500 / 642
花桜の魔女⑧
しおりを挟む
イーグスは赤い剣で枝を切る。刺した枝を引き抜く。
息が上がり、腹を抱えながら膝をつく。血が止まっている。魔力で血を固めたところか。だか、あの出血量だから、まともに動けないはず。
攻撃が来ない。サクヤの方を向く。
サクヤの顔が豹変している。目を見開いで、青ざめている。
なぜそんな顔をする。けど、今がチャンス。
ロザリオを振り、白い炎の波を放つ。サクヤの目の前に桜の狼が飛び出し、白い炎に包まれる。
その時、人が通れるほどの光の穴が広がる。チェシャが作った穴だろう。
イーグスに突進され、そのまま光の穴へと入る。
気づけば、森の中にいる。どうやら魔女の空間から脱出できた。
すぐ横でイーグスが倒れている。
息がまだある。腹から血が止まっているようだ。
イーグスがケガをしたのは、ジャンヌが背後から来る攻撃を代わりに受けた。けど、身代わりになったのは、食材がなくなり困るからに決まっている。
「生きてるの」
「そこは心配かけるところでは・・・」
イーグスは苦しそうにも言う。
「あなたを抱きしめたから魔力が浄化されてまた出血してしまいましたよ。でもご心配なく、あなたが離れて魔力が取り戻したので止血できました」
「じゃあ。傍にいると出血するということなので、私はこれで」
「そういうことではなく、助けてあげたからお返しくださいよ」
「どうせ、食材がなくなるからでしょ。他にも聖女いるのに」
「聖女はあなただけですよ」
「気色悪いことを言わないで」
その時、桜の花びらが散る。
まさかとその先を見れば、はなざくらの魔女ハルカゼ・サクヤが立っていた。
追いかけてきたのかとロザリオを構える。
だか、サクヤの顔から殺意を感じられない。申し訳なさそうな顔をしている。
「ごめんなさい」
思い寄らない発言で唖然してしまった。
かなりの衝撃だった。魔女が誠意を込めて謝ることに。
今までの魔女は、自己中で狂気があり、謝っても悪意を込めている。だか、その彼女は例外しすぎて唖然してしまった。
サクヤの周辺から桜が散り、イーグスの腹に集まる。桜がなくなった時には、腹の傷口が治っていた。
「傷口は消えましたが、出血はしておりますから、血は少なくなっています。食事をとって安静はしてください」
しかも相手のことを心配している。
サクヤは、桜の花びらとなって散った。
死んではいない。魔女の空間に戻ったのだろう。
それにしても素直に謝る魔女に拍子抜けになる。
「いや~久しぶりに見たっすね」
チェシャが突然現れ、驚いてしまう。
「あんなに素直に謝る魔女さんって。アリスでもたま~にいますけどね」
のんきに言う。
イーグスが急に動き出す。
「おっと」とチェシャがイーグスを触れば、イーグスは消えた。
「しゅらさんの元に送りましたぜ。今ごろブランシェとマイルズと一緒に説教しているところですぜい」
先に帰したブランシェとマイルズは、もうアリスの元にいるようだ。
「あとアキセさんだっけ。面倒になりそうだったので、どこか遠くに飛ばしておきやした」
「その気遣いはありがとう。あと、アキセを先に出た後。すぐに来なかったわね」
「いや~あの後、空間に鍵をかけられまして~しゅらさんの力を借りて、鍵を開けたんですよ」
「あんた。よく空間に穴開けるけど、そこまで万能じゃないのね」
「長生きしてますから、それなりには持ってますけど、さすがに魔女と同等には持ってないっすよ」
「そうなのね」
「そろそろ帰りますぜ。様子見たいので。では」
チェシャが尾を体に覆うとそのまま消えていった。
あれとジャンヌは気づく。
――あの魔女。謝ったのってイーグスだけじゃない。どこが素直で謝る魔女だ。
チェシャに無理やり連れ出され、治療されながらもアリスに説教される。このままだと完治してもまた雑用される。イーグスはすぐに逃げ出した。
木に背中を預け、安堵のため息を吐く。
「お元気になって何よりです」
耳元でサクヤの声がしたと思えば、目の前に一枚の桜が散っていた。
息が上がり、腹を抱えながら膝をつく。血が止まっている。魔力で血を固めたところか。だか、あの出血量だから、まともに動けないはず。
攻撃が来ない。サクヤの方を向く。
サクヤの顔が豹変している。目を見開いで、青ざめている。
なぜそんな顔をする。けど、今がチャンス。
ロザリオを振り、白い炎の波を放つ。サクヤの目の前に桜の狼が飛び出し、白い炎に包まれる。
