魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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魔女狩り将軍④

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 現在。

「あれ。魔女を見たんじゃないですか。それにしてはやけに驚いていますね」
 アキセが煽るように言う。
「精神系なタタリは見分けしづらい。聖女だけでは判断できない。けど」
「俺、魔術師なんで、『呪い』の量を調べれば、解かなくでもタタリと判断はできるので、こっそり調べました。いや~隠れて魔術使っているのかと思ったら、本当に魔術を使わないもので楽にできました~」
 ジャンヌは呆れるようにため息を吐く。
「おまえは王を薬でおかしくしたんだろ」
アキセは手に持っていた瓶を見せながら言う。
「それは!」
 マシューは体を触る。体のどこかに隠していたのだろう。いつの間に盗んだのやら。
「証拠品はしっかり持たないと。見る限りこの瓶に煙を閉じ込めている。凝った方法をしますね~」
 よく見れば、瓶の中に白い煙が込めていた。
「乾燥した薬物を火で燃やすのが大半だか。その煙を瓶に閉じ込める。これで、現場で火を使わなくても、蓋を開ければ吸わせることは可能だ」
 王と二人で話した時に吸わせたのだろう。
「吸えば、幻覚。精神障害。興奮状態。中毒性も高い。まあ精神をおかしくする品物ではないですか。素人なら簡単に騙せる」
「ぐ・・・」
 マシューは悔しがるように口を嚙みしめる。
「潔く観念して。言い訳を訊くつもりはないから」
 ジャンヌは鋭い目つきを向ける。
「は~シャルルから話を聞いていたのですか」
 マシューはため息を吐きながら言う。
「ええ。話を聞いているだけで怪しさ満々でした。よくある手法なんで。魔女を理由にすれば騙して、金儲けするのも」
「聖女様のおっしゃる通りで。魔女を知らない彼らに一言言うだけで信用してくれますし、退治すると言えば、簡単にお金をいただきました」
「私は魔女狩りまではしないですが。あなたの行いを許すつもりはないので」
ロザリオを出す。
「聖女様は手厳しいようで。で、どうします?」
 マシューは開きなおす。
「捏造が分かったところで国民たちの不安は治まりませんよ。本物の魔女が退治しない限りは。けど、ここまで魔女も現れないということは、魔女はそもそもいないかもしれませんね。噂はやはり真に受けないことですね」
「噂を利用してここまでやったでしょうが」
「ええ。とてもやりやすかったですよ。無知で世間体が狭い彼らで。で、ボクを捕まえたところでどうやって、この状況を止めるつもりで」
「大丈夫です。今放送していますから」とアキセは言う。
「は・・・」
 余裕ぶっていたマシューは気が抜けたように口が開く。
「俺、天才魔術師なんで。国中に放送するくらいの技術は持ち合わせていますので」
 アキセの指飾りが振るう。
 天井に陣が浮かぶ。あの陣で放送しているようだ。
「貴様ら!」
 その時、王の部屋に騎士が入る。
「マシュー・ホプキンス。おまえを逮捕する」
 扉の奥にシャルルも立っていた。
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