魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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聖女になるまでに②

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「やはりあの事件は魔女の仕業ですか」
 客間で父と緑の聖女ルチアと話していた。僕は、聖女様のご指名で同席することになった。
「まだ魔女とは断定はできませんが、可能性はあると思います」
「他にもあるということですね」
「はい。魔女を理由にすればなんでもできますので」
「確かにそれはありえますね」
「早急に解決するためにも協力して頂けますか」
「分かりました。協力しましょう」
「助かります」
 父は積極的に聖女様と協力することにした。事件を先決に解決したい団長としての考えだろう。
「まずは、遺体から見てもよろしいでしょうか」
「分かりました。今・・・」
「案内役に彼女と一緒にいてもよろしいかしら」
 心臓が縮まるかと思った。見抜いてしまったのかと。
「構いませんが、カーティア。場所分かるか」
「はい」
「聖女様を案内してくれ」
「分かりました」
 断りたかったが、父のために引き受ける。
「よろしくね」と聖女様は笑って返す。


 もしかして見抜いているのか。魔女と関係があることに。落ち着け。顔に出さなければいいんだ。
「聖女様・・・」
「ルチアでいいよ」
「ルチア様。どうして僕ですか・・・」
「ん~」と言葉を伸ばして、「君に案内してほしいって思っただけよ」
「それだけですか・・・」
「そうよ」
 ルチア様は堂々と言う。
「ルチア様は・・・犯人が魔女だったら殺すのですか」
「そうね」とはっきり答える。
「それは・・・」
「魔女ってね。理性があるかないかで違うのよ。理性があると汚い手口とか回りくどいことをして相手を貶めし、理性がなければ、思いのままに動くから何をしてかすか分からない。魔女を退治しないと終わらないことは多いからね」
 やはりエルヴィラに見つけるわけにはいけない。
「けど・・・」とルチア様は言葉を詰まる。
「聖女を長く務めるといろいろと見えるのよ。敵は魔女以外にいるってことに。さっきも団長と話したと思うけど、魔女を理由にすればなんでもできるからね。殺害とかなすりつけるとかいろいろとね。だから見極めるのも大変だけどね」
 ルチア様は肩をすくめる。
 ルチア様の話にも理解ができる。魔女は危険な存在と教えられた。けど、人間の方が怖い。ラニールのように。
「ルチア様。魔女を殺さない場合はありますか」
「場合によるけどね。いろんな魔女がいるから」
「どんな魔女がいたんですか?」
「優しい魔女もいたし、人のためにといた魔女もいた。それもその魔女にとって利益があるからだけどね」
 殺さない場合があると訊いただけで、思わず、声に出そうになった。
エルヴィラを殺さないでなんて。危険ではないことに。けど、あの事件がエルヴィラと決めつけられたら、殺すかもしれない。
 やっぱり言えない。
「あなたが聖女様でございますね」
 ラニールが来る。
「あなたは?」
「ご報告がございます。魔女を見つけました」
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