魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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タタリ解放戦⑧

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「なああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 ジャンヌは頭を掻きながら悔しがりの叫び声をあげる。
 これだけは避けたかったのに。作者の策略でも避けたかったのに。アキセにキスしてもいないのに。イーグスにキスをされたと思っただけでも悔やみが抑えられない。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ありゃ~シロ君にやられてしまいましたか」
 あれはチェシャの声だった。
「チェシャ?」
 声をした方へ向けば、チェシャが空高く浮いていた。
「ちょっと!今すぐに降りなさい!」
 チェシャに怒鳴る。今『光』が足りないから空へと飛べない。
「俺っちに怒らないで。しゅらさんからのおつかいなんだから」
 よく見れば、チェシャは薔薇を持っていた。
「ジャンヌ」
 薔薇からアリスの声がする
「アリス。調教するって言っていたけど、解放・・・しかも私ってどういうことよ!」
「約束は守ったわ。けどあなたには調教する内容を教えただけなのよ」
 追及するべきだった。
「それにシロちゃん。手段を選ばないところもあるから、我慢してやるかもしれないの。だからジャンヌにしたのよ。頑張って解放条件を守ると思ったの。まあこんなすぐに解放するとは思わなかったけど」
「他にあるだろうが。他に!」
「でも最終的には痛めつけたからいいでしょ」
「そういうことじゃない!」
「3つ目がね。怒ったあなたに殴られることだったの」
 読み切ったような条件だった。
「じゃあ・・・あいつのタタリが解いたことになるじゃないの」
「そうなるね。その分、いつか借りは返してあげるわよ。約束だから」
 嫌味に聞こえる。
「だったら、もう一度あいつに調教して一生縛りつけて!」
「その前にシロちゃんを私の前まで連れてきたらいいわよ」
「う・・・」
「またね」
 チェシャと消える。
 言いたいことがまだあるのに。
「もおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
 損するばかりのジャンヌだった。



 イーグスは複雑骨折になった。
 ジャンヌに飛ばされた後に回収され、カーミラの城で治療されることになった。体中包帯にまかれ、ベッドの上に寝かされていた。
 まさか3つ目の解放条件が怒ったジャンヌに殴られることとは。アリスは分かり切ってこの条件をつけたのだろう。
逃げても、もうチャンスがない。だから素直に受け止めるしかなかった。その代償が大きすぎる。
 音がする。
「話に訊いていたが、想像以上だな」
 視線を向ければ、男がいた。
長い金髪。赤い瞳。赤紫色の騎士の恰好をしている美優の男。
「ブラド様。見舞いですか」
ブラド・ツェペシュ。カーミラの旦那。
「見舞い。そうだな。滅多にないから目に焼き付けようとな」
「そんな意地悪なことをおっしゃらなくても」
「いい気味だとは思うが、そこまでしても懲りていないだろ。おまえは」
「諦め悪いと言ってくれませんか」
「言い換えても意味は同じだ」
「あら、いらしたの」
 女の声。
「私も拝見したかったもので」
「そう」と女は笑って返す。
 赤目。長い赤髪を左側の頭に止め、さらに残した紙を左肩から垂らす。腕には関節部分に止め、濃い赤紫色の袖を垂らしている。胸までの濃い赤紫色のドレスを着ている。
 吸血の女王。赤の従士の支配者。最古の魔女の一人。ひじゅうの魔女カーミラ・リア・ルージュ。
「カーミラ様まで・・・」
 ブラドはカーミラの手にキスする。
「ええ。包帯巻きになったあなたを見たくてわざわざ保護してあげたんだから」
「だと思いましたよ」
「別にあのままでもよかったのよ。あなたに惹かれている魔女や吸血鬼に預けるのも考えていたの」
 治療以外に何かされる。確実に悪い方向に。
「それにしても、何をすればそこまでなるのかしら」
「話が長くなりますが」
「あらそうなの。なら後でじっくり聞くわ。アリスも呼んで」
「アリス様もですが・・・」
「当然でしょ。預けている間のことも訊きたいわ」
 カーミラは歩き出し、ブラドもついていく。
「まあゆっくりしなさいよ」
 カーミラの言葉が嫌味に聞こえる。
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