魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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良心になっちゃった④

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「訊いてほしいなら、さっさと話せ」
 もう一人のアキセに言う。
「実はですね。『良心卵』は、相手を良心した状態でコピーを作る発明品です。そいつに当たったことで僕は生まれました。それにもう一つ役目を与えられています」
「は?」
「コルンは盗むことを分かっていたので、あいつを殺し、指輪を持ってこさせる役目を与えています」
「指輪が目的なわけ」
 指輪もコルンの発明品。いつもアキセが盗んだ発明品もすべてその指輪の中に入っているから狙っている。
「まあ、いつでも探せるのでいいですか」
――おい、コルン。早速仕事放棄されているぞ。
「あなたとお話したくなりましたので」
 その発言で鳥肌が立った。
「そこまでコピーしなくてもいいじゃないの・・・」
「確かにコピーされていますが・・・気にはなりますね」
 さらに鳥肌が立つ。
「やっぱ無理・・・」
「どうしてです。あいつよりは良心的だと思いますよ」
「それでも嫌よ」
「見た目と声で判断していますか。中身はあいつと違います。それにあなたも知りたくないですか。あいつの過去のことを」
「知りたくない」
「そうですか。結構傑作ですよ」とニセモノは軽く笑う。
 ジャンヌは振り向き、ニセモノの頬を鏡で殴る。
「だから、何!」
 怒鳴る。
「あいつが嫌いだから知りたくないもないね。それに人の過去を詮索つもりはないし、人の過去を知って笑うほど落ち込ぼれてない。良心とは言っていたけど、単に嫌いなだけでしょ。性格までは抜けていないってことね。それに良心があるって自分から言うものじゃないから」
 あれ。
「悲しいです」
 とすぐにニセモノの腕を掴み、背負い投げする。
「とりゃあああああああああああ!」
 ニセモノを地面にたたきつける。
「ぐわ!」
 そのまま腕を引っ張り、肩を抑える。
「あんた!魔力を持っていないでしょ!」
「何を!」
「銃で脅す時も魔力を使ったはずよ!」
 アキセは『光』を奪える魔力でいつも脅している。今回は銃を使った。つまり魔力までコピーしていないということ。
「ニセモノでも、魔力まではコピーしていないってことね。あんたが1人でできたとは思えない。誰と組んでいる!」
「私を呼んだ?」
 背後からウィムの声がしたと思えば、背中に衝撃。飛ばされる。態勢を取りながら、木陰に隠れる。
「逃げてもいいけど、この子はいいの」
 ウィムは拘束鏡に閉じ込めているユビワを見せる。
「ユビワまで・・・」
「そうよ」
 その時、鏡に一文字が浮かぶ。読めない。複雑な文字。ウィーン文字だろう。その文字からユビワが飛び出す。
 ユビワはすぐに召喚した銃で、風の球を打つ。ウィムはそのまま受け、遠くに飛ばされる。ユビワが地面につく。ニセモノがユビワに駆け付ける。
 まずい。人質に取られる。
 ロザリオでニセモノを放つところで、ユビワは指輪に戻る。
 変身の調整できないとは言っていたけど、タイミングが悪すぎる。
 ニセモノが指輪を拾う。
「指輪に戻ってしまっては役目を果たさなければなりません。コルンの元へ届けようと思います」
 持っていかれては、ユビワを人にする機会がなくなる。あんなかわいい子はほかにいない。だったら。
「持っていってもいいけど、その後はどうするんだろうね」
 説得させる。
 良心になったと言っても性格は変わっていないはず。自分に利益があれば、行動が変わる。
「コルンのことだから、あんたのことを消す場合もあるわよ。なにせ嫌いな相手がいるってことに耐えられないはずよ」
 ニセモノが近づいてくる。
「だったら、私が代わりに指輪を届くっていうのもありだと思うの」
「なら、お願いします」
「え・・・」
 意外な行動に唖然としてしまった。
「そうしてください。僕も命がほしいので」
目の前に来たニセモノは言う。
「え?いいの・・・」
「ええ」
 本当に交渉に乗るとは。
「あなたも僕の性格をご存じでこの交渉を思いついた」
 思惑もバレてる。
「おっしゃる通り。役目を終えれば、処分されると思います。僕だっていやですよ。そんな人生。それにあなたとこの先ご一緒したいと思いますので」
 アキセの顔とその発言で寒気がする。
「それって本心。それともコピーされたの?」
「これから見てくださいよ」
「その発言で冷めた」
「さすがに傷つきますよ」
「だめだ。性格があいつと一緒」
「違いますって。だったら一緒にあのクズを倒すっていうのもありですよ」
「それは乗る」
 あれ、そういえば、アキセが入った鏡はどこにいった。ニセモノの顔を殴ったところまでは、覚えているが、と思った矢先に急に風が吹く。
 これは自然の風ではない。おそらくウィムだろう。
 風が止んだ時には目の前にいたニセモノがいなかった。
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