魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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真珠の魔女⑥

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 ここで人質に取るとは。ヒュパティアはどうした。死んではいないと思うが。

「カーティア。聖剣が怖いわ~」

 顔の半分に焼けた傷をしたエルヴィラが見つめる。

 攻撃するよりも、ジャンヌの首が絞められる方が早い。ここは従うしかない。

 アガタはシチリア・リングを捨てる。その時、床から真珠の紐に体を絡め、地面に膝をつかせる。

「ひどい。顔に傷をつけるなんて。カーティアがそこまでするとは思わなかった」

 エルヴィラはゆっくり近づく。

「あ~もう一人いた聖女も殺したわ」

 これは嘘だ。混乱するために言っている。ヒュパティアは生きている。

「カーティアカーティアカーティア・・・」

 顔を触られる。

「今度は二人で一緒にいましょうよ。魔女も聖女も関係なく、たった二人で」

 エルヴィラは愛しく見つめられる。

「あ~聖女にならなかったら、キスができるのに」

「聖女にならなかったら、君に殺されていた」

「え・・・」

 エルヴィラが驚愕した。

「そんなことない・・・私はカーティアが好きなの。愛しているの。なんで殺すのよ」

「忘れているんだよ」

「そんなの関係ない!覚えてなくてもあなたのことを愛しているの。それだけでいいの!」

「魔女は転生する。記憶や思いを引き継ぎ、欠けることもある。君が持っているその想いは、君自身が作ったわけじゃない。過去の想いを引き継いでいるだけなんだ」

 前回ではっきりした。

「君自身はどこにいるんだ」

「なんでそんなことを言うの・・・私は・・・私なんだよ・・・エルヴィラなんだよ・・・エルヴィラエルヴィラエルヴィラなんだ!」

 混乱している。エルヴィラに雷を放とうとするが、エルヴィラの頭に白い結晶の刃が差し込む。

 この刃はジャンヌのもの。ジャンヌが力絞った『光』でエルヴィラの後頭部に当てたということか。

 バカなことを。

 すぐに雷を放つも、エルヴィラの前に水の盾ができ、防がれる。

「ぶっ殺してやる・・・」

 エルヴィラが立ち上がる。

 殺意がある血走った眼になっている。

 まずい。

 その時、後ろへ引っ張られる。二人から離れてしまう。体中から雷を放ち、真珠の紐を分解する。それでも背後から真珠の紐が伸びる。さらに貝カニが行く先を邪魔する。



   気づけば、貝カニに触角で首を絞められ、魔女とアガタがいた。

 確かアキセとヒュパティアと一緒にいた。いつの間にかここに連れて来られたようだ。

苦しい中、状況を確認する。

 ジャンヌが人質にされているから、アガタは魔女に捕まっているところだろう。

 魔女がアガタに向けている隙に残っていた『光』を結晶の刃に結合し、魔女に向ける。頭に当たった。

 さすがにあれだけでは死なないか。

アガタも雷で攻撃したが、水の盾で防がれた。

 エルヴィラが立ち上がれば、アガタが真珠の紐に奥へと引っ張られる。真珠の紐と貝カニがアガタに向かっている。アガタがいくら退治してもすぐに襲ってくる。

 エルヴィラが剣を引きずり、殺意がある血走った眼になっている。

「ぶっ殺す。殺してやる。死なしてやる。討ちとめる。仕留めてやる。ぶちのめしてやる!」

 刺された結晶の刃を引き抜く。傷口から黒いモヤが漏れる。

「私たちの邪魔する聖女は皆死ねばいいんだ。消えればいいんだ。存在しなければいいんだ。絶えてしまえばいいんだ。滅びればいいんだ!」

 エルヴィラがジャンヌの前に立つ。

「死んじまえ!」

 エルヴィラが剣でジャンヌの首に向かって振るう時だった。

 剣が弾いた。

「え・・・」

 青く輝く水がエルヴィラを押し出し、ジャンヌから離れる。

 どうやらヒュパティアも来たようだ。

 青く輝く水が触角を切り、ジャンヌを解放する。倒れるジャンヌをアキセが受け止める。

 こいつもか。

 ヒュパティアは一直線に魔女の元へと向かい、青く輝く水の波を起こす。

「邪魔するな!」

 エルヴィラも同じく、波を起こし、打ち消す。

 ヒュパティアの聖剣『カキカラ』を取り出す。鞘から水が剣のように伸び、エルヴィラに振り下ろす。エルヴィラも剣で受け止める。

 剣撃が続く。

 その時、エルヴィラに雷が当たる。

「ああ!」

 アガタもシチリア・リングを回収しながら、向かっていく。

 ヒュパティアがカキカラを鞭のように使い、エルヴィラの首を絞め、動きを止める。

 アガタがシチリア・リングでエルヴィラの体を真っ二つにし、さらに黄色の刃を無数にエルヴィラの体を狙いこむ。
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