魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
376 / 648

地下の魔女④

しおりを挟む
 昨日仕掛けたのが裏目に出るとは。ジャンヌを小さくしていじる計画を考えていたのに。
 コルンの発明品『大きさ調整ライト』。ダイヤル次第で小さくも大きくもなる。ただ今回は少し欠陥のようで、効果が出るまで時間がかかる。
 だか、もうすぐ。
「ねえ」
 玉座に座っていたアリスから声を掛けられる。
「聖女ちゃんとはお知り合いでしょ。だったら、小さくなった理由知っているのかな。お兄さん」
 探っている。
「さあ。知りません」
「そうなの。魔女の力ではできないはずよ。『呪い』は『光』に浄化されるから。なのに、どうして小さくなったのかしらね」
「不思議ですね」
 答えたら面倒くさくなる。
「話してくれたら、聖女ちゃんを助けてあげるけど」
「魔女って純粋に約束守ったところ見たことないんですよね」
「じゃあ、やめた!あとでじっくり遊んでやる」とアリスがチェスに視線を向く。
 あとが怖い。何をされるのやら。
 それにしてもジャンヌはなんとか持ち堪えている。駒を壊しても、また駒が再構成し、攻撃してくる。『光』の消耗を狙っている。これ以上時間をかけたら、アリスを殺せなくなる。
 『呪い』を使っている魔術ならアリスに気づかれる。なら。
 その時、マッドハッターが動く。鳥籠の格子が自ら広げ、アキセの手に杖で押し潰す。
「ぐ!」
 手に激痛が走る。
「何をするおつもりで?」
 マッドハッターはさらに杖で手を押しつぶす。
「察しがよろしいようで・・・ロリコンが・・・」
「マッドハッター」
 アリスが振り向かずにマッドハッターに声をかける。
「せっかくのゲームを止められるところでしたので」
「後で遊ぶのよ。殺さないで」
 アリスは振り向きもせず、口調強めに言う。
「承知しました」と言いながら左手も押しつぶされる。
 このロリコン変質者が。
「これで邪魔されないと思いますので、もうしません」
 マッドハッターは鳥籠から出る。
 両腕を押しつぶされた。指を動かすたびにジンジンと痛む。これでは道具を持てない。だか、あれもそろそろ。
「ん?」
 アリスが急に見上げた瞬間だった。
 パンと割れた音がしたと思えば、無数の黒い刃が雨のように降ってくる。アリスや使い魔たちは咄嗟に避ける。
次々に割れた音が続き、無数の黒い刃が降ってくる。
 アキセが事前に仕掛けたコルンの発明品『はじけとべ風船爆弾』が発動した。
 見た目は透明な風船だか、空気に触れれば、自動に膨らむ。割れ切った瞬間に刃を飛ばす発明品。
 『呪い』を使う魔術を使えば、魔女に気づかれる。この爆弾なら周囲から見えず、膨らむまで時間がかかるから、いくつもこっそり召喚した。
 刃が鳥籠を壊していく。格子も壊し、鎖も千切れる。手が自由になったことで指飾りを手に召喚する。痛みはするが、切るくらいならできる。横一線に切り、上下に壁を生み出す。
 簡易な壁ができる簡易式壁創製封印魔術を発動する。カースネロに直接記号を描き、指飾りにはめれば、一線引いて簡単に壁を生み出す仕組み。
生み出した壁が刃の攻撃を防ぐ。
 魔術を発動しながらアキセは鳥籠から飛び出す。
 混乱している隙にチェス盤に向かうが、攻撃が止んだ。『はじけとべ風船爆弾』が切れた。
 その時、横腹に衝撃がする。
 それはマッドハッターが蹴りを入れたからだった。
 飛ばされ、壁に当たる。
 すぐに顔を上げれば、目の前にアリスがいた。殺意のある目つきをするアリスが木槌を振り下ろそうとした時だった。
 アリスの背後から白い炎が迫ってくる。
 ビルやドードーがアリスの背後に回る。白い炎に包まれ、消えていく。
「ご無事で」
 マッドハッターがアリスの元へと駆け寄る。
 アリスはマッドハッターを向かずにチェス盤に視線を向く。
 剣を持ったハートの男と女がチェス盤に向かっていた。
「邪魔すんじゃねぇぞ!」
 その時、ハートの女と男は白い炎に包まれる。
やっと効力が切れたか。
 チェス盤から体を白い炎に包まれたジャンヌが大きくなってにらみつける。
「ぶっ殺してやる!アリス!」とドスの入った声で怒鳴る。
つーか。怖い。
「露出魔が!地下(ちか)の魔女アリス・ワンダーランドが相手してやるわよ!」
 アリスは木槌を構えて突っ込む。
「変態が用意した服よりマシだ!」
 ジャンヌは白い炎を剣に固め、アリスに突っ込む。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...