魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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海の仕置人①

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 あいつが現れないだけで、清々しいことはない。
 ジャンヌは森の中を歩いていた。
 前回のことがかなりショックだったようで、ここ2週間はアキセを見ていない。
 いい気分。もういっそのことこれっきりにしたい。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 急に女の声がして、何かが横に通った。
 なんだと後ろを振り向けば、触角がいくつも無数に伸びていく。
 思わずロザリオで振るい、触角を切る。びびったのか触角は森の奥へと下がっていく。
「は~なんなのよ」
 ジャンヌは頭を軽くかく。
「あの・・・」
 木陰から出で来たのは、少女だった。しかも普通ではない。
 水色と薄いピンクが混ざった髪。ピンクの瞳。腕がひれ。下半身は魚の尾。衣を来た小柄な少女。



 魚の獣人かと思ったが、地上でも浮いている。
 人の姿をしているから魔族(アビス)だろう。追われていたというのに、魔力で戦っていない。戦えるほどの力がないのか。
「聖女ですか・・・」
「そうだけど」
「ありがとうございます・・・」
 魚の獣人は軽く頭を下げる。
「どういたしまして。それじゃあ」
 去ろうとしたが。
「あ!すみません・・・」
「何?」と振り向く。
「申し訳ないんですけど、友達が会えるまでいいですか。すぐそこなので・・・」
 変なことに巻き込まれる前に去ろうとしたが、これ以上言っても引き留められそうだったので、「すぐならいいけど」と返す。
「ありがとうございます」
 少しの間だけ面倒を見ることになった。


「あなた。魔族(アビス)だよね。地上でも浮いているし。異形(デミ)化でできるわけじゃないし」
 異形化は身体能力を上げるだけ。魔族化は身体能力以上に魔力を得る。
「え~と。私・・・今、魔力が使えなくて・・・」と少し視線をそらして言う。
「そうなの」
 今魔力が使えない。だとしても浮いているのはどういうことだろうか。訳ありのようだ。
「じゃあ、あの触角なに?」
「ストーカーです」
「ストーカー・・・」
「この顔でモテてしまうのは分かっていますが・・・」
 今なんて。
「その・・・はっきり断っても、諦めてくれない方がいまして・・・特に触角を持っている方が・・・」と青ざめる。
「あ・・・」
「だから、友達の家で身を隠しているんです」
「そういうことなの。来る途中で・・・」
 あれ。あの触角どこから来たんだ。
「ねえ。どこから・・・」
「あ!着きました!」
 たどり着いた先を見る。
「え・・・」
 その先には大きい切り株の上に寝込んでいた男が腹を出して寝ていた。
 黒髪。筋肉質な体に赤い布を前掛けにし、顔を整った男。見たことがある。確かやまおくの魔女セツコ・ヤマンバの子供だった。
「友達って・・・」
「きんにい!」
「え?!」
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