魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

真珠の魔女④

　アキセはジャンヌを肩に担ぎながら貝カニから走っていた。
　相手を的確に狙える散弾銃で貝カニを広範囲に撃っても、壁の隙間からすぐに現れる。
　しかも逃がさないようにこの遺跡に魔女が空間をいじったようだ。転送しても逃げられない。
　目の前に人ほどの貝カニがハサミを突き出す。
　散弾銃を撃つ。ハサミを粉砕する。その時、背後から銃と足に触角が絡む。
　しまった。
　目の前の貝カニの口を開けば、触角が伸び、迫ってくる。
　その時、青く輝く水の槍が貝カニを刺す。
　見たことがある水だった。
　人ほどの貝カニが消えた先に以前に会った聖女のヒュパティアが立っていた。
　さらにヒュパティアが大きく手を振り、青く輝く水を波のように生み出す。アキセの両脇を通り、背後にいた貝カニを覆いかぶす。
「あなた・・・ジャンヌの仲間の」
「その言葉を二度使わないで・・・」
「彼氏」
「殺すぞ！」
　拷問でやられながらもジャンヌはそれだけは意地でも否定したいようだ。
「一応生きているわね」
「どこがよ・・・」
「ちょうどいいわ。今すぐここから・・・」
　アキセの足元から大きいカニのハサミが伸びる。人を丸ごと挟める大きさだった。
　ヒュパティアが飛び出し、アキセを押し倒す。
　ハサミを免れたが、倒れた衝撃で、ジャンヌを離してしまう。その隙にジャンヌは触角に絡める。
「まず！」
　触角に絡めたジャンヌは、人ほどの貝カニの中に閉じ込める。そのまま走り出す。
　カニのくせに足が速い。
　追いかけようにも貝カニが行く道を塞ぐ。