魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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サバトだよ。全員集合!①

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「なんでこんな森の中にあるんだ?」
 アキセは森の中に不自然なものを見つけてしまった。それは顔を見上げるほどの巨大なケーキだった。
 どう考えても人間ができる技術ではない。おそらくと思った矢先で横から殺気。後ろに避け、目の前に何かが通った。
 召喚した銃を構えば、「おまえかよ」と愕然とする。
 異獣(エヴォル)の犬。ヘルハウンド。左目に傷があるアーノルドだった。
 アーノルドは調理の魔女アニア・パティールの従者。ということは、この巨大なケーキは、アニアが作ったところか。
「おまえ!こんなところまで邪魔するつもりか!」
「てめえが、行く先で現れるからだろうが!」
「邪魔してたまるか!」
 バンバンバン。ガタンゴトンパシャーン。
「あ・・・」
 アーノルドを飛ばした先で巨大なケーキを壊してしまった。
 それにタイミングよく、向こうから女の声がする。
 アニアが帰ってきたのだろう。このままでは確実に殺される。
 ケーキだらけのアーノルドが一番に走る。真っ先にアニアに言うつもりだろう。
そうはさせない。
銃を撃つ。弾が陣へと変わる。アーノルドを通り、陣とともに消える。
 魔術でアーノルドを転送した。
 女の声が近づく。
 アキセは咄嗟に『なんでも遮断マント』で木陰に隠れる。アーノルドを適当に飛ばした代わりに逃げる時間を失った。
 姿が見えた途端に一気に肩が重くなった。
 アーノルドがいるから調理の魔女アニア・パティ―ルがいるのは予想ついていたが、意外な二人がいた。
 魅稚(みち)の魔女ラピス・フィールと速(そく)忍(にん)の魔女ヤオトメ・クノだった。
 なんでこの二人が。どっちにしても勝てない。逃げられない。
「あ!」とアニアが一番に驚く。
「あら。壊れているじゃないの」
「あれま~」
「もう。見張ってっていったのに。アーノルド!」とアニアが呼んでも来るはずがない。遠くに飛ばしたからだ。
「どうしますっか。もう時間っすよ」
「そうね」
 え?時間。
 アキセがその意味を考えようとした時だった。
「なんくるないさー」と急に回転しながら着地する。
 褐色な肌。緑色の瞳。ポニーテールの赤毛。胸には黄色の布で巻き、葉で作られたようなスカート。
「常夏の魔女チュラナ・キジムナー参上!」
 腕を上げて言う。
「一番乗り!」
「いつもながら元気ね」
 青い髪。青い瞳。頭には布紐。独自な模様の白と青の衣装。大きい葉を傘のように持つ幼女がゆらゆらと浮いている。
「冬蕗の魔女アイニャ・コロ・ポックル。参りました」
 次にマントのように広げたネズミに乗ってきたリスの尾と耳をもつ幼女。
「油絵の魔女ファン・ゴッホだよ」
乗っていたマントのネズミを尻尾の中へと消える。
 今度は大きいキノコの上に乗った幼女が二人。
キノコ帽子。たれ目。少し大きい白衣を着ている幼女。
「胞子の魔女ピトラ・マッシュ・ミュール」
「工作の魔女コルン・コボルド」
 馴染みのあるコルンだった。
「玩維の魔女スタッフィ・トモニールも来たよ~」
 長い耳をつけた着ぐるみを来た幼女。
 かなり大きい巨大な顔。白い綿のタテガミ。ボタンと目玉。大きい口に唇に糸が縫い付けられている。四柱の長い手足。巨大な蛇のような布切れの体。しっぽの先が糸で円盤をつるしている。
 以前、捕まった時に作っていたテラコットの上に乗っていた。
「大釜の魔女ケリドウィンも~むにゃ~」
大釜に入り、ネコのように寝ぼけている幼女。
ラピス、クノ、スタッフィにコルンまで。これが話に訊く幼女同盟(リトルウィッチーズ)のようだ。
「あれ。兄貴は?」とチュラナが訊く。
「今回は欠席っす」
 まだいるのか。
「あら、残念」とアイニャは言う。
「久しぶりに会いたかったけどな」
「チュラナは、単に戦いだけでしょ」
「だって、強いもん!」
「あれ?ケーキくじゃくじゃけど」とゴッホは言う。
「えーこれで終わり~」とスタッフィは言う。
「むにゃ~楽しみにしていたのにな~」
「申し訳ございません!」とアニアは謝罪する。
「すぐにケーキを作りますので!」
「そんなに謝らないで。これは・・・」
 ラピスは考え込む。
「この壊し方をみると人為的ね」
「ということは犯人はいるってことっすね」
 やめろーこれ以上推測するな。
「よし、みんな~犯人捜しに変更!」とラピスは提案する。
「は~い」と一斉に言う。
 何!?
 思わず声が出そうになった。
「見つけたら、そうね」とラピスは悩む。
「それは捕まってからでもいいんじゃないっすか。今も逃げていますし」
「そうね」
 絶対に逃げてやる。
「それまでにスペシャルなケーキを最速で作りますね」
「あら、太っ腹」
「わ~い!」
 今すぐに逃げよう。見つかったら確実にタダで帰さない。殺される。
 すぐに魔術で転送する。
 ガタ!
 何もない空にぶつかった。
 以前と似た空に透明な壁だった。
「また・・・」
 アキセは空から落ちる。
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