魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

黒い馬⑥

　ユビワは逃げていた。
　蔓が大群の蛇のように追いかける。
　最初に襲撃された時に偽装人形が壊れた。魔術が解かれた瞬間に自由になったが、蔓が襲ってくる。
　ユビワは避けて走り出す。
　すぐに魔術で転送して逃げようとしたが、足元からツルが伸び、足から体へと絡める。そのまま引っ張られ、抱き着かれる。
「逃げないでよ」
　女の声。顔を上げる。
　ウェーブの入ったツタの髪。緑色の瞳。緑色のドレスを着た女。
　間違いなくこの女は魔女。もしかして子供を攫おうとしたのもこの魔女だろうか。
「かわいい子ね。おいしそう。これで肌が・・・」
　魔女の表情が変わった。
「あなた、何人間？」
　魔女の表情が変わった。
「気持ち悪い」
　首を絞められる。息が苦しい。
「死んで」
　その時、小さな光が無数に飛んでくる。
　魔女が咄嗟に後ろへ跳ねる。目の前に黒い馬が飛び出す。
「またおまえが！」
　魔女はにらみつける。
　黒い馬が翼を広げた瞬間だった。
　目の前に飛んできた矢が地面を刺す。
「見つけたぞ！」
　村人たちが農具や武器を持ってきた。
「助けてください！今襲われているんです！」
　この魔女。
　人に変装している。村人に黒い馬を襲わせるつもりだ。
　黒い馬は攻撃しようとしない。
　村人が黒い馬に襲い掛けた時だった。
　光線が黒い馬と村人の間を割るように伸びる。スピカに乗ったアタランテが飛び出す。
「あなたね！」
　アタランテが怒鳴る。
「聖女・・・」
　その時魔女の顔にジャンヌの蹴りが入る。
「いますぐ離せ！しおれシワババあ！」
　やはり聖女は魔女になると目の色が変わる。