その時、人が通れるほどの光の穴が広がる。チェシャが作った穴だろう。
イーグスに突進され、そのまま光の穴へと入る。
気づけば、森の中にいる。どうやら魔女の空間から脱出できた。
すぐ横でイーグスが倒れている。
息がまだある。腹から血が止まっているようだ。
イーグスがケガをしたのは、ジャンヌが背後から来る攻撃を代わりに受けた。けど、身代わりになったのは、食材がなくなり困るからに決まっている。
「生きてるの」
「そこは心配かけるところでは・・・」
イーグスは苦しそうにも言う。
「あなたを抱きしめたから魔力が浄化されてまた出血してしまいましたよ。でもご心配なく、あなたが離れて魔力が取り戻したので止血できました」
「じゃあ。傍にいると出血するということなので、私はこれで」
「そういうことではなく、助けてあげたからお返しくださいよ」
「どうせ、食材がなくなるからでしょ。他にも聖女いるのに」
「聖女はあなただけですよ」
「気色悪いことを言わないで」
その時、桜の花びらが散る。
まさかとその先を見れば、はなざくらの魔女ハルカゼ・サクヤが立っていた。
追いかけてきたのかとロザリオを構える。
だか、サクヤの顔から殺意を感じられない。申し訳なさそうな顔をしている。
「ごめんなさい」
思い寄らない発言で唖然してしまった。
かなりの衝撃だった。魔女が誠意を込めて謝ることに。
今までの魔女は、自己中で狂気があり、謝っても悪意を込めている。だか、その彼女は例外しすぎて唖然してしまった。
サクヤの周辺から桜が散り、イーグスの腹に集まる。桜がなくなった時には、腹の傷口が治っていた。
「傷口は消えましたが、出血はしておりますから、血は少なくなっています。食事をとって安静はしてください」
しかも相手のことを心配している。
サクヤは、桜の花びらとなって散った。
死んではいない。魔女の空間に戻ったのだろう。
それにしても素直に謝る魔女に拍子抜けになる。
「いや~久しぶりに見たっすね」
チェシャが突然現れ、驚いてしまう。
「あんなに素直に謝る魔女さんって。アリスでもたま~にいますけどね」
のんきに言う。
イーグスが急に動き出す。
「おっと」とチェシャがイーグスを触れば、イーグスは消えた。
「しゅらさんの元に送りましたぜ。今ごろブランシェとマイルズと一緒に説教しているところですぜい」
先に帰したブランシェとマイルズは、もうアリスの元にいるようだ。
「あとアキセさんだっけ。面倒になりそうだったので、どこか遠くに飛ばしておきやした」
「その気遣いはありがとう。あと、アキセを先に出た後。すぐに来なかったわね」
「いや~あの後、空間に鍵をかけられまして~しゅらさんの力を借りて、鍵を開けたんですよ」
「あんた。よく空間に穴開けるけど、そこまで万能じゃないのね」
「長生きしてますから、それなりには持ってますけど、さすがに魔女と同等には持ってないっすよ」
「そうなのね」
「そろそろ帰りますぜ。様子見たいので。では」
チェシャが尾を体に覆うとそのまま消えていった。
あれとジャンヌは気づく。
――あの魔女。謝ったのってイーグスだけじゃない。どこが素直で謝る魔女だ。
チェシャに無理やり連れ出され、治療されながらもアリスに説教される。このままだと完治してもまた雑用される。イーグスはすぐに逃げ出した。
木に背中を預け、安堵のため息を吐く。
「お元気になって何よりです」
耳元でサクヤの声がしたと思えば、目の前に一枚の桜が散っていた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
Heroic〜龍の力を宿す者〜
Ruto
ファンタジー
少年は絶望と言う名の闇の中で希望と言う名の光を見た
光に魅せられた少年は手を伸ばす
大切な人を守るため、己が信念を貫くため、彼は力を手に入れる
友と競い、敵と戦い、遠い目標を目指し歩く
果たしてその進む道は
王道か、覇道か、修羅道か
その身に宿した龍の力と圧倒的な才は、彼に何を成させるのか
ここに綴られるは、とある英雄の軌跡
<旧タイトル:冒険者に助けられた少年は、やがて英雄になる>
<この作品は「小説家になろう」にも掲載しています>
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる