魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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靴足の魔女⑥

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 たどり着いた先は、依頼された町とは別の街だった。
 建物が上から踏まれたように崩れている。人々も踏まれ、潰れた死体があちこちにあった。叫び声。崩れていく音。もう襲撃されていた。
「ジャンヌは魔女と相手してろ。魔術師を探す!」
 アキセは別の方向に行く。
 魔術師の相手はアキセに任せる。
 ジャンヌは急いでカーレンを探す。
 カーレンはどこにいる。
 女の叫び声。まさかこの状況でも足を探しているのか。
 叫んだ方向に行く。
 そこは広場だった。
 あちこちに足がない少女が地べたに転がっている。苦しみながらいる者や息を絶えた者もいる。
「どうして!」
 怒鳴り声。
 赤い靴を履いた足だけがカーレンの周りに浮いている。その横でデッドは立っていた。
「どうしてどの足も履けないのよ!」
 赤い靴が消え、足がその場に落ちる。
「デッドが生き返ったんだから。あと足を探すだけなのに・・・」
 カーレンは頭を抱えながら嘆く。
 混乱している内に、ジャンヌは背後から一気に飛び込む。
 ロザリオをカーレンの首に向かって払う。
 その時、振り向いたカーレンが後ろに下がる。首に当たることなく、払うだけになってしまった。
――あと一歩だったのに。
 さらにロザリオを振り、白い炎の刃を無数に飛ばす。
 カーレンは腕を前にして防ぐ。
 白い炎の刃が体を刺す。さらにドレスの裾が切れた。切れた裾から足がなく、黒いモヤに覆われていた。
 カーレンは足がなく、浮いているだけだった。
「そんな目で私を見るなああああああああああああああああああ」
 カーレンは怒鳴る。



 魔術師を探せば、銀行にいた。
 魔女の騒ぎで人がいない。中に入り、奥に物音がする。金庫の方からだ。金庫から金貨や銀貨が流れ落ちている。それを拾っている男がいた。
 もう場所と男の行動を見て、目的が理解した。
 くだらなすぎる。
 銃を召喚し、男の顔をかすり、金貨と銀貨が弾く。
「おまえか死体を使って魔女をこの町に連れてきたのは?」
 魔術師が振り向く。年取った男だった。
「何のことだ・・・」
「とぼけるなよ。こんな騒ぎをしているのに、呑気に銀行強盗もおかしいだろうか」
「だったらどうする!」
 その発言だともう犯人ですと教えてるようなものだ。
「金目当てで魔女を利用するならもっと大きいことをしようぜ」
「おまえも魔術師か・・・」
 魔術師が銃を向ける。
 すぐに引き金を引く。弾は、魔術師の銃を弾く。
「もうおまえの証拠はとれた。あとはおまえを捕まえるだけだ」
 魔女退治した後も後処理がややこしくなるから、魔道具『録音玉』を使う。
 カースネロの中に術式を込めてある。気力と『呪い』に触れるだけで起動する。視界が取れる範囲での映像と録音ができる。
 顔の横に浮かせ、十分撮れたから指輪の中にしまう。
 証拠を残せば、多少は抑えられる。
「分け前あげますから、見逃してください・・・」
 もう戦えないと思えば、頭を下げて降参する。
 それでも見逃すつもりも取引も、銃をしまうつもりはない。
「まず、死体を操っている陣を出せ」
 魔術師から本を取り出した。
 銃を構えながら本を取る。
「あと一つ。もう一人の仲間いるだろ。どこにいる」
「何のことだ」
「いるんだろ。気配をまるっきり消しても『呪い』の量で分かるんだ。さっさと言え」
「知らない・・・」
 その時、本が爆発する。
「ち!」
 今度は腹に刺された衝撃。見れば細い針だった。ジャンヌが刺さった針と同じだった。
 体がしびれて、その場で膝をつく。
 魔術師が慌てて走りだす。
 また銃声。
 振り向けば、魔術師が倒れている。額に血が流れている。頭に貫通したところか。
「にゃ~」
 猫の鳴き声。出入口に黒い猫が座っていた。
 まさか。
 黒い猫はその場から走っていく。
 動こうにも体中にしびれて動けない。
 急いで魔力で薬を抜く。
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