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聖女になるまでに①
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海がある国で僕が生まれ、聖女になるまで名前はカーティアだった。
騎士の家系で父と二人だけ。母は3歳の時に死んだと聞いている。
幼い頃から女であっても騎士道を学んだ。騎士としての父の偉大さに憧れていたのもあって、騎士道を積極的に学んだ。大きくなって父のように騎士になると思っていた。
13歳の時だった。
「女なんだからさ。騎士よりも嫁に行く修行を覚えた方がいいじゃないのか」
父の下で働いているラニールにいつも冷やかされる。だからラニールは嫌いだった。
騎士団長の娘で後釜を狙っているだろう。分かり切った行動にいつも嫌気をさしていた。
けど、成長するとともに現実が少しずつ見えて、女で騎士道を学ぶことにラニール以外でも蔑むような目で見る者もいる。
それでも僕は騎士として生きたい。女であっても。
でも、僕もいつか。この家のために嫁に出されるのだろう。ありえないことではない。その時になったら、僕は受けられるだろうか。騎士としての想いも消して。
考えごとがあるときは、海辺を歩く。
この海風、潮風が落ち着く。
自分が時々分からなくなる時があった。女らしく。男らしく。そんなものは理解ができなかった。自分らしく生きたい。
その時だった。
泣き声がした。かすかだか聞こえた。声をした方へ歩けば、洞窟からだった。
覗けば、少女がいた。
細い薄桃色の触角の肩までの髪。ピンク色の瞳。
腕までの短いマントと胸から広げ、足まで届く長い裾が透き通ったピンク色の布。胸から足の間接までの一体化した服。
一目で魔女だと分かった。弱っていたようで、魔女なのに怯えている。
魔女は危険な存在。人を惑わし、殺し、弄ばれる。話と聞いていたのと想像が違っていた。あの時の僕は手を差し伸ばした。
「名前は・・・」
「エルヴィラ・・・桜貝の魔女エルヴィラ・ヴェスタシェル」と警戒しながらも名前を答えてくれた。
それから僕は魔女と会うことになった。
毎晩、洞窟に来ては、食べ物を持ってきたり、話をしたりした。僕の話を聞いてくれる。優しく見てくれた。
魔女は危険だと分かっているけど。
あの時はそれでも彼女と一緒にいたいと思った。
「カーティア・・・いつまでもいよ」
「僕もだよ・・・」
本当にエルヴィラといれば、ありのままでいられた。
だか。
「どこに行くつもりだ」
いつものようにエルヴィラの元へと行くところでラニールに止められる。
無視して行こうとしたが、「魔女の元に行くのか」とラニールから言われた時は、心臓が止まるほどだった。
よりにもよってこの男に知られてしまった。
「なあ、話があるんだけど」
ラニールからの要求が、吐き下するほどだった。
魔女の元に行かないこと。俺の女になれということだった。
断れば、魔女との関係をばらす。
名誉ある家に傷をつけることになる。どんな結果になるのか分からない。父に迷惑をかける。
従うしかなかった。父のためにも。彼女のためにも。
その日からエルヴィラと会えなくなった。
隠れて会いに行こうにもラニールはすぐにばれてしまう。何もできなかった。
この間までに彼女はどう思っているのだろうか。
寂しいのか。会いたいのか。恋しがっているのか。
あの時は何もできない自分に嫌になった。
それから、数日経ってからだった。
人を殺される事件が続いた。まるで食い荒らされたように殺されたという。
考えたくなかったが、エルヴィラが食べているのかもしれない。僕を探しているのかもしれない。
だとすれば、どうなる。事件がさらに大事になれば、聖女がくるかもしれない。聖女は魔女を殺すために存在する。聖女に殺される。
そうなってしまったら、そうなってしまったら。
中庭で思いつめた時だった。
「こんにちは」
女の声。
「勝手に入ってしまい、申し訳ございません」
