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トランクケースを持つ女⑥
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ジャンヌも同席されることに。しかもスティーブがいやらしく肩を触る。
「その女性は?」
ジョニーと目が合う。
「聖女ですよ。俺の警護をしてもらっているんですよ」
「この女性か」
驚いた様子でジョニーは物珍しそうに見る。
「また口説き落としたんですか」
「ええ」
こいつ。
「あなたの趣味だけでよくもあんなに商品が集められますね」
「全部ではないですよ」
二人の会話にドン引きする。
何。女を口説かせて連れてきているのか。しかも趣味で。スティーブは本当に最悪な男だ。
「だから珍しく馬車が来たと思えば、聖女をお連れだったからですか」
「聖女は魔術まで浄化してしまいますからね。転送術式が使えない。その辺は不便ですよ」
そうか。この場所に来るためにも魔術で移動していたのか。
「では、本題に入りますか」
スティーブとジョニーは真面目な顔になった。
「人身売買しておりますね」
「はい」
スティーブははっきり返す。
「出産した子供をこちらに売ってもらいませんかね」
ジョニーの発言に耳を疑った。
「何に使う予定で?」
「魔術の実験にですよ」
「魔術師と取引しているんですか。個人。それともどこかの研究所ですか」
「それは言えません。名前を出さない条件になっているんですよ。でも、金はたんまりあります。もしこちらで不都合があってもあなたの名前も出さないし、迷惑をかけません」
ますます怪しいんだか。
「魔術師は結果を出さなければ資金を得られないはずですが」
「かなり結果を出している様ですよ」
「そうですか。であればこちらも条件を出します」
スティーブが条件を出した。
「取引する相手の名前を教えてください」
「それは・・・」
「もちろん口外しません。その代わりに使えなくなった商品を安くしてお渡しします。悪くないと思いますが」
使えなくなった商品。風俗として働けない女たちのことだろう。
「その商品の後処理の手間をこちらに回しているのでは」
「だとしても安く多く出すと言っているんですよ。実験に使うには大量にいると思いますし、取引相手も悪くないと思いますか」
ジョニーは少し悩んだ様子だったが、「分かりました」と返す。
「では取引成立ということで」
スティーブが手を差し伸ばし、ジョニーも手を伸ばして握る。
もう腹が立つ。
スティーブの趣味で女を口説いて、女を連れ込むことも。商品にさせ、使えなくなったら他に売り、処分する。
許せない。女としても。彼らの行いも。
「急いで契約書を作りますので、その間聖女様と相手しても構いませんよ」
「はあ?」
「よろしいので」
「触るまででしたらいいですよ」
今までの我慢が切れた。
「この!」
ジャンヌが殴ろうとしたが、「伏せろ」と言われた瞬間に床につかれる。
だめだ。『なんでも指示できる腕輪』で主導権が握られて、反抗できない。
「しつけもしているんですね」
「はい。やりがいはあります」
スティーブは口の端を上げる。
絶対にやり返す。
「聖女。相手してもらいなさい」
体が勝手に動く。
ジョニーに前に立つ。
「近く見れば、顔といい、体といい、胸も・・・」
ジョニーがいやらしく見つめ、手つきも気持ち悪い。
「では、さっそく」
ジョニーが胸に手を伸ばした時だった。
「その女性は?」
ジョニーと目が合う。
「聖女ですよ。俺の警護をしてもらっているんですよ」
「この女性か」
驚いた様子でジョニーは物珍しそうに見る。
「また口説き落としたんですか」
「ええ」
こいつ。
「あなたの趣味だけでよくもあんなに商品が集められますね」
「全部ではないですよ」
二人の会話にドン引きする。
何。女を口説かせて連れてきているのか。しかも趣味で。スティーブは本当に最悪な男だ。
「だから珍しく馬車が来たと思えば、聖女をお連れだったからですか」
「聖女は魔術まで浄化してしまいますからね。転送術式が使えない。その辺は不便ですよ」
そうか。この場所に来るためにも魔術で移動していたのか。
「では、本題に入りますか」
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「人身売買しておりますね」
「はい」
スティーブははっきり返す。
「出産した子供をこちらに売ってもらいませんかね」
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「何に使う予定で?」
「魔術の実験にですよ」
「魔術師と取引しているんですか。個人。それともどこかの研究所ですか」
「それは言えません。名前を出さない条件になっているんですよ。でも、金はたんまりあります。もしこちらで不都合があってもあなたの名前も出さないし、迷惑をかけません」
ますます怪しいんだか。
「魔術師は結果を出さなければ資金を得られないはずですが」
「かなり結果を出している様ですよ」
「そうですか。であればこちらも条件を出します」
スティーブが条件を出した。
「取引する相手の名前を教えてください」
「それは・・・」
「もちろん口外しません。その代わりに使えなくなった商品を安くしてお渡しします。悪くないと思いますが」
使えなくなった商品。風俗として働けない女たちのことだろう。
「その商品の後処理の手間をこちらに回しているのでは」
「だとしても安く多く出すと言っているんですよ。実験に使うには大量にいると思いますし、取引相手も悪くないと思いますか」
ジョニーは少し悩んだ様子だったが、「分かりました」と返す。
「では取引成立ということで」
スティーブが手を差し伸ばし、ジョニーも手を伸ばして握る。
もう腹が立つ。
スティーブの趣味で女を口説いて、女を連れ込むことも。商品にさせ、使えなくなったら他に売り、処分する。
許せない。女としても。彼らの行いも。
「急いで契約書を作りますので、その間聖女様と相手しても構いませんよ」
「はあ?」
「よろしいので」
「触るまででしたらいいですよ」
今までの我慢が切れた。
「この!」
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だめだ。『なんでも指示できる腕輪』で主導権が握られて、反抗できない。
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「はい。やりがいはあります」
スティーブは口の端を上げる。
絶対にやり返す。
「聖女。相手してもらいなさい」
体が勝手に動く。
ジョニーに前に立つ。
「近く見れば、顔といい、体といい、胸も・・・」
ジョニーがいやらしく見つめ、手つきも気持ち悪い。
「では、さっそく」
ジョニーが胸に手を伸ばした時だった。
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