魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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靴足の魔女①

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 ジャンヌは森の中で見つけた。
 足がない少女の死体だった。体には傷がなく、足は綺麗に切断されたようで、肉面が崩れずにいる。臭みがまだない。最近死んだというところだろう。
「おまえか!」
 声をした方へ向けば、複数の男たちがいた。農具や銃を構えている。
「おまえが魔女か」
 魔女と間違えるのも嫌。
「何よ。急に。私は通りかかっただけよ」
「嘘つくな!」
 これ以上言っても信じてくれないようだ。
 ジャンヌは手の中に光の結晶を生み出す。
「これで分かった。聖女よ」
 仕方なく聖女の正体を明かした。
 一人の男が、緊張が解けたように膝をつき、頭を下げる。
「で、あれば助けてください!」
 急にすがりついた。



 この町は夜に事件が起きる。
少女は赤い靴に魅了され、履いた途端にどこかに消えていくという。見つかった時には足がなくなった死体となっていた。
 赤い靴は夜、突然少女の前に現れるようだから、調査するにしてもどこに出るか分からない。
――どう考えても魔女案件だわ。
「もうどうにもならないんです。次々に行方不明になり、魔女も見つからない。このままでは・・・」
 町長は頭を下げ、手が震えている。本当に困っている。さすがに無視できない。
「分かりました」
「ありがとうございます」
 やっと助かるというように声に込めながら町長は言う。
 まずは情報収集。魔女の居場所は分かっていない。探るには。
「被害者は何人いますか」
「分かっているだけで12人。皆足がない状態で見つかりました」
「地図とかあります?見つかった場所を書いてくれます?」
「そんな地味地味な作業をするつもりか」
 別の男の声をしたと思えば、横にアキセが座っていた。
 またいつの間に。
「死体の見つかった周囲から探すつもりか。気が遠くなるぜ」
「どこから・・・」
 本当にひょこっと現れるからいらつく。
「あなたは聖女様の知り合いですか?」
「魔術師兼彼氏です」
「違うから」とすぐに否定する。
「俺ならすぐに見つけるぜ。まあ場合によっては事件が起きてからになりますけど・・・そうなったら彼女と一緒に解決しますから」
 アキセの首筋にロザリオを向ける。
「退治できるのであれば協力します。よろしくお願いします」
「お気遣いどうも。でも二人で十分なので」
 意地でも二人にさせたいようだ。


「で。なんであんたがいるのよ」
 ジャンヌはアキセに言う。
 事件は夜に起きるというので、小道で待機していた。
「いいじゃねえか。久しぶりに二人で行動したって。たまには手伝って好感度を上げないと」
「やったとしても評価を一切上げることはない。それにおまえといると何か企んでいるそうで嫌なんだ」
「最近そこまでやっていない。で、作戦通り事件が起きてからにするか」
「本当に見つかるの」
「事件が発生したらすぐに転送できるようにしてある」
「できれば起きる前に見つけたいものだけど」
「だったら僕が知っています」
 別の男の声。
 視線を向けば、青年が立っていた。
「僕が魔女の居場所を知っています」
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