魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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真珠の魔女⑤

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 魔女は転生するとは訊いていたが、初めて会ったのもエルヴィラだった。
みずからの魔女エルヴィラ・ユーロレス・インブルとして現れた。
姿が以前と変わっていたから戸惑いもしたが、彼女が戻ってきた嬉しさがあった。
 聖女は魔女を殺さなければならない。けど、聖女と協力する魔女もいると訊いた。だから
協力関係になれば、また以前のように戻れると思った。
 あの頃、ヒュパティアが聖女として覚醒したばかりで一緒に行動し、任務中だった。仕事が終わったら、話をしようと思った矢先にヒュパティアが消えた。
 考えたくなかったが、エルヴィラの元に行けば、ヒュパティアの体中に切り刻んでいた。顔に血を染まったエルヴィラもいた。
襲った理由が「一緒にいたから」ということだった。
以前の彼女はそんなことはなかった。けど、このままではヒュパティアが死ぬ。早く殺さなければとエルヴィラに振るうが、首元で止めてしまった。
「どうして、殺すの?」
「僕も聖女だ」
「カーティアは聖女になってもカーティアのままだよ・・・」
 エルヴィラは豹変した。
「いつ、カーティアは聖女になったの・・・」
 聖女を覚醒したあの時のことを覚えていない。
「あれ・・・カーティアが好きなのに・・・なんで・・・覚えていないの・・・」
 エルヴィラが嘆く。
「あ・・・そうか・・・聖女が・・・私たちの中を裂くために記憶を奪ったのか・・・」
 違う。
 エルヴィラがヒュパティアの首を切ろうとしたところでエルヴィラを殺した。


今までの思い出も聖女として覚醒したことも忘れていた。覚えていたのは、名前とカーティアに対する想いだけだった。
以前よりも狂気さ、愛しさも増していた。
 魔女は転生しても、記憶を欠如する場合もある。まさかほとんど記憶を失うとは思えなかった。
 おそらく聖女として覚醒したあの日、彼女にとってショックを与えたのかもしれない。
 もうあの時の彼女は戻ってこない。転生したエルヴィラは想いに縛られて生きている。その想いから解放するために聖女としてエルヴィラと向き合う。


 エルヴィラは以前より強くなっている。それでも勝てる。
 エルヴィラは踊るように剣を振る。さらに髪をなびかせ、生み出した真珠を銃弾のように飛ばす。
 体から雷を飛ばす。真珠を粉砕し、さらに雷が枝分かれし、エルヴィラに向かう。エルヴィラは後ろに距離を取る。剣を振るい、波を生み出し、雷を打ち消す。
アガタは剣を突き立て、エルヴィラに向かう。
エルヴィラは剣で1本のシチリア・リングを受け止める。もう一本のシチリア・リングで突き出す。エルヴィラは顔を逸らす。髪をなびかせ、真珠を飛ばす。雷で真珠をちらし、さらにシチリア・リングから雷をエルヴィラの顔に向ける。
「あああああああああああああああああああああ」
 エルヴィラの顔に雷が当たる。
 シチリア・リングでエルヴィラの剣を飛ばし、後は剣を突き出すだけ。
「ああ!」
 声がした。ジャンヌの声だった。
 エルヴィラは水を生み出し、アガタを押し出す。
 シチリア・リングで床を刺し、衝撃を抑える。
 顔を上げれば、6本の足。二本のハサミ。見た目がカニのように見える大きい貝の口から伸びた触角でジャンヌの首を絞めていた。
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