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宣伝する方法②
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「なんであんたが・・・」
「いや~もっと早く知らせたかったんですけど~遅かったですね~」
陽気に言うチェシャ。
「知っているなら早く言ってよ。知ってたら別の街に行ってたわ!」
「そんな怒らないでよ~なんでこうなったか教えますぜ」
チェシャはにこっと笑う。
「訊きたくない!」
「実はっすね」
勝手に話が進む。
「この本が原因ですぜ」
チェシャは背中から本を差し出す。
『この恋だけは譲れない』と大きい文字と絵が書いてある表紙だった。以前にも見たことがある本。ルシアが持っていたマンガというものと似ている。それにしては文字は読める。さらに絵が二人の男が見つめ合っていた。その二人がアキセとレオンに似ている。
「その二人の男。誰かと似ているんですけど」
「あと読んでみてくださいよ」
恐る恐る本の中の数ページを覗く。
一気に鳥肌が立つ。
「これって・・・」
男同士で恋愛し、しかも性行為まで生々しく描いている。
「いや~刺激的でしょ。身内に見せられないほどに」
「読ませないでよ」
チェシャに返す。
「簡単に言いますと、そこのお二人さんがこの本の中身を実演しているんっすよ」
バーン!ドーン!
すぐに逃げようとしたが、またレオンとアキセに腰を掴まれて阻止される。
「お願いだから、解放して・・・」
「逃がさない!」
「見捨てないで!」
「巻き込ませないで。確実に面倒ごとになるでしょうが!」
分かり切っているから巻き込ませないで。
「まだ話は終わってませんぜ」
まだあるの。
「確かにこの本のモデルになったのは、お二人さんですけどね。だから、この町の皆さんもこの本の宣伝かと思って見ているんですよ」
「それで納得いくこの町の住民もどうなっているのよ」
あれ。男同士。アキセとレオンがモデル。
「ねえ。もしかして、これ書いたのって、『貴腐人の館』にいたんじゃあ・・・」
「そうっすよ。『貴腐人の館』のことよくご存知で」
ユビワから訊いた話では、男を館に連れて男の恋愛を楽しむ魔女がいるという。アキセとレオンとイーグスが被害にあった。
「そいつを潰そうとしてこのざまだ!」
だろうな。
「俺はリリスに落とされた」
多分分かり切って落としたんだろうな。
「こうなると思って止めに来たんすよ。今アイゲキさん。最終巻の執筆中ですし。集中させてあげたいし。事前にお知らせしようと思っていたんですけどね」
チェシャが魔女名っていうとなると相手はアリスの名を持つ魔女か。
「だから、この町に入る前に言えって。だとしたら、演じさせているのは、そのアイゲキがやってるってことでしょ」
「それは別ですぜ」
「え?」
チェシャの回答に思わず首をかしげる。
「こんなことできたら本を書かないっすって」
思わず目を丸くした。
――原作者本人ならどれだけ楽だったことか。
演じさせているのは、あいげきの魔女アリスではないようだ。
だとしたら、犯人の手かがりないのに、探すこともできない。ふと思った。
「思ったけど、あんたの魔力ならできないの」とアキセに訊く。
アキセは触れればなんでも奪える魔力を持っている。これまでも『光』もタタリも奪ってきた。
「分かっていたらとっくにやってる。原因が明確じゃないとできない・・・」
悔しがるように吐いた。
「あ~そういうことだったの」
やはりアキセの魔力には条件が付いていたようだ。
「今気づいたけど、単に町の外に出ればいいんじゃないの」
「「・・・」」
アキセとレオンが黙り込む。
さっそく町から出ようとした途端にアキセとレオンが吹き飛ばされた。まるで見えない壁に当たったようで、吹き飛んだあともそのまま本を演じ始めた。
「「もうやだ・・・」」
演じ終わったアキセとレオンは嘆く。
「まさか。結界が張っていたなんて・・・」
「不思議ですな~」
横でチェシャが言う。
「え~と、今は3巻目に入ってますね」
チェシャが本を開く。
「あ!そういえば」
「そういう解析いらない。もう原因が分からないからこれで」とジャンヌは去ろうとするも、「「だからほっとかないで!!」」とアキセとレオンがジャンヌの足にしがみつく。
「ごめん。レオン。今回は私でも無理」
はっきり返す。
「もう少し頑張ろう!」
「他にあるだろう。その原作者に会う選択あるだろうが!」
「だから言っているんじゃないすか。あいげきさんにはこんな力はないって」
「原因不明。探索不能。なのでこの町から出ます」
「「だから!!」」
「あああああああああああああああああああああああああああ」
急にアキセが頭を抱えながら叫ぶ。
「今度は何よ」と呆れながらアキセに言う。
「俺も知らん」
まだ足にしがみついているレオンが言う。
この症状は誰かと似ている。それに嫌な予感がする。早く逃げないとさらに厄介なことになるような。それにこの本、ルシアが持っていたマンガに似ているから。あ。
「ジャンヌだああああああああああああああああああああ」
別の声がし、何かが迫ってきたので、すぐに横に避ける。何かが地面にぶつかる。土埃が晴れる前に何かが飛び出し、足にしがみつく。
「助けて~」
くうそうの魔女ルシア・ファンタジアだった。
魔女が聖女にすがる。
「いや~もっと早く知らせたかったんですけど~遅かったですね~」
陽気に言うチェシャ。
「知っているなら早く言ってよ。知ってたら別の街に行ってたわ!」
「そんな怒らないでよ~なんでこうなったか教えますぜ」
チェシャはにこっと笑う。
「訊きたくない!」
「実はっすね」
勝手に話が進む。
「この本が原因ですぜ」
チェシャは背中から本を差し出す。
『この恋だけは譲れない』と大きい文字と絵が書いてある表紙だった。以前にも見たことがある本。ルシアが持っていたマンガというものと似ている。それにしては文字は読める。さらに絵が二人の男が見つめ合っていた。その二人がアキセとレオンに似ている。
「その二人の男。誰かと似ているんですけど」
「あと読んでみてくださいよ」
恐る恐る本の中の数ページを覗く。
一気に鳥肌が立つ。
「これって・・・」
男同士で恋愛し、しかも性行為まで生々しく描いている。
「いや~刺激的でしょ。身内に見せられないほどに」
「読ませないでよ」
チェシャに返す。
「簡単に言いますと、そこのお二人さんがこの本の中身を実演しているんっすよ」
バーン!ドーン!
