魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
439 / 654

ストーカーを追い払う方法④

しおりを挟む
 思わず取ってしまった。
 これで一番の悩みが消えるからだ。体がここまで反射的に動くとは自分でも驚く。
「ジャンヌ・・・」と息を上がりながらイルが追いつく。
「ストーカーに困っているから使いたくなるのはわかるが・・・あんな堂々と盗んでいくとは・・・」
イルにドン引きされる。
「お願い。イル。これでせっかくの悩みが解決するの。使わせて」
 さすがにこれは譲れない。
 首に下げた『ストーカー追い払い機』をしっかり掴む。
「だとしても使い方分かるのか」
「う・・・」
 慌てて逃げたから使い方が知らない。
 その時、風の矢が迫ってくる。
 ジャンヌは白い炎の球を投げ、風の矢を浄化させる。
 奥にアニエスがハープ弓を構えていた。
「返してください!」
「嫌よ!」とはっきり返す。
「聖女だからって盗みを許せると思ってませんか!」
「魔女だからいいでしょ!」
「そんな通りどこにありますか!盗みは世界共通犯罪です!」
「魔女に共通してたまるか!」とロザリオを懐から取り出し、飛び出す。
「聖女に前科をつけさせます!」とアニエスはハープ弓を引き、風の矢を放つ。
 ジャンヌはロザリオで風の矢を払い、距離を詰める。ハープ弓でロザリオを受け止められ、アニエスに腹を蹴られる。
 アニエスはハープ弓を引き、風の矢を放つ。白い炎を放ち、風の矢を浄化する。
「使い方を教えたら、やめてやるわ!」とジャンヌは向かう。
「知っていたとしても絶対に教えません!」
 アニエスはハープ弓の音を奏で、風を生み出す。
 ドタバタと激突が続く。
「二人ともやめないか」とイルが入る。
「黙って!」「黙ってください!」
「おう・・・」
 その時、風の矢が『ストーカー追い払い機』の紐を切る。
「あ!」
 『ストーカー追い払い機』はアキセの手に掴まれてしまった。
「ゲット!」
 いつの間に。一番手にしてはいけない男に渡ってしまった。
 一番に向かったのは、イルだった。
 イルが拳を下ろすもアキセが一歩下がり、地面にぶつける。
「消えた?」
 アキセが消える。
 『なんでも遮断マント』で消えたところだろう。
 逃げたならさらにまずい。
 その時、パンと弾ける音がしたと思えば、イルが空に飛んでいった。
「え?イル!?」
 急に空へ飛ばされた。
「あ!」
 アニエスが声を上げる。手に持っていたハープ弓がなくなっている。
 さらに首に違和感。触ってみれば、「あ!」と以前つけられたことがある『奴隷首輪』だった。
 以前はニセモノ。今回も騙されないと思って首輪を引っ張ろうとしても千切れない。
 本物の『奴隷首輪』と気づき、冷や汗をかく。
「それは本物だぞ」
 背後から肩にアキセの腕を置かれる。
 アキセが悪だくみに成功したような顔をする。
「ぐう」
「逃げてもいいけど、武器はどうするんだ」
 アキセが言っていたのは、アニエスだった。
 アニエスはこっそり空へと逃げようとしていた。
「う・・・」
「ほらほら、こっちに来な」とアキセが手を招く。
 アニエスは悔しそうに近づく。
――ちょっと待った。あの魔女、弓がなければ何もできないわけ。
 アキセは残った腕をアニエスの肩に置く。
「さて・・・」と言葉を詰めて、「今晩付き合おうぜ!」とアキセが笑顔で言う。
「「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」
 二人とも全力で叫んだという。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

処理中です...