魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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トランクケースを持つ女②

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「おまえ!また勝手に!」
 ジャンヌは勝手に取引したアキセに怒鳴っていた。
「いや!魔女に困ってるっていうから。賞金も悪くないし」
「おまえがいる時点でもう関わりたくない!」
「というわけだ。頼みますよ」
 依頼主のスティーブがいた。
 この町でかなりの金持ち。彼は魔女に狙われているから警護してほしいというが。
「本当に魔女?金持ちでしょ。あんたに恨みを持った者が暗殺を寄こしたとかじゃないでしょうね」
「あれは確実に魔女だ」
「じゃあ。詳しく話せ」
「名前はナオしか分からない」
「名前だけ?」
「人間に変装していたからな」
「もう帰る!」
 ありえなくはないけど、踊らされるのがいや。
「まあまあ」
「俺は仕事があるから、聖女をなんとかしろ」
 スティーブは部屋から出る。
 勝手に取引したことになっている。
 ジャンヌはすかさず窓に飛び出ようとするが。
「だから、待てって!」
 急に体が止まった。
 もうこの感覚は知っている。身に染みているから困る。アキセがコルンの発明品で拘束したということ。
「また私を!」
「ひ、頼みやすいから」
「いつした!解放しろ!」
 アキセの体を見ても特に変わったものがない。普段見ないアクセサリーもない。
「今回はな。体の一部を入れるだけで登録できるんだよ」
「おい。体の一部って私の何を使った!」
「大丈夫。この依頼が終わるまでだからさ」
「話をそらすな!」
 ふと思った。
「ちょっと待って。コルン。最近なんでこう拘束するようなものばっかり多いの」
「俺に使うんだろ。まあその前に俺がぬす、借りるけどな」
「今。盗むって認めたな」
「ん?」
 アキセが辺りを見回す。
「何よ・・・」
「なんでもない。それよりもさ。協力しようぜ」
「はあああ」と重い溜息しながら睨み返す。



 夜。
 真面目に仕事する気がないので、適当に書斎にスティーブといるだけにした。
「本当に仕事する気あるのか」
 机にいるスティーブは言う。
「しているじゃないの」
 長椅子で横になっていた。
 もうやけくそ。
「は~まあいい。あの男はどうした」
「その内帰ってくるでしょ」
「仕掛けてくる」とか言ってアキセは途中でいなくなった
話している内に逃げようと思ったのに、スティーブから離れるなと言われた。すぐに離れようとした途端に、何かに引っ張られ、その反動で壁に当たった。やはりあの命令一言でコルンの発明品が発動している。
もう逃げられない。何もできない。だからもうやる気がない。
 スティーブが目の前に立つ。
「何よ」
 スティーブの目が怪しい。これは。
その時、窓が割れた。
 確認するよりも早く、長椅子が勢いよく倒れる。そのまま書斎の外まで飛ばされそうになるも何かに引っ張られ、書斎の中に入る。そのまま壁に頭から激突する。
「イッタ~」
 頭を抱える。
 またコルンの発明品が発動した。もういや。
「あら」
 女の声。声をした方へ向く。
白いワンピースドレスを着た女。国に入るまでに見たあの時の女だった。しかもスティーブに向けている白いフリルの傘の石突きに細い針が伸びている。仕掛け傘のようだ。
「あなたでしたか」
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