魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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戦いを求めた末路①

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 ジャンヌは目を覚めれば、窓一つもない部屋だった。
「ここは・・・」
 ベッドの周辺にエンジェライトが溢れている。
 エンジェライトは『光』が含まれる結晶。エンジェライトから溢れた『光』で回復したようだ。けど、まだ頭と体中痛い。
 何かあったかと思い返そうとしたが、足に重みがある。それは枷がつけられていたからだった。
 一気に目を覚ます。
 思い出した。猫の国から脱出した。その直後に。
「やっと起きた」としえんの魔女ボルガ・ライガンが部屋に入る。
 そうだった。ボルガに誘拐されたんだ。
 猫の国に脱出した直後、ボルガに頭を掴まれ、そのまま地面にたたきつけられたんだ。
「いや~やる前に殺すところだったよ」
 ボルガが器を持って近づく。
「腹減っただろ。ほらごはんを・・・」
 ボルガはスープが入った器を差し出す。器を払い、壁に当たる。
 誘拐しといて陽気に飯を持ってくる。ふざけるな。
「ほらほら、食べないと治らないよ」
 ボルガは器を拾う。
「だったら、聖女の地に帰らせた方が早く治るわよ!」
 一番に怒鳴る。
「ん~。それも考えていたけど。このくらいのケガならすぐ治るかなって」
「あんたがいるから余計に治らないわ!」
「そんなに怒鳴るなよ。監禁したことにさ」
 自覚はあるのか。
「怒るところじゃない。今すぐに殺したいわ!」
「何!治った!」とボルガが一番に反応する。
「う・・・」
「そんなに元気があるなら、もうすぐ治るかな」
 だめだ。治ったと分かればすぐに戦う羽目になる。
「ここ、どこよ」
 今は場所を把握しなければ。
「ここね。俺の空間だよ」
 ボルガが笑顔で言う。
その答えで血の気がひく。
魔女の空間にいる。脱出するにも魔女を殺さない限り出られない。
「ロゼッタに見つからないようにしたんだ。地上でやったら、すぐに気づいて止めに入るんだよ。だからこっそり作ったんだ。あれ?大丈夫?」
 ボルガが心配そうに声をかける。
 答えるつもりはない。
「また来るよ。ゆっくり休んでよ」
 ボルガが部屋を出る。
 ボルガを殺さなければ、魔女の空間から出られない。
 もし他の聖女が助けに来るのにしても難しい。魔女の空間はそんな簡単に見つかるわけがない。
 どっちにしてもあの魔女と戦う羽目になる。実力は最古の魔女並みかもしれない。勝てるわけがない。
 どうすれば。



 だめだ。見つからない。
 イルは、精霊術でジャンヌを探しているが、見つからない。
 ジャンヌに投げられ、井戸に落とされた。猫の国から脱出はできた。
 ジャンヌはアキセを蹴り飛ばした魔女を見て、顔色が変わった。おそらくあの魔女とは面識がある。それにジャンヌを慌てさせるほどだから、かなりの強い魔女だろう。
 だとしたら、ジャンヌはどうなった。ジャンヌの所在を確認できることが他にない。脱出していればいいか。
「困っているの」
 声をした方へ向く。その時、驚愕した。
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