魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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言霊の魔女③

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 いつも突然だった。
 アキセは急にイロハに声を奪われ、そのままここに連れてこられた。それに指輪も奪われてしまった。指輪がなければ何もできない。
「できた!」
 スタッフィが作ったぬいぐるみが完成した。
 かなり大きい巨大な顔。白い綿のタテガミ。ボタンと目玉。大きい口に唇に糸が縫い付けられている。四柱の長い手足。巨大な蛇のような布切れの体。しっぽの先が糸で円盤をつるしている。
 不気味すぎるだろ。
「じゃあ、あれを食べてね」
 スタッフィはアキセに指差す。
 タテガミのぬいぐるみが前後に手足を動かし、ゆっくり近づいてくる。
 このままでは食べられる。
「スタッフィ」
 もう帰ってきたのかと思えば、速(そく)忍(にん)の魔女ヤオトメ・クノがいた。
「あ~姉さん!」
 クノと知り合い。まさか。
「あれ。アキセ君じゃないっすか」
 普通に見つかった。
「あ~思い出した。見たことある顔だなって思ったら、コルンが困ってるっていう盗人か」
 コルンも知っているってことは幼女同盟(リトルウィッチーズ)の仲間か。
「何するつもりだったすか」
 クノは尋ねる。
「テラコットに食べさせようとしたの」
「そうだったっすか。そういえば言ってましたね。ぬいぐるみの獣を作るって。現状どうすっか?」
「もう3種類は繁殖に成功している」
 スタッフィはぐっと親指を立て、決め顔する。
「で、姉さん。どうしてここに?」
「近くに通ったもので。あとサバトのお誘い。近い内にやりますっすよ」
「わ~い。今度はなんだろ」
「秘密っすよ」とクノは口の前に一本指を立てる。
「楽しみ~」とスタッフィは喜ぶ。
「そうだ。食べる前に指輪をどうしたっす?」
「指輪って?」
 スタッフィは首をかしげる。
「コルンが指輪を取り戻したいんですよ。そこに発明品いっぱい入っているから」
「あ~そういえば、イロハが持ってる」
 捕まえた時にイロハに奪われた。
「イロハって、言霊の魔女イロハ・ナデシコですよね」
「うん!今共同でキャラコットを作っているんだ」
「共同?」
「最初はイロハからカッコいい声を出すぬいぐるみを作ってってお願いされたんだ。スタッフィも作ってみたいと思ったんだ。まずね。イロハが声を奪って、残った肉体はテラコットに食べさせていたんだ」
「そうだったんすね。そのイロハはどこに?」
「出かけちゃった。ちょっと聞いてみる」
 親指と小指を立て、耳に当てる。
「あ~イロハ。ちょうどよかった」
 繋がったようだ。
「え。帰るって。テラコットを返してくれるよね」

「それならいいけど、さっきあげた指輪なんだけど、返してくれる?」

「実は知り合いのなんだ」

「面倒くさかったら、そっちにキャラコットを送ろうか」

「後で送るね」
 スタッフィは話をつけたようだ。
「返してくれるって」
「よかったっすよ~それまでゆっくり待ちますっか」
 そんなゆっくりしてやれるか。
 アキセは事前に仕掛けた魔術を発動し、転送して逃げる。
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