527 / 654
海の仕置人④
しおりを挟む
苦しかった水からやっと息が吸える。急に空気が入ったからせき込む。
「大丈夫ですか」
アマビエが言う。
「一応・・・ここは・・・」
青い床と壁。まるで水の中にいるような空間だった。
「ほう。思ったよりかわいげあるじゃないか」
男の声。
手には金色の三叉槍を持っている。
海のように輝く髪。金色の瞳。体の一部が鱗に覆われている。顔を整っている青年だった。
話に訊いたトリトンか。
よく見れば、周りには魚の魔族(アビス)か獣人がいた。触角を持った獣もいた。アマビエを襲った獣だろう。
「あんたが・・・」
「俺がイケてる男のトリトンだ」
やばい。ここにも同族がいる。誰かを思い出してしまう。
アマビエが怯えている。
「そんなに怖がるなよ。可愛がってあげるからよ。もう一人の女は・・・」
トリトンは顔を青ざめて、一歩引く。
「げ!聖女!」
トリトンの言葉に周辺の魚の獣人も怖気る。
もしかして聖女と戦ったことがある。だとしても今がチャンス。
ジャンヌはすぐさま飛び出す。ロザリオで三叉槍を払い、一発トリトンの顔に殴る。トリトンは倒れ、そのまま乗り、ロザリオでトリトンの首を添える。
「来たらこいつの首をはねる!」
周辺の魚の獣人に怒鳴る。
「つ・・・」
「ここから二人とも出しなさい!」
トリトンに脅す。
聖女で気づいただけで怖気ている。過去に戦って、恐怖を感じるほどに痛めつけている。
脅せば。
トリトンはにやつく。
「つまりおまえ一人じゃあ、ここから出られないってわけか!」
トリトンの顔が豹変した。勝ち取ったような顔に。
トリトンの周辺に円形の穴が広がり、トリトンと一緒に落ちる。水の中だった。塩っぽさもある。海の中だった。
トリトンに腹を蹴られる。先にトリトンが穴に戻り、穴が防がれる。
マズイ。息が続かない。泳げない。このままでは死ぬ。
トリトンが魔力で作った建物なら、『光』なら効く。
白い炎を足に集中していつも以上に噴射する。手を伸ばして白い炎を床に当てる。海の中だからより『光』を浪費させる。だか、今はその方法しかない。床に穴が空いた。
すぐに穴に入る。床にへばりつくように上がる。
急いで呼吸を整えようとしたが、頭を踏まれる。
「おまえ、水がだめなのか」
トリトンが見下ろす。
「しかも炎を使ったな。じゃあ水に弱いってわけか。聖女の中でも弱点あってよかったわ」
「決めつけないでくれる・・・」
ジャンヌも睨み返す。
「あんた・・・聖女とケンカ売ったんじゃないの。だからさっきびくついた・・・それで勝てると思って調子出したってとこね」
「だったら、俺を殺してみろよ。ここは海の中で、この空間も俺が作った。この意味分かるな」
トリトンがこの空間を作っている。トリトンを完全に殺せば、この空間が保てなくなり、ジャンヌは海の中に溺れてしまう。
「じゃあ、殺さないでやるから、おまえを顔の原型がないほどに殴ってやる」
「やってみろ」
トリトンが足を上げる。また床が塞がっていない。また海の中に落とすつもりだろう。さすがに連続で使いたくない。
「やめて!」
トリトンの足が止まった。
「あ?」とトリトンが振り向く。
アマビエが魚の獣人たちに捕まれていた。
「ジャンヌさんをここから出してください。大人しくしますから・・・」
「それだとまだ来るだろうが・・・」
トリトンが何か思いついたようで悪だくみのある顔になる。
「じゃあ殺さないでおくからさ」
トリトンは手から針が現れ、ジャンヌの背中に投げ刺す。
ナニコレ。体がしびれて動けない。頭痛も吐き下もする。毒針か。
「何を!」
「大丈夫。死なない。けどまともに動けないからな」とトリトンはアマビエに言う。
「この・・・」
トリトンににらみつける。
「俺の部屋に二人とも運べ」とトリトンは手下に指示を出す。
