魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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青い鳥男②

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「何をしているんですか」
 『なんでも遮断マント』の中にいるアニエスが言う。
「見れば、分かるだろ。罠を仕掛けているんだ」
 相手が獣人(デミ・ビースト)なら魔術を使えば、簡単に捕まえる。
「早く仕事を終わらせたいんだろ」
「う・・・」
 アキセは指飾りで陣を描く。完成した陣を叩き、土の中へと消える。
「よし、できた」
 アキセは木陰に入る。
「アニエスちゃんはそこにいろよ」
「え?」
 木陰に隠れ、『なんでも遮断マント』を指輪の中にしまう。
「え!」
 アニエスが姿を見せた途端に「お嬢さ~ん!」と空から男の声がした。
 一直線に話に聞く鳥男が迫ってくる。
 その時、仕掛けた魔術が発動する。
 ドン。
 怯えるアニエスの手前で土の壁が伸び、鳥男はぶつかる。さらに鳥男が囲むように土の壁が伸びる。密封した土の壁ができた。これで鳥男を確保した。
 見事に引っかかった。やっぱりバカだった。欲望すぎるほど知能が低い。
 アキセは指飾りで魔術を発動しながら、木陰から出る。
「こんな早く捕まるとは・・・」
 アニエスは驚く。
「こういう欲求塊は向こうからくるもんだ」
「同族ですからね」とアニエスの視線がごみを見るような眼をしていた。
「こいつと一緒にするなって」
 そこまでバカじゃない。
「一応確認だか、こいつでいいんだよな」
 アキセが指飾りを振るう。
 土の壁の一部が土の中に消え、土の檻ができる。鳥男が姿を見える。
 青い羽毛。腕に羽をもった鳥の獣人(デミ・ビースト)のようだ。
「そうです。これです」とアニエスが嫌そうに答える。
「貴様!」
 青い鳥はすかさず、土の格子にしがみつく。
「彼女から離れろ!嫌がっているじゃないか!」と檻の中から鳥男は声を上げる。
「おまえにだろうが」とすぐに返す。
「何を言ってる。このグリパスのどこに欠点がある?」
 グリパスは胸を張って言う。
 ムカつくな。
「おまえみたいな。一方的なストーカーは女が嫌がるんだよ」
 アニエスの視線が冷たい。
「ストーカーだと!そんな下品な・・・」
 うるさくなりそうだったので、指飾りで振り、土の壁で密封させる。
「これで取引は終了ですね。では弓を返してください。羽を取るので」
「待った」
 アニエスが体をぴくっとする。分かりやすい反応をする。
「俺の約束をなかったことにするのか」
「・・・」
 アニエスが固まった。
「羽を取ってないので、届けてから」
「それって急ぎ?」
「急ぎです。なので、届けてから」
「それ。約束果たしたことにならないから。期限や期間も入っていないから」
「う・・・」
「俺とやってからでも遅くないだろ」
「あれは夜からという指定だったので、それまでに間に合えばいいので」
「その手には乗らないぞ。逃げる気満々だろう」
 逃すものか。
「あれは名詞だ。時間指定していない」
「う・・・」
「大丈夫。朝になったら渡すからさ。弓もあの鳥男もさ」
 アキセは逃がさないように腕を掴む。
「う・・・」
 やっと観念したようだ。
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