魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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良心になっちゃった①

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 アキセはいつものようにコルンの工房から発明品を盗んでいた。
「たく、今回はこれしか盗めなかった」
 見た目は普通の卵だか、コルンの発明品は普通ではない。さっそく卵の正体を探ろうとすると、急にぼっと爆発した。
 煙が晴れれば、ピンク瞳。ピンクのボブ髪。ワンピースを着た12歳くらいの少女。人の姿をしたユビワだった。
「おまえ!また!」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 ユビワはアキセを突き飛ばし、逃げる。
 その反動に卵を離し、頭に当たる。卵が割れ、煙に包まれる。


 ジャンヌは木陰で昼寝から起きたところだった。
「こんなゆっくりなの。久しぶりだな~」と体を伸ばす。
「起きましたか」
 アキセの声で鳥肌が立った。声をした方向に向けば、隣にアキセがいた。
 咄嗟にスーと横にスライドして離れる。
 いつの間に。
「申し訳ございません。驚かせてしまって」
 口調が違う。さらに鳥肌が立つ。
「どうかいたしましたか」
 アキセが口を柔らかく返す。
「そうですよね。この僕では驚いてしまいますよね」
「僕!?」
 一人称も違う。
「実は、コルンから『良心卵』というものに浴びてしまい、僕の邪心が浄化されました」
「最近見ないネタよ。それ」
 またコルンの発明品絡みが。それが真実だとしても、気持ち悪い。鳥肌が止まらない。
「ジャンヌさん?」
 別の女の声。
 木陰から人間になったユビワが姿を見せた。
「ユビワちゃんではないですか」
 アキセの発言にユビワが身震いする。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 ユビワはガトリングを召喚し、問答無用でアキセを吹き飛ばす。
 ジャンヌは咄嗟に避ける。
「嫌なのは分かるけど、的確に狙ってくれない?」
危うく巻き込まれるところだった。
「ごめんなさい。反射的で」
 ユビワは謝る。
「また人間になったのね」
 ユビワは、アキセが持っているコルンの発明品の指輪。人に変身できるようになったが、変身が上手く調整ができないようだ。
「私・・・人になっても行く宛がないんですよね・・・」
 ユビワが青ざめて言う。
「いつでも来ていいよ」
 その姿だとコルンは気付かない。それにユビワの事情を知っているのは限られている。ユビワにも知り合いを増やしたい。
「酷いじゃないか。ユビワちゃん」
 ボロボロになったアキセが戻ってきた。
 ユビワは身震いし、ジャンヌの背後に隠れる。
「その態度は傷つきますよ」
 ダメだ。気色悪すぎる。
「ちょっと確認したいんだけど、こいつから『良心卵』で心が浄化されたっていうんだけど、本当?」
 親指を立てアキセに指しながらユビワに訊く。
「『良心卵』について詳しくは分からないですけど・・・卵を盗んだのは本当です。私が突き飛ばして、その時に当たったかと・・・」
「そうなの」
 ユビワが言っていることなら話は真実だろう。その前にユビワが発端だったのか。
「ユビワちゃん。本当にごめんね。今まで雑に扱って。これからも大切にするからさ」
 鳥肌が立つ。
「気持ち悪いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 ユビワはガトリングをアキセに向かって放つ。
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