魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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ストーカーを追い払う方法④

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 思わず取ってしまった。
 これで一番の悩みが消えるからだ。体がここまで反射的に動くとは自分でも驚く。
「ジャンヌ・・・」と息を上がりながらイルが追いつく。
「ストーカーに困っているから使いたくなるのはわかるが・・・あんな堂々と盗んでいくとは・・・」
イルにドン引きされる。
「お願い。イル。これでせっかくの悩みが解決するの。使わせて」
 さすがにこれは譲れない。
 首に下げた『ストーカー追い払い機』をしっかり掴む。
「だとしても使い方分かるのか」
「う・・・」
 慌てて逃げたから使い方が知らない。
 その時、風の矢が迫ってくる。
 ジャンヌは白い炎の球を投げ、風の矢を浄化させる。
 奥にアニエスがハープ弓を構えていた。
「返してください!」
「嫌よ!」とはっきり返す。
「聖女だからって盗みを許せると思ってませんか!」
「魔女だからいいでしょ!」
「そんな通りどこにありますか!盗みは世界共通犯罪です!」
「魔女に共通してたまるか!」とロザリオを懐から取り出し、飛び出す。
「聖女に前科をつけさせます!」とアニエスはハープ弓を引き、風の矢を放つ。
 ジャンヌはロザリオで風の矢を払い、距離を詰める。ハープ弓でロザリオを受け止められ、アニエスに腹を蹴られる。
 アニエスはハープ弓を引き、風の矢を放つ。白い炎を放ち、風の矢を浄化する。
「使い方を教えたら、やめてやるわ!」とジャンヌは向かう。
「知っていたとしても絶対に教えません!」
 アニエスはハープ弓の音を奏で、風を生み出す。
 ドタバタと激突が続く。
「二人ともやめないか」とイルが入る。
「黙って!」「黙ってください!」
「おう・・・」
 その時、風の矢が『ストーカー追い払い機』の紐を切る。
「あ!」
 『ストーカー追い払い機』はアキセの手に掴まれてしまった。
「ゲット!」
 いつの間に。一番手にしてはいけない男に渡ってしまった。
 一番に向かったのは、イルだった。
 イルが拳を下ろすもアキセが一歩下がり、地面にぶつける。
「消えた?」
 アキセが消える。
 『なんでも遮断マント』で消えたところだろう。
 逃げたならさらにまずい。
 その時、パンと弾ける音がしたと思えば、イルが空に飛んでいった。
「え?イル!?」
 急に空へ飛ばされた。
「あ!」
 アニエスが声を上げる。手に持っていたハープ弓がなくなっている。
 さらに首に違和感。触ってみれば、「あ!」と以前つけられたことがある『奴隷首輪』だった。
 以前はニセモノ。今回も騙されないと思って首輪を引っ張ろうとしても千切れない。
 本物の『奴隷首輪』と気づき、冷や汗をかく。
「それは本物だぞ」
 背後から肩にアキセの腕を置かれる。
 アキセが悪だくみに成功したような顔をする。
「ぐう」
「逃げてもいいけど、武器はどうするんだ」
 アキセが言っていたのは、アニエスだった。
 アニエスはこっそり空へと逃げようとしていた。
「う・・・」
「ほらほら、こっちに来な」とアキセが手を招く。
 アニエスは悔しそうに近づく。
――ちょっと待った。あの魔女、弓がなければ何もできないわけ。
 アキセは残った腕をアニエスの肩に置く。
「さて・・・」と言葉を詰めて、「今晩付き合おうぜ!」とアキセが笑顔で言う。
「「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」
 二人とも全力で叫んだという。
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