魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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地下の魔女③

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「着替えた?」
 鳥籠にかぶった布が取れる。
「あら、かわいい!」
 アリスは嬉しそうに言う。
 ジャンヌは赤いフリルをついたドレスを着られる羽目になった。
 屈辱すぎる。
 鳥籠に入れられ、服を渡された。裸よりはマシだか。
「何。用意周到じゃないの」
 切れ気味に返す。
「それ。マッドハッターの趣味」
 アリスは玉座のひざ掛けに頬を立てる。
「・・・」
 思わず黙り込んでしまった。
「マッドハッター。隙を狙って私を小さくしようとするのよ。服まで用意して。気持ち悪いと思わない。何度作り変えてもあの性格は抜けないの。不思議だよね」
 作り変えるということは、マッドハッターは使い魔ということだろう。使い魔は魔女の一部から生まれる。それにしては自我が強い。
「本当は、あ~いうのが好みだったりして」
 いつの間に鳥籠の隣にチェシャがいる。
「冗談でもやめて。チェシャ」
 アリスはすぐに否定する。
「だったらこの方が好みだもん。ねえ~」
 アリスは玉座の隣に大きい鳥籠の中にいるアキセに言う。
「褒めていただき光栄です。ならここから出してくださいますか」
アキセは底から伸びている鎖に繋がれている。道具をとられ、ラフな格好にさせられている。
 指輪は取られていないようだ。指輪に道具が入っているとは思っていないだろう。
「マッドハッターに殺されたくなかったら、そこにいた方が安全だと思うけど。彼。ああ見えて嫉妬深いから」とアリスはジト目で見つめる。
 面倒くさい使い魔だな。本当に。
「で、これから何をするおつもりで?」
 怖いことを訊くな。
「一緒に遊びましょうよ。小さな聖女を遊ぶなんてもうないのよ」
 あってたまるか。
「アリス。みんなお呼びしました」
 マッドハッターが戻ってきた。
「遅い」
「この世界は広いんですよ。探すのに苦労しました」
「ごきげんよう」
 別の男の声がした。
 その時、側面の柱から姿を見せたのは、帽子をかぶったトカゲがいた。
「またマッドハッターに振り回されましたのね」
「ビル。仕方がないですよ。何を言っても学ばない使い魔なんですから」
片眼鏡をつけたドードーが言う。
「で、今度は何をするのかしら」
「まあまあ落ち着いて」
 ハートと赤と黒を強調した男と女。
 次から次へと現れた。
「もうみんな遅いんだから!」
 アリスは玉座から立ち上がり、左足を力強く踏む。
 四角形に底を沈み、広いチェス盤と人型の駒が生まれる。さらに四方に椅子も生み出し、使い魔たちは座り込む。
「チェスですか」とドードーは言う。
「今回は私が考えたオリジナルのゲームよ」
 アリスが鳥籠を持ち上げる。
 まさか。
「この聖女を先に殺したら勝利ということで」とアリスが鳥籠を上げていう。
「な!」
「私はクイーン!」
「ひどいわ。アリス。クイーンは私なのに。じゃあ。キング」とハートの女は言う。
「は~ルーク」とハートの男は言う。
「僕はビジョップ」とトカゲは言う。
「ナイトで」とドードーは言う。
「では私はルークで」とマットハッターは言う。
「ボクは見学~」とチェシャは言う。
「じゃあ。スタート!」
 アリスは鳥籠を落とす。
 ジャンヌは格子にしがみ、衝撃に備える。鳥籠は底につき、その衝撃で鳥籠は倒れる。
 あの魔女め。絶対にやり返す。
 その時、剣を持った駒が鳥籠をたたきつける。次々に駒が剣をもって、鳥籠を壊そうとしている。
 ジャンヌは白い炎で剣を作り、格子を切り、鳥籠から飛び出す。
 このまま魔女の遊びに付き合いたくない。今すぐにでもアリスをぶっ刺したい。だかこの小ささでは魔女を殺せる ほどの力がない。飛んで逃げるのもあるが、『光』を吸収できない中、これ以上浪費させるわけにいかない。どうすれば。
 その時、駒たちが迫ってくる。
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