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猫の国⑥

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 走りながらお互いに状況説明した。
 イルはチェシャに飛ばされたという。出口は街の外にある井戸からということ。
 急いで街の外に出れば、森だった。その手前に話に訊く井戸を見つかる。
「あれか!」
 その時イルは咄嗟に横に避ける。
 目の前に陣が通り、木の一本に触れた途端に消えた。
 これは。
陣が通ってきた先を見れば、アキセが銃を構えていた。
 指に指輪がつけていた。いつの間に奪われた。
「おまえ」
 イルがアキセに鋭い目つきをする。
「空気読めよ」
「ジャンヌは先に入れ」
 ジャンヌは思い返す。アキセはイルが猫の国に来たことを記憶から奪おうした。
「ここに置いていかせるつもりね」
「いいから先に入れって言っているだろうが!」
 アキセは怒鳴る。
 その時、アキセが急に飛ばされる。
 あまりにものの突然で何か起きたのか一瞬分からなかった。
 けどやっと理解した。それは、しえんの魔女ボルガ・ライガンがアキセを蹴り飛ばしたからだった。
 まずい。
 ジャンヌはすぐにイルの腕を掴み、井戸へ投げ込む。
「ジャ!」
 イルはそのまま井戸の中へと落ちる。
 その一瞬で来たボルガに回し蹴りで腹にくらってしまう。
 飛ばされたジャンヌは白い炎に包み、木にぶつかる。
 衝撃を抑えたにしても、体中に痛い。
「やっぱりジャンヌだったか」
 陽気にボルガは言う。
「なんでいるのよ」
「だって俺、猫だよ。この国に入る権利はあるし」
「出禁がよく言うね」
「にゃにぃにゃにぃ顔見知りだったの?」
 白い箱の上に乗るリキナとソニアが来てしまった。
――なんで一気に嫌いな相手が3人も来るのよ。しかも知り合いなんて。
「あ~もっと戦いたがったのにぃ。ボルガに取られた~」
 ソニアは足をパタパタと上下にする。
「ダメだよ。俺の将来のライバルなんだから」
 いつから決まった!
「も~」
 ソニアが頬を膨らませる。
「どうしよう。ねえ戦える?」
 ボルガが近づいてくる。
 まずい。早く井戸に入らなくては。
 その時、ボルガが急に飛んできた短剣を掴む。
 勢いよく飛んだ短剣を何事もなく掴み、短剣を握りつぶす。
「ボルガ」
 怒りに混じった女の声。
いつの間にかリキナとソニアは消える。
「早いよ。猫頭(ねこかしら)の魔女バステト・リンバーテール」
 ボルガが視線を変える。
 その先に黒い長髪と尾。青い瞳。ネコ耳を持つ女だった。
 確か現在猫の国を治めている魔女の一人だった。
「出禁にしたはずだか」
 バステトが見下ろす。
「あれが出禁したつもり。簡単に入れたけど」
「おまえが力尽くで入ったからだろうが!」
 パステトは怒鳴る。
「3人も長を殺し、町の半分も破壊しておきながら!」
―-そんなことしたの。あの筋肉魔女。
「あの時は燃え上がっちゃって。悪いとは思ってるよ」
 絶対に罪悪感ないだろ。
「だったら、今すぐに出で行け!」
 バステトの手に短剣が生まれる。
「分かったよ。聖女を連れてここから出るよ」
 その発言で心臓が縮まった。
「じゃあ、行こうか」
 ボルガが近づいてくる。
 連行される。早く逃げないと。逃げなくてはいけないのに体が動けない。
「俺が看病してあげるからさ」
 絶対にイヤ。完治したら、すぐに戦わせるつもりでしょ。
 その時、ジャンヌの足元が急に光る。その光へと落ちる。


 逃げられた。
 ジャンヌは森の中にいた。
 あれは以前にも見たことがある。チェシャが逃がしたのだろう。
 イルは無事に逃げられただろうか。
「見つけた」
 振り向けば、目の前が真っ暗になった。
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