魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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靴足の魔女⑤

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 デッドは起き上がっている。
 男の体が青白い。目に正気を感じない。服には胸から黒く染まっている。
 どういうこと。
「デッド・・・」
 カーレンは、死んだはずのデッドに涙を流した。
判断ができていないほどに冷静さも思考がない。生きていることにも疑われず、生き返ったことに嬉しがっている。
死んだデッドが動いているのは、アキセが魔術で操っているのか。だとしたら、隙ができた。
 攻撃しようとロザリオを振るうが、腹に何かが刺す。細い針だった。体が急にしびれていく。力が入れず、足に噴射していた白い炎が切れ、花畑に落ちる。
 体に白い炎に包まれ、落下の衝撃は抑えた。
 こんな時にアキセが邪魔するとは思えない。
 他に誰がいる。
「デッド・・・」
カーレンがデッドに寄り添う。
恋する乙女のように顔を赤らめる。
「もうちょっと待ってね。もうすぐ二人で歩けるよ。足をつけて歩けたら、結婚しようよ」
 少女から足を奪っていた理由は、そのためだったのか。足がないのか。カーレンは体を浮かしているのか。
「カーレンに頼みたいことがあるんだ」
 デッドは片言に口を開く。
「なあに?」
「バリコっていう町を襲ってほしんだ」
 デッドからまさかの発言がした。町を襲ってほしいと。
「分かった。じゃあ。行こ!」
 二人は消える。
 消えた。町を襲うつもりか。状況がかなりマズイ。
「ジャンヌ!」
 アキセが来た。
「まさか邪魔したんじゃないだろうな・・・」
 疑いの目つきをする。
「俺じゃないって」
 アキセは刺さった腹に手を当てる。少しずつ体が楽になっていく。魔力で薬を抜いている。
「エディは?」
「眠らせた。何をしてかすか分からないからな。あの遺体は魔術で動いている」
「あんたじゃないの」
「だから違うって。しかも気配も一切感じなかった。魔術で気配は消しても『呪い』の放出量で分かる。けどそれがない」
「他にもいるってこと・・・」
「考えられるのは二人・・・」
「二人も。あと。デッドに何か気づかなかった」
「ジャンヌもか。でも今は」
「分かってる」
 アキセが珍しく気を遣っている。気持ち悪いけど。
「行くぞ」とアキセが言った途端に景色が変わる。
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