魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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トランクケースを持つ女⑦

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 アキセは檻に閉じ込めていた。
 しかも道具も服まで全部。指輪まで。さらに体中に縄で縛られ、逆さにつるされている。
 頭に血が昇って気持ち悪くなるが、このくらいの拘束ではアキセはへこたれない。余裕で逃げられる。
 まさか、『絶対破れない契約書』は、指紋さえあれば、契約できる仕組みだったとは。油断した。
 ここに閉じ込めたこと。勝手に契約したこと。ジャンヌの主導権を奪ったこと。スティーブに後悔させてやると決意する。
さっそく脱出しようとした時だった。
 コンコン。
 何かが叩く音。
 音した方へ向けば、檻の格子の向こうにはトランクケースが浮いている。
 とても見たことがある。
 あれは。
 トランクケースから何か吐き出し、格子の間を通して落とす。
 赤い結晶をつけ、文字を刻んだ球体が赤く光る。爆弾だった。


「なんだ?」
 スティーブの左腕には、カースネロをはめ込み、文字を刻んだ腕輪が光る。
 ジョニーの手が止める。
「おや。コンタクトリングが光ってますな」
「こんな時になんだ」とスティーブは腕輪に手をかざした瞬間だった。
スティーブの両腕に刃が刺す。
「う!」
正確には、刃が両腕にある腕輪に刺さっている。『なんでも指示できる腕輪』も。
 つまり効果はなくなり、これで自由の身になった。
 早速ジョニーの顔に回し蹴りをする。そのまま倒れ、気を失う。触ろうとした罰だ。
すぐにスティーブにロザリオを向ける。視界に白いフリルの傘の石突きに細い針が見える。
「ご無事で何より」と笑顔で暗殺者は言う。
 やっぱり。
「どこから入ってきたのよ」
 窓一つもないのに。
「秘密です」
「まあいい。助けてくれるのね」
「被害者なようで」
「あの腕輪のことを聞いていたの」
「ええ」
 どこで訊いたのやら。
「譲ってくれます?」と尋ねられる。
「私も切らないと気が収まらない」
「そうですね。まだ生きてもらわないといけないので、足を刺すくらいなら」
 その発言にスティーブは顔を青ざめる。
「おい!」
「大丈夫です。死なない程度にしますので」
 暗殺者は軽くスティーブに圧をかける。
「じゃあ、右足」
「私は左足で」
「「せーの」」とロザリオと傘を引き上げる。
「やめ!」とスティーブが叫んだ時だった。
 視線を感じる。
 ロザリオで横に払う。何かにぶつかり、壁に刃が刺さった。
 その先には飾っていた鎧が手を伸ばしていた。おそらく鎧からの攻撃。
 次々に飾っていた鎧が動く。鎧に文字が浮かんでいる。魔術で操っているところか。
「鎧と相手していろ」
 スティーブは部屋から逃げる。
「コスト削減してますね」
 暗殺者は呆れて言う。
「金持ちってケチるからな。金あるくせに」
「ではよろしくお願いします」
 暗殺者も部屋を出で、スティーブを追いかける。
「あ!ちょっと!」
 ジャンヌは迫ってくる鎧にロザリオを構える。
「押し付けやがって」
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