魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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トランクケースを持つ女④

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 早くこの場から逃げようとするが、アキセに阻止される。アキセに主導権を握られても知らない。それが一夜明けるまで続いた。
「やめる!」
「まあまあ」
 中庭でアキセに抑えられる。
「魔女じゃねーし。人だし。聖女の仕事じゃねーし」
「いい加減に観念しろよ」
「魔女に仕立てて殺そうとするのが大嫌いなの!」
「分け前あげるからさ」
「金で買える女と思わないで!」
 イライラが止まらない。
「一応俺に主導権を握られてるの。忘れてない」
「もう関係なしで帰る!」
 スタスタと逃げる。
「だから逃げるなって」と言われた途端に体が動けなくなった。
「もうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。解放したら殺す。殺す。殺す!」
にらみつけながら、アキセに怒鳴る。
「そんな目をするなって。そういえば。襲ってきた女のことまだ話聞いてないんだけど・・・」
「そこにいたのか」
 アキセの言葉を遮断したのは、スティーブだった。
「聖女は引き留めたのか」
「まあな」
「ぐ。あんたが言っていた魔女って、昨日の女でいいのか」
「確かに違うな」
「本当のことを言いなさい!もう仕事しないから!」
「分かった。場所を変えよう」


 別の書斎に話すことになった。
 長椅子に互いに座った。
「さっさと話して」
「その前にだ」
 軽く話をそらされたような気がする。
「魔術師」
「あ?」
「おまえ。さっきから何を探しているんだ」
「絶対破れない契約書」
 言ってしまったような顔をしたアキセは自身の手で口を塞ぐ。
「やっぱりそうか」
 どういうことよ。
「俺の部屋の金庫が荒らされた後があった。あ~魔術使ったのになんで分かるんだという顔もしてるな」
 確かにアキセの顔は見抜いたように驚いた顔をしている。
「探しても無駄だ。俺が思わなければ、契約書は出ないことになっている」
 手元に何もないところから本が出現する。
「なんで・・・」
「なんで知っているのかは知らないが、もうおまえと契約済みだ。おまえに権利はない」
 魔術を使った様子がない。道具の名前からして考えられるとしたら、コルンの発明品。
「それ、なんなのよ」
「昔、ちっちゃい魔女からもらった代物だ。書いた契約書に名前を書けば、その契約書に従い、逆らえることはできない」
 絶対にコルン。本当に何をやっているんだ。
「ちなみにここに載っている契約者の様子も見れるんだ。つまり。昨日金庫で荒らした様子も見れたということだ」
「あんた。名前書いたの!」
「そんなわけないだろ!」
 抜けているとこはあるが、そこまで知能が低くないはず。
「これ。拇印もできるようだ」
 スティーブは本を開き、指で押したような跡がある契約書を見せる。
「はあ?」
「最近覚えてな。先に拇印押せば、自由で書きやすい」
「そんなのありかよ・・・」と珍しく落ち込むアキセに対して、「ふ」とジャンヌは軽く笑う。
「いつした!」
「おまえの指紋をとった」
「指紋・・・」
「この本。読み取れる機能があってな。おまえが触った後に指紋を読み取ってくれた」
 コルンの発明品のなんでもよさが時に恐ろしく感じる。
 てか、もう詐欺レベルでできるというか。
「さて。聖女にはどうやって主導権を握っているんだ?」
「これです!」
 アキセがすかさず腕時計のようなものを差し出す。
「こんなものが」
 単に袖で隠していた。
「説明しろ」
「はい。『なんでも指示できる腕輪』と言いまして、体の一部を腕輪に取り込めただけで主導権を握れます」
 思い通りになり、アキセはそのまま床に伏せて落ち込んでいる。
「これで聖女は俺のものか」
 ちょっと言い方。
「あ~話だったか」
「そうだな。魔女が来なくてもあの暗殺者がくる。だとしても魔女はどこにでもいるからな。それまでいてもらう」
 やはり魔女を理由に聖女を手に入れたかっただけか。
「いや~いい警護が見つかった」
 スティーブは勝ち誇ったような顔をした。
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