「大丈夫ですか」
アマビエが言う。
「一応・・・ここは・・・」
青い床と壁。まるで水の中にいるような空間だった。
「ほう。思ったよりかわいげあるじゃないか」
男の声。
手には金色の三叉槍を持っている。
海のように輝く髪。金色の瞳。体の一部が鱗に覆われている。顔を整っている青年だった。
話に訊いたトリトンか。
よく見れば、周りには魚の魔族(アビス)か獣人がいた。触角を持った獣もいた。アマビエを襲った獣だろう。
「あんたが・・・」
「俺がイケてる男のトリトンだ」
やばい。ここにも同族がいる。誰かを思い出してしまう。
アマビエが怯えている。
「そんなに怖がるなよ。可愛がってあげるからよ。もう一人の女は・・・」
トリトンは顔を青ざめて、一歩引く。
「げ!聖女!」
トリトンの言葉に周辺の魚の獣人も怖気る。
もしかして聖女と戦ったことがある。だとしても今がチャンス。
ジャンヌはすぐさま飛び出す。ロザリオで三叉槍を払い、一発トリトンの顔に殴る。トリトンは倒れ、そのまま乗り、ロザリオでトリトンの首を添える。
「来たらこいつの首をはねる!」
周辺の魚の獣人に怒鳴る。
「つ・・・」
「ここから二人とも出しなさい!」
トリトンに脅す。
聖女で気づいただけで怖気ている。過去に戦って、恐怖を感じるほどに痛めつけている。
脅せば。
トリトンはにやつく。
「つまりおまえ一人じゃあ、ここから出られないってわけか!」
トリトンの顔が豹変した。勝ち取ったような顔に。
トリトンの周辺に円形の穴が広がり、トリトンと一緒に落ちる。水の中だった。塩っぽさもある。海の中だった。
トリトンに腹を蹴られる。先にトリトンが穴に戻り、穴が防がれる。
マズイ。息が続かない。泳げない。このままでは死ぬ。
トリトンが魔力で作った建物なら、『光』なら効く。
白い炎を足に集中していつも以上に噴射する。手を伸ばして白い炎を床に当てる。海の中だからより『光』を浪費させる。だか、今はその方法しかない。床に穴が空いた。
すぐに穴に入る。床にへばりつくように上がる。
急いで呼吸を整えようとしたが、頭を踏まれる。
「おまえ、水がだめなのか」
トリトンが見下ろす。
「しかも炎を使ったな。じゃあ水に弱いってわけか。聖女の中でも弱点あってよかったわ」
「決めつけないでくれる・・・」
ジャンヌも睨み返す。
「あんた・・・聖女とケンカ売ったんじゃないの。だからさっきびくついた・・・それで勝てると思って調子出したってとこね」
「だったら、俺を殺してみろよ。ここは海の中で、この空間も俺が作った。この意味分かるな」
トリトンがこの空間を作っている。トリトンを完全に殺せば、この空間が保てなくなり、ジャンヌは海の中に溺れてしまう。
「じゃあ、殺さないでやるから、おまえを顔の原型がないほどに殴ってやる」
「やってみろ」
トリトンが足を上げる。また床が塞がっていない。また海の中に落とすつもりだろう。さすがに連続で使いたくない。
「やめて!」
トリトンの足が止まった。
「あ?」とトリトンが振り向く。
アマビエが魚の獣人たちに捕まれていた。
「ジャンヌさんをここから出してください。大人しくしますから・・・」
「それだとまだ来るだろうが・・・」
トリトンが何か思いついたようで悪だくみのある顔になる。
「じゃあ殺さないでおくからさ」
トリトンは手から針が現れ、ジャンヌの背中に投げ刺す。
ナニコレ。体がしびれて動けない。頭痛も吐き下もする。毒針か。
「何を!」
「大丈夫。死なない。けどまともに動けないからな」とトリトンはアマビエに言う。
「この・・・」
トリトンににらみつける。
「俺の部屋に二人とも運べ」とトリトンは手下に指示を出す。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる