魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
345 / 654

人間になっちゃった④

しおりを挟む
 アキセは、部屋に入った途端に倒れてしまう。
 無理に動かした。体がまだ重い。息が上がる。
「おまえ・・・枝爆弾を使いやがって・・・」
 『枝爆弾』
 魔道具の一つ。 
 大気中にある『呪い』に触れれば、球体から無数に槍が伸びる。伸びきっても槍から枝のように広がっていくことからその名がつく。
 ガチャと音がした。
 顔を上げれば、ユビワがサブマシンガンを構えている。
 いつの間に目が回復している。
「おま!どうやって・・・」
「『遡り香水』を使いました」
 コルンの発明品の一つ『遡り香水』。
 見た目は、容器に4枚のダイヤルと小さなボタンがついている金色に輝く四角の香水瓶。24時間までしか戻れないが、水を補充するだけで何度も使える。
 6枚のダイヤルで設定した時間帯にボタンを押せば設定し、香水をかければ、その時間帯にまで体が戻れる。
「見えなかっただろうか・・・」
「手の感覚でやりました」
 あの香水にある銀の板の数字は凸凹があった。手の感覚だけでやったのか。
「ジャンヌさんをどうするつもりですか」
「なぜ訊く?」
「ほっとくつもりはないと思いますが、念のためです」
「あいつらの想い通りにさせるつもりがない」
「つまり、助けるということでよろしいですか」
「そうだよ。早く『遡り香水』を出せ。ウィムがいるんだぞ。もう訊かれている」
「そうよ~」
 ウィムがユビワの背後を取り、ユビワは風で飛ばされ、壁に当たる。ユビワはサブマシンガンを前に出せば、サブマシンガンに傷がつく。
「さすがにバレたか」
 目を狙っただろう。
 その時、アキセの手に指飾りと粘土ハンドが転送されている。
 粘土ハンドで床を触る。ウィムの下に床を粘土に変え、ウィムの体を捕らえ、そのまま粘土に包む。
 その隙にユビワがすぐに駆け寄り、『遡り香水』を出す。
 ウィムを抑えている内に回復するしかない。
 その時、ウィムが粘土を壊す。
 その破片はユビワの元に飛ぶが、ユビワは召喚した指飾りで横一線に引く。一線が上下に広げ、光の盾を作る。破片は弾くが、ウィムが足を伸ばし、盾を破壊し、ユビワの腹に入る。ユビワを倒し、『遡り香水』を離してしまう。
 ウィムが大きく振り、『遡り香水』を風の刃で壊す。
「これで回復できないでしょ」
 ウィムはユビワを見下ろす。
 『遡り香水』を壊されては回復できない。今の状態では使いたくないが、これを使うしかない。
 アキセは念力の記号を描き、自身の体に当てる。
 念力の記号は、離れていても念じれば、書いたものを動かす術。つまり体に記号を当てたということは体全体に動かせる。ただ集中力が続く限り。
 これで体を動かす。
「なんだ。動けるんだ」
 ウィムは見つめる。
「じゃあこの子と相手してよ」
 ウィムは、指を鳴らすと鈴の音が響く。
 割れた窓から銀色の毛をしたイタチが無数に姿を見せる。
 イタチが魔族(アビス)化したカマイタチ。
 銀色の毛が一本鋭く、触るだけで刃物のように切れる。体を丸め、輪の刃物のように襲う。しかも集団で。
「なめるな!」
 アキセは桂を取って、指飾りを構える。


 アキセは、カマイタチと相手している。
 魔術で無理やり体を動かせたにしても長くは持たない。
「さて」
 ウィムは大きく振り、風の刃を飛ばす。
 ユビワは横一線に切る、上下に広げて光の盾を作り、風の刃を防ぐ。
「生意気!」
 ウィムが怒鳴る。
 ユビワはウィムの頭に『光』を含めたエンジェライトを直接体内に召喚する。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ」
 ウィムは叫ぶ。
 頭の中に毒物を直接入れたようなもの。退治はできないが、ダメージはそれなりある。
「このガキ!」とにらみつけるウィム。
 銃を召喚し、風の球を打つ。
 ウィムを吹き飛ばし、隣の部屋まで飛ばす。
 その時、ウィムに操られたのか、カマイタチたちは混乱している。
 今度は散弾銃を召喚し、撃ちだす。銃には、術を刻んである。銃の中で魔弾を生み出し、熱源に反応して的確に狙う。魔弾は無数に飛び、カマイタチたちを的確に当てる。
「あ」
――これ、アキセも巻き込まれる。
「おまえ・・・どさくさに紛れて殺すつもりだったろ」
 キレ気味に言うアキセは、記号を描いた光の盾で防いでいた。
「すみません。視野に入っていませんでした」
「おい」
 アキセを無視する。
 ウィムからの攻撃がない。あれで退治したとは思えない。
「逃げた?」
「来い!」
 アキセに引っ張られる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

処理中です...