魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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戦いを求めた末路④

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――なんで、リリスが来るのよ。
 目の前によきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーが立っている。
「ジャンヌ!」
 イルが駆け付ける。
「どうして・・・」
「あの女に連れてこられた・・・」
「リリスが・・・」
 どういうことよ。ただ助けに来たとは思えない。
「逃げるぞ」
 イルに抱えて走り出すが、黒い羽に囲まれる。
「せっかくだから、見ていきなさいよ」
 リリスがわざわざイルを連れてきて見逃すつもりがない。
「まさか。あんたが天気を・・・」
 リリスが顔を上げて、口橋を上げる。
 やっぱりこの女は。
 雲一つのなかった快晴な空に厚く曇った。リリスの力ははっきり分かっていないが、リリスなら天気を操ることなどできなくはない。
「リリスだ!」とボルガは目つきが変え、吠えるように声を上げる。
「一番戦いたかったよ!」
 興奮したボルガが飛び出す。
 拳を込めて、リリスに殴りかかる。
 リリスは指一本立て、ボルガの拳を止める。たった一本の指で止めた。風圧すら起きなかった。
 ボルガの腕がグルグルとまかれる。
 ボルガは背後に距離を取りながら自分で腕をちぎる。ちぎった腕を投げる。リリスの目の前でちぎれた腕が爆発する。
 ボルガの千切れた肩から炎に包まれながら、腕が生える。すぐにボルガの足元から光り、赤い羽と炎に包まれる。赤い羽と炎からボルガが飛び出し、地面にひっかきながら勢いを止める。
「なんで・・・ロゼッタの力を使っているんだ!」
 ボルガはしかめた顔で怒鳴る。
 煙から晴れたリリスは傷もなく見下ろしている。
 リリスがロゼッタの力を使った。他の魔女の力も使えるのか。
「けど違う・・・」
「だとしたらロゼッタが手加減していたってことね」
 リリスは髪をなびく。
「じゃあ。ロゼッタの力を使ってあげようか」
「それはロゼッタの力だ!おまえが使うな!」
 顔をしかめるボルガが急に動かなくなる。
「な・・・」
 ボルガの手が自身の顔に食い込むほどひっかく。
「ああ!」
 ボルガが叫ぶ。
 今度は喉に腕が刺しこむ。
「あ・・・」
 あの腕はボルガの意思ではない。
 リリスが操っている。それに頭と腕が再生したのに、ボルガの顔と体が再生しない。それもリリスの力なのか。
 ボルガは喉に刺した腕を引っ張る。
「ぐ!」
 腕に炎をため込み、撃ち出すもリリスの目の前で炎は消える。
 それでもボルガが拳を込め、飛び出そうとするが、急にボルガが豹変する。地べたにつき、苦しむ。
 体を抑えている。体内から攻撃しているのか。体内からムカデが無数に飛びだす。
「う!」
 喉に負傷しているから声を上げられない。
 顔のひっかき傷から、喉から次々とムカデが無数現れる。ボルガが必死に体内から出るムカデを払った時、ボルガの腹にいつの間にか赤い羽が刺さる。 
「ほら、あなたの大好きなロゼッタの羽よ」
 赤い羽から大爆発が起こる。



 リリスは体を伸ばす。
「こんなもんか」
 ボルガが倒れている。
 傷つけることもできなかったボルガがリリス相手では触れることもできなかった。
 引っ掻いた顔。体中に蝕んだ跡。ところどころに火傷の跡。それでもまだ息がある。
「せっかくだし、止めを刺したいなら譲ってもいいけど」
 リリスに声をかけられる。
 答えるつもりがない。
「いい機会なのに。まあいいけど」
 リリスがボルガに近づく。
 ボルガは睨み返す。
「ん~どうしようか。殺すだけじゃあつまらないし」
 リリスが考え込む。
「そうだ。小さくなれ。小さくなれ」
 リリスが指を円に描くように動かしながら言う。
 ボルガの体が小さくなっていく。
「や・・・め・・・」
 それでも体は小さくなっていく。
「あら。勇ましい大猫もこんな可愛くなるのね」
 ボルガは幼くなり、体は再生している。
 リリスはボルガの頭を踏みつける。
「ねえ。まだ戦えるの?」
 ボルガがいつも言っている言葉をリリスが返す。
 ボルガは幼くなり、手が出せなくても睨み返す。
「あなた。何回死んだと思うの。もう1秒ごとに死んでいるのよ。私と目が合っただけでね。さて、次どうしようか」
 リリスが考え込む。
「いくつも思いつくわ。それが全部やり切るまでにもつが心配だわ。大丈夫。長く持たせるようにするから」
 リリスの元に赤い炎の羽の塊が飛んでくる。
 リリスの黒い羽が払い、赤い炎の羽の塊は消える。
「来たのね」
 歩きながら地面に地割れが起きる。そのたびに赤い炎の羽が散っていく。
 薄い桃色の長い髪。燃えるような赤い瞳。赤と薄い桃色を交互とした羽のような裾に足を見せた胸までのドレスに。アームカバー。頭には赤色を基調とした虹色の羽冠をつけた女
 最古の魔女の一人。火の女王。
 れいこうの魔女ロゼッタ・フェリックスだった。
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