魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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ストーカーを追い払う方法⑦

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 夕方。

「拙者は別で動きますから、アニエスちゃんをよろしくっすよ」
 ジャンヌは入っていない。
 クノが手を組み、人差し指を合わせる。
「忍法影分身。なっちゃって」
 クノはイルの影を踏む。ポンと音が鳴り、影が形となっていく。真っ黒と化した自身の姿だった。
「これは・・・」
「影を分身に作りましたっす。この分身で遠隔に操作すれば、ペンタントの影響はないっすよ」
 なるほど。
「まあ。精霊術ができるかどうか分からないっすけど」
「そこまで知っていたのか」
 やはりクノは侮れない。
「あと、ペンタントが壊れたタイミングで戻すようにはしたっすよ」
「ペンタントは必要じゃなかったか」
「ん~別な方法を思いついたので、もういいっすよ。それにまたジャンヌちゃんが奪いそうですし」
 否定はできない。
「じゃあ。お願いっすよ」
 クノは消える。
 ここから10キロかかるから、送ってくれないのか。



 影を通して、見える。
 『ストーカー追い払い機』を下げているアキセが下着一枚になっている。ジャンヌとアニエスがベッドの上で拘束され、下着の姿になっている。
 アキセのやることが予想通りしすぎる。リリムなだけある。
 ジャンヌとアニエスを助けるには、アキセが持っている『ストーカー追い払い機』を壊すしかない。近くにあったテーブルを蹴る。
「うわ!」
 アキセは避ける。
 その時、テーブルの上に置いてあったビンが顔に当たる。アキセが眩んだ隙にペンタントがある胸に思いっきり殴る。
 ペンタントが砕けた。
 殴った衝撃でアキセは思いっきり、壁にぶつかる。
 その時、体に違和感を覚える。感覚も変わった。
 固まった影が解けていき、ただの影へと戻る。どうやらクノが言った通りペンタントが壊れれば、転送するようになったようだ。
「やっぱりおまえが・・・」
 アキセが胸を抑えながらにらみつける。
 すかさず追撃する。
 アキセは銃を撃ち出す。
 弾は外れるが、無視してアキセに向かって拳を込める。
「後ろ!」
 ジャンヌの声がしたと思えば、後ろの衝撃がする。そのまま壁にぶつかり、そのまま外に出てしまう。態勢を立て直しながら着地する。
 グリパスだった。
「おまえ!どこから!」
「俺の彼女に手を出さんぞ!」
 こいつ。もうバカだろ。話が通じない。
 グリパスが飛び蹴りで迫ろうとした時だった。
「だあああありいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん」と声ともに何かがグリパスの顔に入り、そのまま小屋に突っ込む。
 小屋が大爆発したような衝撃だった。
「え・・・」
 イルは唖然とする。
 あまりにもの突然の連続で頭が回らなかった。
 そういえば、まだ小屋の中にジャンヌがいる。
 答えるかのように土煙から何かが飛び出した。
 ジャンヌだろうと受け止める。
「大丈夫が!」
 アニエスだった。
 顔を赤くし、手で必死に身を隠す。
「ダーリン!」
 ジャンヌとは違う女の声がする。
 声の方を向けば、グリパスの胸倉を掴むもう一人の青い鳥の獣人だった。
「ヤネイ!」
「婚約者である私がいながら浮気するなんて!」
 今耳を疑うようなことを聞いた。あの男に婚約者がいるのか。
「おまえと絶対に束縛結婚してたまるか!」
「なんですって!」
 ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ。
 目に見えないほど殴り続ける。
「さあ。帰りましょ」
 ヤネイは頭にこぶをつけたグリパスの肩に足で掴み、飛んでいく。
 まるで嵐が過ぎ去った後のように荒らして去っていた。
 まさかクノが別で動くと言っていたのは、このことだろうか。
 グリパスに婚約者がいることを知っていたとしたら。
――最初から連れてくればよかったんじゃ 
「あの~」
 アニエスが声をかける。
 そうだった。アニエスを抱えたままだった。
 アニエスを下ろすも、アニエスは恥ずかしそうに手で体を隠そうとしている。
「う!」
 魔女のくせに恥ずかしがるな。
 近くにあった毛布をアニエスに渡す。
「これでもかぶってろ」
 あれ。そういえば、ジャンヌの姿が見えない。アキセの姿もなくなっていた。
 あのやろ。
 臭いをかいでもジャンヌとアキセの近くにいない。どこかに消えてしまったようだ。
「どうでしたっすか」
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