声をした方へ向けば、グリ―ンの混ざった金髪。緑色の瞳。白いコートを来た女だった。
「初めまして。緑の聖女ルチアと申します」
騎士の家系で父と二人だけ。母は3歳の時に死んだと聞いている。
幼い頃から女であっても騎士道を学んだ。騎士としての父の偉大さに憧れていたのもあって、騎士道を積極的に学んだ。大きくなって父のように騎士になると思っていた。
13歳の時だった。
「女なんだからさ。騎士よりも嫁に行く修行を覚えた方がいいじゃないのか」
父の下で働いているラニールにいつも冷やかされる。だからラニールは嫌いだった。
騎士団長の娘で後釜を狙っているだろう。分かり切った行動にいつも嫌気をさしていた。
けど、成長するとともに現実が少しずつ見えて、女で騎士道を学ぶことにラニール以外でも蔑むような目で見る者もいる。
それでも僕は騎士として生きたい。女であっても。
でも、僕もいつか。この家のために嫁に出されるのだろう。ありえないことではない。その時になったら、僕は受けられるだろうか。騎士としての想いも消して。
考えごとがあるときは、海辺を歩く。
この海風、潮風が落ち着く。
自分が時々分からなくなる時があった。女らしく。男らしく。そんなものは理解ができなかった。自分らしく生きたい。
その時だった。
泣き声がした。かすかだか聞こえた。声をした方へ歩けば、洞窟からだった。
覗けば、少女がいた。
細い薄桃色の触角の肩までの髪。ピンク色の瞳。
腕までの短いマントと胸から広げ、足まで届く長い裾が透き通ったピンク色の布。胸から足の間接までの一体化した服。
一目で魔女だと分かった。弱っていたようで、魔女なのに怯えている。
魔女は危険な存在。人を惑わし、殺し、弄ばれる。話と聞いていたのと想像が違っていた。あの時の僕は手を差し伸ばした。
「名前は・・・」
「エルヴィラ・・・桜貝の魔女エルヴィラ・ヴェスタシェル」と警戒しながらも名前を答えてくれた。
それから僕は魔女と会うことになった。
毎晩、洞窟に来ては、食べ物を持ってきたり、話をしたりした。僕の話を聞いてくれる。優しく見てくれた。
魔女は危険だと分かっているけど。
あの時はそれでも彼女と一緒にいたいと思った。
「カーティア・・・いつまでもいよ」
「僕もだよ・・・」
本当にエルヴィラといれば、ありのままでいられた。
だか。
「どこに行くつもりだ」
いつものようにエルヴィラの元へと行くところでラニールに止められる。
無視して行こうとしたが、「魔女の元に行くのか」とラニールから言われた時は、心臓が止まるほどだった。
よりにもよってこの男に知られてしまった。
「なあ、話があるんだけど」
ラニールからの要求が、吐き下するほどだった。
魔女の元に行かないこと。俺の女になれということだった。
断れば、魔女との関係をばらす。
名誉ある家に傷をつけることになる。どんな結果になるのか分からない。父に迷惑をかける。
従うしかなかった。父のためにも。彼女のためにも。
その日からエルヴィラと会えなくなった。
隠れて会いに行こうにもラニールはすぐにばれてしまう。何もできなかった。
この間までに彼女はどう思っているのだろうか。
寂しいのか。会いたいのか。恋しがっているのか。
あの時は何もできない自分に嫌になった。
それから、数日経ってからだった。
人を殺される事件が続いた。まるで食い荒らされたように殺されたという。
考えたくなかったが、エルヴィラが食べているのかもしれない。僕を探しているのかもしれない。
だとすれば、どうなる。事件がさらに大事になれば、聖女がくるかもしれない。聖女は魔女を殺すために存在する。聖女に殺される。
そうなってしまったら、そうなってしまったら。
中庭で思いつめた時だった。
「こんにちは」
女の声。
「勝手に入ってしまい、申し訳ございません」
声をした方へ向けば、グリ―ンの混ざった金髪。緑色の瞳。白いコートを来た女だった。
「初めまして。緑の聖女ルチアと申します」
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