前にどうにかしなければ。
「せめて・・・毒をどうにか・・・」
「毒・・・」
 アマビエが考え込む。
「針。炎・・・もしかしたら!」
「待たせたな」
 トリトンが陽気に部屋に入ってきた。
――タイミングよく入ってくるな。アマビエが言い掛けただろうが。
「何勝手にベッドの上に乗っているんだ!」
 トリトンに胸蔵を掴まれ、投げられる。床にたたきつけられた。体中痛みを感じる。対抗したいのに動けない。
「ジャンヌさん!」
 アマビエがヒレの腕を伸ばそうとしたが、トリトンに腕を掴まれ、胸に寄せられる。そのままベッドの上に座わらせる。
「はな!」
「なあ、アマビエ」
 トリトンがアマビエに話す。
「こいつを助けたいんだろ。死ぬことはないが1週間は続く。けど解毒剤はここにある」
 トリトンは小さな瓶を見せる。瓶の中には透明な液体だった。
「だからさ。1回ごとに俺と相手するならその1回分軽くさせてやる」
――殺す
 その発言で殺意をトリトンに向ける。
 アマビエが迷った様子だった。
「だめ・・・」
 完全に治すつもりはない。聖女に恨みがあって、勝てると思って調子を出した。あの瓶の中はおそらく。
「黙れ」
 トリトンが手を伸ばし、水柱が飛ばす。軽く飛ばされた。
 こいつ。本当に調子乗りやがって。顔の原型がないほどに嬲り殺す。絶対に殴ってやる。体に染みるほどに恐怖を与えてやる。
「ジャンヌさん!」
「治してやるって。どうする」
 トリトンが改めてアマビエに訊く。
 アマビエは顔を向く。目を左右に動かし、覚悟を決めたようにゆっくりトリトンの方を向く。
「はい・・・」
 アマビエが承諾する。
 思い通りいったような顔をするトリトン。
「あと訊きたいことがあるんだけど。リヴァイアサン様に何をしたんだ」
 トリトンがアマビエに訊く。
――リヴァイアサンってあの最古の魔女の一人の
 うずうみの魔女リヴァイアサン。最古の魔女の一人。海を支配する海の女王。
 アマビエがリヴァイアサンと関係あるのか。
「言われているんだよ。お前を見つけたら、なんでもいいからひどい目に合わせろって。まあ嫉妬深い魔女だからな」
 トリトンと契約している魔女はリヴァイアサンのようだ。だか、なんでわざわざ手下にやらせる。自ら攻撃する手段もあるのに。それとも間接に痛めつけたのか。
「いや・・・」
 アマビエが震えている。顔色が悪くなり、目が泳いでいる。怯えているほどにリヴァイアサンと何かあったようだ。
「まあいいや。ゆっくり聞いてやるとして」
 トリトンがアマビエを押し倒す。
「息抜きで俺と1回」
 トリトンがアマビエの衣に手を付け、大きく広げる。
「胸がほどよくあって~肌もきれいだし・・・」
 トリトンが体をあちこち触る。いやらしく触っている。
 このままするつもりはない。
「やめ・・・」とジャンヌがしびれて動けない体を動かそうとした時だった。
 部屋の向こうが騒がしい。
「あ“あ”?」とトリトンが扉に向ける。
 部屋に何かが飛んできたと思えば、魚の獣人だった。しかも何に殴られた跡があった。
 誰かが入ってきた。
 長い青い髪。青い瞳。手足が鱗に覆われ、尾ひれがある尾。棍棒を2本持つ男。
「レイガン・・・」
 一番に声を上げたのはアマビエだった。
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