すぐに逃げようとしたが、またレオンとアキセに腰を掴まれて阻止される。
「お願いだから、解放して・・・」
「逃がさない!」
「見捨てないで!」
「巻き込ませないで。確実に面倒ごとになるでしょうが!」
分かり切っているから巻き込ませないで。
「まだ話は終わってませんぜ」
まだあるの。
「確かにこの本のモデルになったのは、お二人さんですけどね。だから、この町の皆さんもこの本の宣伝かと思って見ているんですよ」
「それで納得いくこの町の住民もどうなっているのよ」
あれ。男同士。アキセとレオンがモデル。
「ねえ。もしかして、これ書いたのって、『貴腐人の館』にいたんじゃあ・・・」
「そうっすよ。『貴腐人の館』のことよくご存知で」
ユビワから訊いた話では、男を館に連れて男の恋愛を楽しむ魔女がいるという。アキセとレオンとイーグスが被害にあった。
「そいつを潰そうとしてこのざまだ!」
だろうな。
「俺はリリスに落とされた」
多分分かり切って落としたんだろうな。
「こうなると思って止めに来たんすよ。今アイゲキさん。最終巻の執筆中ですし。集中させてあげたいし。事前にお知らせしようと思っていたんですけどね」
チェシャが魔女名っていうとなると相手はアリスの名を持つ魔女か。
「だから、この町に入る前に言えって。だとしたら、演じさせているのは、そのアイゲキがやってるってことでしょ」
「それは別ですぜ」
「え?」
チェシャの回答に思わず首をかしげる。
「こんなことできたら本を書かないっすって」
思わず目を丸くした。
――原作者本人ならどれだけ楽だったことか。
演じさせているのは、あいげきの魔女アリスではないようだ。
だとしたら、犯人の手かがりないのに、探すこともできない。ふと思った。
「思ったけど、あんたの魔力ならできないの」とアキセに訊く。
アキセは触れればなんでも奪える魔力を持っている。これまでも『光』もタタリも奪ってきた。
「分かっていたらとっくにやってる。原因が明確じゃないとできない・・・」
悔しがるように吐いた。
「あ~そういうことだったの」
やはりアキセの魔力には条件が付いていたようだ。
「今気づいたけど、単に町の外に出ればいいんじゃないの」
「「・・・」」
アキセとレオンが黙り込む。
さっそく町から出ようとした途端にアキセとレオンが吹き飛ばされた。まるで見えない壁に当たったようで、吹き飛んだあともそのまま本を演じ始めた。
「「もうやだ・・・」」
演じ終わったアキセとレオンは嘆く。
「まさか。結界が張っていたなんて・・・」
「不思議ですな~」
横でチェシャが言う。
「え~と、今は3巻目に入ってますね」
チェシャが本を開く。
「あ!そういえば」
「そういう解析いらない。もう原因が分からないからこれで」とジャンヌは去ろうとするも、「「だからほっとかないで!!」」とアキセとレオンがジャンヌの足にしがみつく。
「ごめん。レオン。今回は私でも無理」
はっきり返す。
「もう少し頑張ろう!」
「他にあるだろう。その原作者に会う選択あるだろうが!」
「だから言っているんじゃないすか。あいげきさんにはこんな力はないって」
「原因不明。探索不能。なのでこの町から出ます」
「「だから!!」」
「あああああああああああああああああああああああああああ」
急にアキセが頭を抱えながら叫ぶ。
「今度は何よ」と呆れながらアキセに言う。
「俺も知らん」
まだ足にしがみついているレオンが言う。
この症状は誰かと似ている。それに嫌な予感がする。早く逃げないとさらに厄介なことになるような。それにこの本、ルシアが持っていたマンガに似ているから。あ。
「ジャンヌだああああああああああああああああああああ」
別の声がし、何かが迫ってきたので、すぐに横に避ける。何かが地面にぶつかる。土埃が晴れる前に何かが飛び出し、足にしがみつく。
「助けて~」
くうそうの魔女ルシア・ファンタジアだった。
魔女が聖女にすがる。
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