魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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魔女狩り将軍③

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 数時間前。


 ジャンヌは国に着いた。
 しばらく森の中だったので、休もうとした。広場の方が騒がしい。見てみれば、大きい木の壁が大きく囲み、煙や歓声が上がっていた。
 一枚の看板を見れば、『金貨一枚で魔女の処刑が見られます』と書いてある。
 まさかとは思うが、金貨を払って見てみれば、3人の女が火刑させられているところだった。
 民衆は大いに歓声で騒いでいた。
 どう見てもあの女たちは魔女ではない。普通の人間。こんなことで魔女が死ぬわけがない。気持ち悪い。早くこの国から出ようと思った矢先で急に腕を掴まれ、小道に連れられる。
 こんなことをするのは、アキセしかいない。
「何するのよ!」
 思いっきり殴ろうとしたが、アキセではなかった。男だった。拳が止まらず、男の横の壁にぶつける。
 危うく頭を潰すところだった。
 男は驚いて腰を抜かす。
「ごめん。人違いだった」
「それで殺さないでください・・・」
 ご最も。
「あなたは聖女様ですよね」
 早速バレてる。
「助けてください」


 男の案内で街の外れに着く。
「ここどこよ」
「隠家になります」
「隠家?」
 小屋でベッドにテーブルとイスだけだった。
「座ってください」
 ジャンヌはベッドに座り、男は椅子に座った。
「私はシャルル・アンリ・シンソン。死刑執行人を務めています」
 シャルルは茶髪の20代くらいの男だった。
 死刑執行人。つまり。
「あんな悪趣味な死刑執行者が何のようよ」
「あれは、私が提案したものではありません」
 シャルルは否定する。
「どういうことよ?」
意外な発言に思わず首をかしげる。
「確かにこの国で公開処刑を娯楽としていました。そのことで昔から私は疑問に思っていました。人が死んでいく姿に楽しむというのは・・・」
 シャルルの握った手が震えていた。
「王も公開処刑に対して廃止しようと考えました。ただ一方的に廃止すれば、反対が起きることも想定しています。だから、署名を集め、長い期間をかけてやっと廃止を決定しかけた時でした。魔女が現れたという噂が流れました」
「そのタイミングにその噂って」
 どう考えても計画的犯行だろう。
「はい。私と王も疑っていました。その時に魔女狩り将軍と名乗るマシュー・ホプキンスが来ました」
「魔女狩り将軍?何それ」
 名乗っているだけでくだらない。
「噂といい、魔女狩り将軍とあまりにも都合がよすぎる。噂を作った本人ではないかと疑いました」
「でしょうね。まさかと思うけど、そんな怪しい男を城の中に入れたの」
「他の大臣が入れたんです。魔女を恐れて、入れたのでしょう」
「そういうことね」
 噂を真に受けて。
「王も直接話を聞きたいと。マシューと話をすることになりました」
「まさか二人だけで話したの?」
 ただでさえ怪しいのに。
「私も止めました。それでも王は確かめたいと。部屋の中で二人話した時でした。部屋から叫び声がしました。駆け付けた時には王が怯えていました」
「マシューに何かされたの?」
「いいえ。マシューは、魔女が現れ、王にタタリをかけたと言ったのです」
「マシューは何もなかったの?」
「すぐに逃げられたから何もできなかったと」
 それも怪しいけど。
「マシューは、噂は本物だと。このままでは魔女に殺されてしまうと。魔女狩りをしなければこの国は終わると。王は怯え、魔女狩りをマシューが実権を握ることになりました。それから魔女狩りが頻繁になり、徐々に金儲けになるようになって・・・・」
 シャルルの言葉が震えている。
「もうどうしようもなく・・・どうか助けてください」
 助けてほしいと。訴えている目だった。
 話を訊くだけでもマシューは十分に怪しすぎる。
「確認したいことがある。マシューって魔術を使えるの?」
「いいえ。見たことがありません」
「それで魔女狩り将軍って言ってるの」
「はい・・・」
 魔術を使わないで魔女狩り将軍と自称するのか。
「もしかしたら、魔術で王を操っているかもしれません。聖女は魔術を効かないと聞いています」
「魔術を使っていえばね。魔女の噂は現状どうなっているの。姿を見たとかっていう話ないの」
「それが誰も見たことがないんです」
「姿も見たことがないって・・・マシューから何も訊いてないの」
「姿を変わるかもしれないから、話せないと」
「そう」
 言い訳にしか聞こえない。
「王はそれからどうなったの?」
「王は部屋で安静しています。魔女に怯え、急に叫び、暴れることもありました。その時はマシューが診てます」
「マシューが診てるの?」
「マシューが診れば、確かに王が落ち着きました」
「魔術とか使った様子はなかった?」
「その時もタタリの影響を受けるかもしれないと言って、部屋に入らせてくれませんでした」
「そう・・・」
 やはりマシューは怪しすぎる。魔女の噂の信憑性が低い。噂を利用しているかもしれない。
 王の症状は、タタリ以外にも魔術や薬でも見られる。魔術で操られているなら触れば、魔術は解ける。
けど、精神系なタタリだとしたら、直接体内に『光』を注けば、魔女との繋がりが切れ、タタリは解ける。ただ『呪い』の抗体まで浄化するため、呪病に侵される。
それに薬で人をおかしくさせる場合もある。
魔女以外で、人間にできることは魔術か薬と考えられる。もし、魔術じゃなかったとしたら、薬としか考えられない。
 薬だとしたら、『呪い』を使わない限り、聖女でも浄化できない。
でも直接確かめることには変わりがない。
 聖女ができるのは魔女狩りまで。この国の事情は国の人が解決すればいい。聖女のできることは限られている。
「私は、魔女狩りまでしない。噂の正体がわかるまでは付き合う」
「分かりました」
「まずはマシューに会わせて」
 王がおかしくなる時、その現場を見れば。
「ちょっと待った」
 急に肩を掴まれた。振り向けばアキセがいた。
「な!」
 いつの間に現れた。
「おまえ。現場を見てマシューの正体を明かそうと考えているのか」
「う」
 見抜かれている。
「それだと分かったところでその後どうするつもりだ?」
「あんたなら他にあるっていうの」
 悔しいけど。
「最初から俺に聞けばいいのに。もっと手っ取り早い方法あるって」
 アキセは調子に乗って、変な要求をするからしたくなかった。
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